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ここが知りたい!OAB診療 ~高齢者の診療のポイント~

ここが知りたい!OAB診療 ~高齢者の診療のポイント~

監修
東邦大学医療センター大橋病院 泌尿器科
教授 関戸 哲利 先生

<女性> 先生、過活動膀胱(OAB)の診療について質問があるのですが…  <男性> おや?何でしょうか?  <女性> OABは高齢者に多い疾患ですが、高齢者特有の注意点はありますか?  <男性> 高齢者は一般的に複数の慢性疾患に罹患しており、特に認知機能障害やフレイルなどの患者背景をよく理解する必要がありますね。高齢OAB患者さん診療のポイントについてみていきましょう!

高齢者のOABと関連する因子

<男性> 高齢者では高齢者特有の様々な因子を考慮する必要があります。    図1 高齢者のOABと関連する因子  <女性> 非常に多様な因子が関与しているのですね。具体的にどのようにOABと関わるのでしょうか?  <男性> 高齢者では、蓄尿の障害であるOABが生じる一方で、膀胱出口部の閉塞という相反する病態を併せ持つことがあります。その原因として、男性の前立腺肥大症や女性の骨盤臓器脱があり、合併している場合には、OABとは異なる治療が必要です。  <女性> OABの背景に隠れた疾患を治療する必要があるということでしょうか。  <男性> その通りです。それ以外にも、高齢者は複数の疾患を合併し、その治療のために多剤服用(ポリファーマシー)となっていることが多く、それがOABの症状や治療に影響をあたえていることもあります。  <女性> 多剤服用ですと、高齢者であれば抗コリン負荷についても気を付ける必要がありますよね。  <男性> そうですね。加えて、加齢による臓器予備能の低下や、身体・認知機能の低下、その先にあるフレイルも、OABの診断や治療法選択にあたり意識すべき因子です。

高齢者のOABの鑑別のポイント

<女性> OABに関連する因子が多いと鑑別診断が難しいのではないかと思います。特に押さえておきたいポイントはありますか?  <男性> ひとつは、先ほどお話しした膀胱出口部の閉塞を起こす前立腺肥大症や骨盤臓器脱との鑑別です。通常、注意が必要な残尿量は100mL以上ですが、高齢者の場合は残尿量が50mL以上の場合に泌尿器科専門医への紹介が必要です。  <女性> なるほど、高齢者ではカットオフ値が低いのですね。かかりつけ医でも出来る限り残尿測定を実施することが望ましいですね。  <男性> もうひとつのポイントは、尿失禁がある場合にフレイルや認知機能障害に伴う機能障害性尿失禁の可能性を常に念頭に置く必要があるということです。高齢者ではフレイルや運動機能障害のために通常の時間内にトイレに辿り着けない、あるいは認知機能障害のためにトイレや尿意を認知できないといったことがあります。    図2 機能障害性尿失禁の例  <女性> なるほど、OABだけが尿失禁の原因とは限らないのですね。  <男性> そのとおりです。機能性尿失禁が主体の場合には、通常のOAB治療とは異なる対応が必要となります。フレイルや認知機能障害を疑う場合には、老年科医、神経内科医、整形外科医、リハビリテーション医と連携するのがよいですね。  <女性> その他、高齢者のOABと鑑別が必要な症状はありますか?  <男性> 夜間頻尿が認められる場合は、その主たる原因がOABなのか夜間多尿なのかを判別することが重要です。そのためには排尿日誌の実施が有効ですね1)。    図3 排尿日記の記入例  <男性> また、薬剤の副作用がOABの症状に影響を与える可能性があることから、患者さんの服薬内容を確認することが重要です2)。

OAB治療における患者さんとのコミュニケーションの重要性

<男性> OABの治療は患者さん本人だけでなく介護者にも良い影響を与えることを知っていますか?  <女性> え?どのような効果があるのでしょうか?  <男性> 混合性尿失禁あるいは切迫性尿失禁を有する女性患者とその介護者を対象とした研究では、介護負担の改善と頻尿や尿意切迫感、尿失禁などの蓄尿症状の改善に有意な相関があるという報告があります3)。    図4 治療効果が介護者に与える影響

Zachariou A, et al. Clin Interv Aging. 2021;16:291-299.

<女性> 介護者の負担や患者家族の観点からも高齢者のOAB治療が重要であるといえますね!

OABとフレイルの関係

<男性> 最後に、高齢者のOAB治療に際して考慮すべき因子の中でも、近年注目を集めているフレイルについてもお話ししましょう。  <女性> 私が診療している高齢の患者さんでもフレイルは多くみられますが、OABの切り口でも注目されているのですか?  <男性> はい。2023年に発刊された『過活動膀胱診療ガイドライン第3版』において、“過活動膀胱とフレイル・認知機能低下の関係”という章が新たに第1章として設けられたのです4)。高齢OAB患者においては、フレイルとの合併を意識した診療の必要性が大きく取り上げられています。  <女性> ガイドラインにも取り上げられていたなんて知りませんでした!OABとフレイルにはどのような関連があるのでしょうか?  <男性> フレイルの中でも身体的フレイル、すなわち歩行速度や転倒についてOABとの関連が示唆されてきています5-7)。加えて、OAB治療によって転倒のオッズ比が減少したという報告もあるんですよ8)。    図5 OABと身体的フレイルの関連性

Omae K, et al. Neurourol Urodyn. 2019;38:2324-2332.
Omae K, et al. J Urol. 2021;205(1):219-225.
Kurita N, et al. BMJ Open. 2013;3:e002413.
Jayadevappa R, et al. Neurourol Urodyn. 2018;37(8):2688-2694.

<女性> 転倒のリスクの観点からもOAB治療の重要性がうかがえますね。 高齢者に多い疾患や症状、介護負担の問題、フレイルとの関係など、高齢者特有の患者背景を意識して、OABを診療していきたいと思います!

出典

  1. 日本排尿機能学会/日本泌尿器科学会編. 過活動膀胱診療ガイドライン[第3版]. p32. 2022.
  2. 日本排尿機能学会/日本泌尿器科学会編. 過活動膀胱診療ガイドライン[第3版]. p13. 2022.
  3. Zachariou A, et al. Clin Interv Aging. 2021;16:291-299.
  4. 日本排尿機能学会/日本泌尿器科学会編. 過活動膀胱診療ガイドライン[第3版]. p2-5. 2022.
  5. Omae K, et al. Neurourol Urodyn. 2019;38:2324-2332.
  6. Omae K, et al. J Urol. 2021;205(1):219-225.
  7. Kurita N, et al. BMJ Open. 2013;3:e002413.
  8. Jayadevappa R, et al. Neurourol Urodyn. 2018;37(8):2688-2694.

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