重度の皮膚障害

重度の皮膚障害

Ⅱ.重大な副作用:重度の皮膚障害

  1. 概要
  2. 注意事項
  3. 対処法
  4. 発現状況

Key Points

  • 国内外の臨床試験及び海外製造販売後において、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson 症候群;SJS)、中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis;TEN)等の全身症状を伴う重度の皮膚障害が認められており、死亡例も報告されています1)
  • 本剤投与中(特に投与開始最初の1サイクル)は患者の状態の十分な観察をお願いします。
  • 薬剤投与後、皮膚、粘膜又は眼等の異常などの初期症状が認められた場合には、SJS、TEN等の重度の皮膚障害の可能性を考慮し、速やかに受診するよう指導してください2-4)
  • 異常が認められた場合は、皮膚科医と連携の上、適切な処置を行ってください。

本剤の電子化された添付文書(抜粋)

注意喚起の設定根拠

重大な副作用

EV-301試験においては中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)及び皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群:SJS)は認められなかったものの、米国の製造販売後やEV-301試験以外の臨床試験において、TEN及びSJS等の重度の皮膚障害が発現し死亡に至った症例が報告されています1)

重要な基本的注意

本剤を用いた国内外の臨床試験及び海外製造販売後において、中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)及び皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)等の重度の皮膚障害が認められており、死亡に至った例が報告されています。重度の皮膚障害は主に投与開始最初の1サイクルに起きたこと等を踏まえ、定期的な検査や臨床症状の十分な観察、異常が認められた場合の適切な処置を促すために設定しました。

発現機序

  • エンホルツマブ ベドチンはNectin-4を標的とする薬剤であり、Nectin-4は皮膚組織に発現していることから、本剤によって皮膚障害が生じると考えられます。
  • 「重症皮膚副作用」は、エンホルツマブ ベドチンのオンターゲット毒性とみなされるものの、「重症皮膚副作用」の発現に関する明らかなリスク因子は特定されていません5)

<出典>

  1. 【承認時評価資料】1.8.4.1 警告(DIR200256)
  2. 厚生労働省:重篤副作用疾患別対応マニュアル スティーヴンス・ジョンソン症候群(皮膚粘膜眼症候群)(平成18年11月;平成29年6月改定)
  3. 厚生労働省:重篤副作用疾患別対応マニュアル 中毒性表皮壊死融解症(中毒性表皮壊死症)(ライエル症候群、ライエル症候群型薬疹)(平成18年11月;平成29年6月改定)
  4. 医薬品医療機器総合機構:PMDAからの医薬品適正使用のお願い(No.9 2012年4月)
  5. 【承認時評価資料】2.7.4.2.1.6.1 皮膚反応 (DIR210069)

臨床症状

  • 本剤投与中(特に投与開始最初の1サイクル)は患者の状態を十分に観察してください。
  • SJS、TENは、発現頻度はきわめて稀ではあるものの、皮膚症状が軽快した後も眼や呼吸器官などに障害を残したり、致命的な転帰をたどることがある重篤な皮膚疾患であるため、早期発見・早期対応が重要です1)

以下のような臨床症状に注意して観察を十分に行ってください2-4)

患者指導

薬剤投与後、以下の初期症状(皮膚、粘膜又は眼等の異常)が認められた場合には、SJS、TEN等の重度の皮膚障害の可能性を考慮し、速やかに受診するよう指導してください2,3)

  • 発熱(38℃以上) • 眼の充血 • 眼脂(眼分泌物) •まぶたの腫れ • 開眼困難 • 表皮剥離 • 口唇のびらん • 陰部のびらん • 咽頭痛 • 紅斑 等

注意が必要な患者

  • 一般に肝・腎機能障害のある患者では、重度の皮膚障害の症状が遷延化・重症化しやすいため、注意して使用してください2,3)
  • 特に医薬品服用による皮疹や呼吸器症状、肝機能障害などの既往のある患者では、SJS、TENの発現に注意して使用してください2,3)
  • 外国人患者と比較して日本人患者においてはGrade3以上の皮膚障害の発現頻度が高い傾向が認められ、Grade3以上の発疹又はMedDRA(Medical Dictionary for Regulatory Activities;国際医薬用語集)SMQ(standardized MedDRA query;MedDRA標準検索式)の「重症皮膚副作用」の発症に関して非白人人種等が独立したリスク因子である可能性が示唆されています。

診断・鑑別診断

  • 急速な発疹の拡大や症状の遷延化を認めた場合には、早急に皮膚科専門医や眼科専門医に相談してください。
  • SJSやTENの早期発見のために以下のポイント2, 3)に留意し、本症と診断した場合は直ちに入院させた上で、皮膚科、眼科や呼吸器科などとのチーム医療を行ってください。
  • 発熱(38℃以上)、粘膜症状(結膜充血、口唇びらん、咽頭痛など)、多発する紅斑(進行すると水疱・びらんを形成)を伴う発疹の3つが主要徴候である。
  • 可能であれば皮膚生検で確定診断を早急に行い、併せて肝・腎機能検査を含む血液検査、呼吸機能検査等を実施し全身管理を行う。
  • 全身の発疹が増えるにつれて、眼の炎症も高度となり、偽膜形成、眼表面(角膜、結膜)の上皮障害を伴うようになる。

<出典>

  1. 医薬品医療機器総合機構:PMDA 医薬品・医療用具等安全性情報 No.163
  2. 厚生労働省:重篤副作用疾患別対応マニュアル スティーヴンス・ジョンソン症候群(皮膚粘膜眼症候群)(平成18年11月;平成29年6月改定)
  3. 厚生労働省:重篤副作用疾患別対応マニュアル 中毒性表皮壊死融解症(中毒性表皮壊死症)(ライエル症候群、ライエル症候群型薬疹)(平成18年11月;平成29年6月改定)
  4. 重症多形滲出性紅斑ガイドライン作成委員会ほか:重症多形滲出性紅斑 スティーヴンス・ジョンソン症候群・中毒性表皮壊死症 診療ガイドライン, 日本皮膚科学会雑誌. 2016;126(9):1637-1685.

対処

  • 本剤投与により皮膚障害が発現した場合には、以下のとおり、重症度に応じて休薬、減量又は中止等の適切な処置を行ってください。
【本剤の電子化された添付文書】 (抜粋)
  • 異常が認められた場合には、皮膚科医と連携の上、適切な処置(副腎皮質ホルモン剤、抗ヒスタミン剤の使用等)を行ってください。

【参考】重度の皮膚障害のGrade分類(CTCAE v4.03準拠)

発現頻度

電子化された添付文書

電子添文に記載された副作用発現頻度は以下の通りです。
中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)(頻度不明)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群:SJS)(頻度不明)
異常が認められた場合は、皮膚科医と連携の上、適切な処置(副腎皮質ホルモン剤、抗ヒスタミン剤の使用等)を行ってください。

臨床試験等における副作用の発現状況

国際共同第Ⅲ相試験(EV-301試験;エンホルツマブ ベドチン群 n=296、化学療法群 n=291)における重度の皮膚障害の発現頻度は以下のとおりでした1)

発現時期

  • 国際共同第Ⅲ相試験(EV-301試験;エンホルツマブ ベドチン群)における重度の皮膚障害(有害事象)の初回発現時期は以下のとおりでした2)
  • 国際共同第Ⅲ相試験(EV-301試験;エンホルツマブ ベドチン群 n=296)における重度の皮膚障害(有害事象)の一定期間毎の初回発現頻度は以下のとおりでした3)

SJS又はTENを発現した患者一覧(本剤との因果関係あり)

症例紹介(国内)4)

  • 76歳男性
  • 合併症:紅斑性皮疹、全身紅斑、発赤
  • 副作用歴:カルボプラチン、ゲムシタビン塩酸塩による紅斑性皮疹(発現部位:四肢・体幹等全身)

<出典>

  1. 【承認時評価資料】国際共同第Ⅲ相試験(DIR210069)
  2. 【承認時評価資料】重度の皮膚障害の発現時期(DIR210156)
  3. 【承認時評価資料】安全性検討事項の一定期間毎の初回発現例数及び発現割合(DIR210155)
  4. 社内報告書:症例報告書 SJS 国内(DIR210074)

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