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メディカルアフェアーズ情報

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そこが知りたい、移植医療の今 ~患者さんに寄り添うチーム医療

治療の選択肢として、移植医療は目覚ましい進展を続けています。
手術手技の向上や薬の開発のみならず、専門スタッフの自己研鑚に基づいたチーム医療は
治療成績に大きく貢献しました。
その最前線をレポートします。

チーム医療と地域連携が生み出した、全国平均を上回る治療成績
-地元で安心して受けられる腎移植を

Interview
鹿児島大学病院(鹿児島県鹿児島市)   
泌尿器科 血液浄化療法部 准教授
山田 保俊  先生

【プロフィール】
やまだ やすとし:1993年に鹿児島大学医学部を卒業し、2021年より現職。ほかに日本泌尿器科学会代議員、日本臨床腎移植学会(認定医制度会委員)腎移植・血管外科研究会世話人・編集委員なども兼任。

かつて、鹿児島と東京の間には「腎移植における医療格差があった」と言う。鹿児島大学病院の腎移植チームは県内で移植に関する啓発を続け、腎移植システムを発動させた。その「地道な草の根運動」の成果は目覚ましく、治療成績の向上はもとより臓器提供数も全国上位に入るなど、腎移植チームにとっても誇れる結果を出し続けている。詳しく聞いた。

ドラスティックに改善する治療

現代医療において、腎移植ほどドラスティックに改善する治療はそうないと思うんです。もちろん透析も素晴らしい療法で、私は血液浄化療法部で透析患者も診ていますが、腎代替療法の中で「ほぼ健康」に戻れるのは腎移植だけなんです。

急増した腎移植、その背景には

当院は年間15〜28例の腎移植を行っており、うち3割ほどが先行的腎移植で最近増えつつあります。
当院が1986年に腎移植を始めてから累積症例は265件に上りますが(2023年10月19日現在)、うち240件は2010年以降に実施されたものです。移植数が急増したのは地域の理解が大きく進んだからだと考えています。
まだ移植数の少なかった頃、私は県内の病院を回り、「腎移植は普遍的な医療です。東京をはじめとした都会だけで行われるものでなく、患者さんの利便性や治療成績を考えれば地元で行うのが一番なんです」と、声を大にして説明し続けました。ほかにもさまざまな場所で医療関係者向けの講座を手弁当で行い、市民イベントなどにも顔を出し、県医師会報に5年間、毎月(合計60回)寄稿しました。もちろんいい治療成績を積み重ね、医療者からの信頼を築く努力も忘れませんでしたよ。
こうした草の根活動が実を結び、腎移植は急増したと考えています。
現在は県内の透析医など、さまざまな背景を持つ医療関係者が協力し合えるようになりました。医局員の技術も評価され、腎移植における医療連携は非常にスムーズに進んでいます。

先行的腎移植:末期腎不全となった際、透析療法を経ずに行う腎移植。

地道な啓発活動を継続中

今も医療従事者と一般の方に向けた啓発活動は続けています。たとえば毎年開催されている鹿児島市のCKD(慢性腎臓病)予防プロジェクトや、繁華街のアーケードで行われる市民向けの健康イベントに参加して、腎移植の話題を提供しています。
実際に、「講演を聞いて、腎移植を受けたいと思い受診しました」と患者さんに言われることもあるんですよ。いろいろな方法で少しでも多くの方に知っていただければと思っています。

地域連携でポジティブな評価を得るために

昨今は地域の病院から、移植希望患者の紹介がとても増えています。ただ、ここ2年ほどは新型コロナウイルスの影響で減少傾向にありますので、啓発継続の必要性を改めて感じています。
地域連携の鍵は、基幹病院の若手内科医たちとの勉強会や連携で、医師たちにやりがいを感じてもらうことにあると考えています。内科医に術後劇的に改善した患者さんをフォローしてもらうことで、移植へのポジティブな評価がもらえることを期待しています。

全国平均を上回る生着率

当院の生体腎移植は、10年生着率**が全国平均を約7%上回る88.3%です(2010〜2022年)。一症例ずつ積み重ねた結果ですが、患者さんが鹿児島で安心して移植を受けられる体制の整っていることを示せたのではないでしょうか。

**生着率:移植後に機能している移植腎の割合。

移植成績向上の理由はどこにあるのか

腎移植は先人たちによって完成された治療技術である一方、施設ごとの工夫も必要です。
当院で移植成績が向上している理由のひとつに、腎移植チームのメンバーそれぞれが異なる経歴を持っていることが挙げられます。それぞれ異なるハイボリュームセンターで腎移植を経験していますので、何か問題があれば各自がそれぞれの経験から工夫し、改良を続けています。特に移植後のフォローアップについては各施設のいいところをどんどん取り入れました。
そしてまた私たちの工夫を学会等で共有し、腎移植全体に貢献できればと思います。

腎移植を受けて、難関大学を突破!

腎移植を受けた方で、折に触れて思い出す患者さんがいます。幼少期から腎不全を抱え、週に3回の透析を受けながら難関大学を目指していました。ですが努力むなしく、何年も浪人していたんです。腎移植を受け、また受験勉強を始めたところ、ご本人いわく「やる気がみなぎって、(腎不全だったときと)全然違う。気力が湧いてくるようになった」のだそうです。
そうしてついに難関大学に受かったんですよ。幼少期から診ていた小児科の主治医からも感謝されて……、私も嬉しかったですね。

献腎移植を広めるために

今後は、生体腎移植だけでなく、献腎移植についても啓発していかねばなりません。移植は本来、生体腎移植でなく脳死ドナーによる献腎移植が望まれるからです。そのため医療関係者に向けた臓器提供のワークショップなどを定期的に開催しています。先日も県内の医療関係者が40人ほど集まりました。
ちなみに鹿児島県は日本で唯一、離島からの脳死提供が可能です。救急医らとドクターヘリを駆使したシステムを立ち上げ、これまで5例の提供がありました。

これからは県内の医療格差解消も

私には「腎移植は地元で完結すべき」との信念があります。かつて東京と鹿児島の間には腎移植に関する医療格差が大きかったのです。この差を埋めるための努力を重ねてきました。
現在は腎移植の技術や管理において、鹿児島と東京の間に大きな格差はないはずです。今後は「県内」で格差が生まれないように、特に離島の治療成績が向上するように努めたいですね。。

移植チームのスタッフから

移植は「当たり前」の医療へ

泌尿器科 助教
見附 明彦 先生

外科医として、幸せにつながる腎移植を

私は泌尿器科医で外科手術がメインですが、腎移植を希望する患者さんの初診から術前検査、手術全般、そして術後管理まですべてに関わっています。
腎移植によって、末期腎不全の患者さんは血液透析や腹膜透析から離脱することができます。それは患者さん本人だけでなく、ご家族の幸せにもつながると思うんです。こうした医療に携われることは、何よりのやりがいだと感じています。

移植後の喜びは生活とともに

腎移植が患者さんの身体だけでなく、日常生活の多くの場面でポジティブな変化をもたらしていることを実感しています。
私は退院した患者さんに外来で「(腎移植は)どうでした?」と聞いています。術後合併症のある方から「手術した傷が痛い」と言われることもありますが、半年ほど経つとほとんどの方が「移植を受けてよかった」と言ってくれます。具体的には、身体が楽になった、息切れしにくくなった、眠りが深くなった、目覚めがよくなった、足のむずむず感がなくなった、肌がきれいになった等々、まずは日常生活の些細な改善を実感する方が多いです。
ほかにも女性であれば生理が再開し、妊娠や出産が可能になることもありますし、男性は性機能が改善して子供を授かることもあります。

移植成績向上のためには

現在、当院では「腎移植の手術は順調に終わって当然」と言える状況にあります。移植成績向上のためにもっとも重要なのは、もはや手術ではなく、術前・術後の適切な評価と管理を含めた総合的な診療でしょう。もちろん合併症や高齢を理由に手術の難度が高くなるケースはありますが、内科医による総合的な評価・管理によってクオリティを保つことができています。
術前・術後の管理は内科医や移植コーディネーター、看護師らの協力が欠かせません。チーム医療ではさらに管理栄養士や薬剤師も加わり、全職の視点で患者さんの状態を総合的に評価しています。こうした点も成績向上に大きく貢献しているでしょう。

カンファレンスでは看護師も、内科医も

入院中の患者さんがもっとも多く接するのは看護師で、また患者さんは医師に言いにくいことをよく話しているようです。ですから看護師の気づくことが増えれば問題を早期発見できて、患者さんの回復につながりやすいはずです。
そこで病棟看護師の知識を高めるため、毎週「移植カンファレンス」を行うようになりました。対象は入院しているすべての移植患者で、看護師が中心となってカンファレンスをした上で泌尿器科医がコメントする形式で進めており、現在は腎臓内科医も参加しています。

自己管理が重要

初診では患者さんに腎移植のメリットばかりを言わないようにしています。たとえば「移植したら身体が楽になるし、食事も美味しいし、自由時間も増える……」とは言っても、必ず「節制しなければならないこともあります」と、自分で健康管理をするよう伝えています。
私たちもサポートしますが、定期的な検診を受けてほしいことや、術後に体重が増加したり糖尿病リスクの高まる可能性があることもすべて説明しています。
それから、移植数の増加とともに移植後の患者さんは増え続けていますので、術後の外来受診は待ち時間が長くなることも伝えています。移植を受けた後は元気になっても通院が必要ですから、移植後はできるだけ多くの施設でフォローアップを受けられるようになるといいですね。

移植は特別な医療ではない

腎移植は、外科医なら基本的な手技を組み合わせればできる手術だと思います。特に若い医師たちは手術に興味を持っていることが多いので、その関心を育てることも今後の展望には重要となっていくでしょう。
腎移植は決して近寄り難い医療ではないことを、ぜひ広く知っていただければと思います。

患者さんが元気になる様子を目の当たりに

腎臓内科 医員
南 真人  先生

腎移植を受けた患者さんの様子を見て

私は腎臓内科医ですが、外科医の皆さんは本当にタフで尊敬できる方ばかりです。以前、名古屋第二赤十字病院の研修で腎移植診療に初めて関わりましたが、献腎移植であれば夜遅くまで準備し、定期手術の後に移植手術を行う様子を見て感銘を受けました。
腎臓内科医は腎代替療法として血液透析や腹膜透析を中心に診療している医師も多く、私もかつては腎移植にあまり関わっていませんでした。ですが、腎移植を受けた患者さんが元気を取り戻す様子を目の当たりにし、この領域に積極的に携わるようになりました。
腎移植によって女性は妊娠や出産を検討できるようになりますし、仕事に復帰できた方もたくさんいます。また昨今は60〜70代の夫婦間移植も増えており、退職後のQOL改善についても大きく期待されています。元気にゴルフへ行けるようになった、夫婦仲がよくなったなどもよくお聞きします。腎移植は患者さんを幸せにする大切な医療だと感じています。

長い道のりを伴走

腎不全は患者さんにとって長い道のりとなる疾患です。私は腎臓内科医として、移植前の段階から患者さんと長く関わっていきます。患者さんの進学や就職、復職や結婚・出産などを見据えつつ、腎代替療法をどうするか、そして腎移植を希望されたらいつから準備するかなどを患者さんと一緒に検討しています。患者さんの人生プランを一緒に考えられることは、何よりのやりがいですね。

腎代替療法を提案するときは

最近はできるだけ早めに腎代替療法について提案するようになりました。外来看護師や透析室のスタッフと連携し、クレアチニン値が3〜4mg/dLに近づいてきた段階で、患者さんに話をするようにしています。時間をかけてしっかりと説明し、患者さんが適切な治療選択をするようサポートすることが大切です。中でも合併症が多い方は、移植までの準備期間が通常より長くかかることもあり、さらに早めに提案するようにしています。
患者さんに腎代替療法を提案したときの反応はさまざまですが、積極的に話を聞いてくれる方が多いですね。腎移植はもっともQOLを改善する代替療法であり、生体腎移植を選択できる方は非常に前向きな態度を示してくれます。

移植後の長期ケア、気をつけていることとは

移植後の長期ケアで問題となるのは、生活習慣病や肥満など内科合併症が増えてしまうことです。予防のための生活指導は大切ですね。また、悪性腫瘍や血液系のがんを早期発見できるよう、がん検診や人間ドックの受診を勧めています。

生体ドナーのフォローも定期的に

生体ドナーの健康管理も大切ですから、定期的な通院を促しています。手術からひと月目と3か月目には泌尿器科外来で術後の経過管理が行われていますが、その後も1年目からは年に1回は通院してもらうようにしています。生活習慣病のリスクが高い方は3か月おきに受診してもらうこともありますし、居住地の病院と連携することもあります。
ドナーは基本的に健康体ですから、受診が滞ってしまうこともあるのですが、その際はレシピエント**の協力を得て、一緒に来院してもらうなどしています。

生体ドナー:臓器の提供を希望、もしくは提供した人。原則として6親等以内の血族と3親等以内の姻族、事実婚のパートナーなどに限定。 
**レシピエント:臓器移植を希望する人、臓器移植を受ける・受けた人。

腎臓内科医も移植に

腎移植は一般的な医療である、そんな時代にもう入っているのではないでしょうか。腎臓内科医としても、ひしひしと感じています。
そしてこれからは私たち腎臓内科医も腎移植に携わることが当たり前になっていく、そう願ってやみません。

患者さんとご家族の笑顔のために

移植コーディネーター/看護部
岩吉 美保 さん

初診から長く関わって

移植コーディネーターとして、初診外来から移植後のフォローまで、医師と一緒に患者さんをサポートしています。ドナーとレシピエント双方に関わっており、入院中は病棟看護師とともに患者指導を行い、退院後は移植腎を少しでも長く保つため、レシピエントが自分で内服管理や血圧・体重管理などができるよう生活指導を行っています。
初診時、患者さんは私がどんな役割を担っているのか知りませんから、「この人はいったい誰かしら?」と思われてしまうこともあるのですが、移植に関する相談などに丁寧に答えていくと、だんだん頼ってくれるようになるんですよ。

移植コーディネーターとなってから

私はかつて看護師として病棟勤務をしていたのですが、そのときは入院中の患者さんのみを看て、退院後は関わることができませんでした。それがコーディネーターとなり、外来でも術後のフォローに携わるようになったんです。
移植した患者さんは定期的に外来へ通い続けることになりますので、ケアは長期にわたります。患者さんから「いつも生活上の不安などをよく聞いてくれて、とても助かっている」と言われたときは、コーディネーターならではのやりがいを感じました。
また私は、外来診察前に全員の患者さんに問診を行い、体調や日常生活などについて問診票に記入しているのですが、体重の増えてしまう方が多いんですね。移植後は患者さんによる自己管理が中心となりますので、自分でなかなか管理できない場合は、少し厳しい雰囲気の医師に外来で診てもらうこともあります。ただ、移植件数の増加とともに移植後の患者さんもどんどん増えていますので、外来担当医の調整が難しくなっていることも事実です。

嬉しかった、患者さんの笑顔

ある患者さんの言葉が忘れられません。腎移植を受けるまで10年以上、透析をしていた方から「移植後は生活が大きく変わった」と言われたのです。透析は1回4時間、それを週3回行いますが、それがなくなり「家族と過ごせる時間が増えました」と、笑顔を見せてくれました。

コーディネーターが増えていくように

私がコーディネーターになったのは、先輩看護師に勧められ、関連学会へ行き出したのがきっかけでした。学会でコーディネーターの講演を聞くようになってその活動を知り、必要性を痛感したんです。
ただ、移植数の増加とともに、移植後の外来は待ち時間がとても長くなってしまっています。診察前の問診を丁寧に行うためにも、これからコーディネーターがもっと増えてくれればと思っています。
医療職の中には、コーディネーターの仕事内容はもちろん存在自体を知らない方もまだ多いと思います。私もどんどん情報を発信し、コーディネーターがレシピエントとドナー、その家族を支えるためにいかに重要か、伝えていかなくてはと感じているところです。
今後、院内でもコーディネーターが増えていくよう、後輩育成に力を入れていきたいですね。

(2023年10月取材/被取材者兼監修者の所属と肩書は取材時のものです)
〈取材・編集:ライフサイエンス出版株式会社〉 


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