• お知らせ

    アステラスメディカルネットでは、利便性向上、利用履歴の収集・集計のため
    Cookieを利用してアクセスデータを取得しています。詳しくは利用規約をご覧ください。オプトアウトもこちらから可能です。

メディカルアフェアーズ情報

情報提供に関する留意事項

そこが知りたい、移植医療の今 ~患者さんに寄り添うチーム医療

治療の選択肢として、移植医療は目覚ましい進展を続けています。
手術手技の向上や薬の開発のみならず、専門スタッフの自己研鑚に基づいたチーム医療は
治療成績に大きく貢献しました。
その最前線をレポートします。

チームで着実に成果を上げる腎移植
ー腎移植への理解を促し、好成績を維持するために

Interview
岡山大学病院(岡山県岡山市)   
泌尿器病態学 教授
荒木元朗  先生

【プロフィール】
あらき もとお:1998年に岡山大学医学部を卒業し、2001年に東京女子医科大学泌尿器科・腎移植臨床フェロー、2004年に米国オハイオ州クリーブランドクリニック泌尿器科・腎移植臨床フェローとなる。2023年より現職。

岡山大学病院は肺移植や肝移植をはじめ、病院を挙げて移植医療を推進している。泌尿器科でも年間10〜20例の腎移植を行っているが、年間30例前後の対応は病院の支援体制もあり可能だと言う。それでもあえて数を抑えているのは、地域の患者さんと医療者の信頼を得るため、丁寧に着実に診ていることが理由だそうだ。詳しく聞いた。

世界一の好成績

当院の腎移植は累計160例ほどになりました。9割が生体腎移植で、献腎移植は1割です。患者さんの年代は8歳から70代半ばまでさまざまですが、生体腎移植は若い方も多いので平均すると40代ぐらいになるでしょうか。
移植後1年以内に透析再導入となった方や亡くなった方は1人もおらず、1年間の生存率と生着率はどちらも100%を維持しています。これはタイ記録ではありますが、世界一の好成績と言えますよね、100%より上はありませんから。
なお、全体の3割程度が先行的腎移植**で徐々に増えていますが、最新データでは2021年までの5年生存率も生着率も100%でした。
これは腎移植に携わるスタッフみんなの努力の賜物で、チームで連携して取り組んできた結果です。

生着率:移植後に機能している移植腎の割合。
**先行的腎移植:末期腎不全となった際、透析療法を経ずに行う腎移植。

あえて時間をかけて、丁寧に着実に

当院の腎移植件数は年間10〜20例程度ですので、私たちより数多く手がけている移植施設はたくさんあると思います。私たちもやろうと思えば年間30〜40例は実施できるでしょう。
ですが私たちは1年生着率100%を維持するために、移植コーディネーターに「症例数はゆっくり増やしていこう」と伝え、一例一例とにかく丁寧に着実に実績を重ねてきました。
たとえばフルマラソンを3時間で走れるところ、あえて4時間かけて走っている感覚と言えるでしょうか。

腎臓内科との連携は論文や学会活動でも

腎臓内科と連携していますが、特に術後は手厚くサポートしてくれています。退院後1年ほどは泌尿器科が外来で検査等を行いますが、拒絶反応がなく安定した状態であれば、次回3か月後の外来は腎臓内科、その3か月後はまた泌尿器科と、交互に受診してもらうようにしています。こうすることによって泌尿器科医と腎臓内科医が効率よく、確実に診ることができていると思います。
腎臓内科医は私たちのカンファレンスにも同席していますし、論文執筆や学会発表なども共同で行っているんですよ。

手術室で「初尿!」

腎移植の素晴らしさは何より、患者さんの状態が術後半日〜1日で大幅に改善することです。末期腎不全で尿の出なかった患者さんが「排尿できるようになった」と、涙を流して喜ばれることも少なくありません。こうした劇的な回復が見られる医療は他になかなかないでしょう。
腎移植の手術は、無事に尿がプシュッと出る瞬間がハイライトです。手術室ではその喜びをスタッフで分かち合って皆で「初尿(しょにょう)!」と声を上げるのです。
こうした喜びを共有する瞬間は、他の手術ではあまり聞いたことがありません。がんなどの手術で患部を切除した手応えはあるでしょうが、腎移植には「成功した」、「これで大丈夫」という特別な瞬間があるんです。

移植後は精神状態も安定

ある患者さんから「移植後は天国にいるようです」と言われました。透析による倦怠感や全身のかゆみなどがなくなり、厳しい食事制限もほぼなくなりますから。「とにかく身体が楽で、何を食べても美味しい」のだそうです。
患者さんの精神状態も大きく改善します。移植前は気難しい印象だった方も、移植後は穏やかな様子に変わることが多いです。腎不全が改善され、もともとの性格が出てくるからでしょう。

YouTubeで啓発活動を

私たちはYouTube「岡山泌尿器科チャンネル」で、腎移植に関する情報を発信しています。中でも再生回数が多いのは夫婦間移植をした当事者2人が出演している動画です。
腎臓病で30年闘病していた看護師の妻と、生体ドナーになった会社員の夫というご夫婦で、お二人は「自分たちが移植しようと思ったとき、あまりにも情報が少なかったから」と、名前も顔も公表して体験を語ってくれたのです。
ご夫婦の笑顔は非常にパワフルで、視聴者から「間もなく移植予定ですが、この動画を見て不安が解消しました」等の感想をもらえました。私たち医療者の説明より説得力があることは間違いありません。

生体ドナー:臓器の提供を希望、もしくは提供した人。原則として6親等以内の血族と3親等以内の姻族、事実婚のパートナーなどに限定。 

アメリカと日本、最初のひと言が違う

アメリカでは、腎臓内科医が「末期腎不全には移植がもっとも適した選択肢であること」を、何の迷いもなく患者さんに伝えています。
一方、日本では「まずは透析を試すべきだ」と考える医師が少なくありません。私たちのもとへ患者さんが「透析の他に方法はないのか」と、泣きながら訪れることもあります。

「こんなによくなるんだ」と実感を!

地域の医師たちに腎移植について理解してもらうには、私たちが地道に情報を発信し、コツコツと積み上げた実績を示し、回復した患者さんの姿を見てもらうことで、信頼を得ていくしかありません。
移植後に驚くほど回復した患者さんの姿を見れば、薬物治療では難しかった症例が「こんなによくなるんだ」と、実感してもらえるはずです。
昨今、日本移植学会の学術総会には腎臓内科の医師も多く参加しています。腎移植の術前・術後は腎臓内科が管理しているからです。移植に携わるのは外科医だけではないことが広く知られれば、移植に興味を示してくれる医師も増えるのではないでしょうか。

社会貢献を考える

私は学生に講義をするとき、医療の社会貢献についても触れています。医療費削減に私たち医師がどう貢献できるかを考えていきたいのです。
腎移植は透析に比べて医療費を70%削減できます。腎移植を行えば、透析にかかる医療費を平均20年分節約できるからです。透析20年分の医療費は約1億円です。腎移植1例は医療費を約1億円削減できると言えるでしょう。

移植後を診る施設を増やし、次世代のリーダー育成を

今後は、移植後のフォローアップ施設を増やすことに挑戦していきたいですね。いくつかの移植施設が院外にサテライトのようなクリニックを立ち上げ、その外来で移植後をフォローする取り組みを始めています。私たちもそれを模範として、地域の総合病院と連携を始めました。
その病院は駅から近く、腎臓内科と泌尿器科を併設し、万が一の場合はすぐに岡山大学病院へ入院や外来受診が可能なんです。私たちの医局からその病院の泌尿器科外来へ医師を派遣しており、同時に腎臓内科との併診も進めています。当院で移植後、安定した状態にある患者さんや、駅から近い場所の受診を希望される方には、そちらの病院へ通ってもらっているんですよ。
これからも腎移植の好成績を維持しつつ、次世代のリーダーを育てていきたいですね。そしてそのリーダーたちが他の地域でも貢献し、さらに後進を育成していくことを期待しています。10年後が楽しみですね。

移植チームのスタッフから

QOLと予後の改善を実感

泌尿器病態学 助教/臓器移植医療センター
西村慎吾 先生

移植医療は大変?

腎移植の手術に携わっています。私が今の道に進むことになったきっかけは、研修医時代に脳死の献腎移植と関わったことでした。
その移植手術は日中の業務を終えてからの手術開始で、終わってみると深夜12時を越えていました。当時は「移植医療って、なかなか大変な医療だ」と思っていたのですが、今はチーム体制も整い、生体腎移植であれば日中に終わり、献腎では摘出チーム、移植チームに分業することで個々の負担も軽減しながら効率よく移植を遂行しており、チームでその成功の喜びを分かち合える素晴らしい医療だと思っています。

大きなやりがいを感じるように

患者さんは移植後に顔色が見る見るよくなって、「食事が楽になりました!」などととても喜ばれます。移植前は患者さんから腎不全や透析について「ちょっと動くだけでも身体がつらい」、「ご飯を食べるだけでもしんどい」などと聞いていましたので、腎移植がQOL(生活の質)と予後を大幅に改善することを実感しています。とてもやりがいのある医療だと改めて思います。

夢でも喜びを共有? 

移植手術中、腎臓が無事移植されると尿管からプシュッと尿が出ます。それを「初尿」と言うのですが、ある患者さんから不思議な……夢なのか、体験なのかわからないような話を聞いたことがあります。
その方は術後、私に「先生、ありがとうございます。先生たちが『初尿が出た!』と喜んでいる声を聞いて、嬉しくなりました」と言ったのです。
私たちは術中に初尿が出たとき、みんなで喜んで「初尿!」と声を上げるのですが、患者さんは夢でも見ておられたのか……、ちょっと不思議な話ですよね。
その後の経過も良好で、移植手術を実際に受けた患者さんとしての立場から、移植医療の普及・啓発活動にもご協力いただいています。

腎移植は身近な存在であると知ってほしい

当院で腎移植を行っていることを、院外の施設にアピールするよう心がけています。外勤先などでそうすることによって、患者さんに移植を提案してくれる医療者が増えるのではないかと期待しています。
たとえばある透析クリニックで、腎移植の実際について話をしたところ、その施設から患者さんを紹介してもらえるようになりました。
外勤先の透析病院でも透析室に頻繁に顔を出して、スタッフの方に腎移植について伝えています。看護師たちは興味を持って聞いてくれました。
すべての医療者に、腎移植は身近な存在であることを知ってほしいのです。

泌尿器科医もぜひ関心を!

また私は同じ泌尿器科医にも、もっと腎移植に関わってほしいと思っています。移植は大学病院などの大きな施設でないと経験し難いことも事実ですが、そうした大規模施設は若手医師が多い傾向にあるので、チャンスを捉えて、ぜひ移植チームに積極的に関わってみてください。
1例でも経験すれば「劇的な回復を望める医療でありながら、さほど大変な治療ではない」等と、新たな発見があるかもしれません。

腎移植に携わって広がった知識

泌尿器病態学 特任助教
吉永香澄 先生

涙を流して喜んでいた患者さん

研修医だった頃、ある患者さんが腎移植を受けて、涙を流して喜んでいるのを見たんです。私は「腎移植ってそんなにいい医療なのか」と驚きました。それが、移植医療に携わるようになったきっかけです。
腎移植の素晴らしさは一度でも経験したら、医療従事者にはわかってもらえると思います。

ドラマティックな回復

私たち泌尿器科医は前立腺がんなども診ていますが、腎移植ほど長期間、患者さんに関わる外科治療はありません。移植前の準備に半年から1年ほどかけ、移植後も数週間入院し、退院後も外来で関わっていくことになります。
患者さんは心身ともに目に見えて元気になっていきます。黒く乾燥していた肌が白くみずみずしくなり、誰が見てもはっきりわかるほど若々しくなっていく方が多いんです。
こうしたドラマティックな回復を見せてくれる医療は、他になかなかないと思っています。

胸に染みた患者さんの言葉 

ある患者さんのエピソードが強く印象に残っています。親族との血液型不適合移植を予定している方でした。
この方は3回目の機会にしてやっと腎移植をすることができたんです。どういうことかと言うと、まず1回目は「間もなく移植」という段階で内科症状が出て、延期になってしまいました。次はその精査加療と再度の移植準備に1年弱かけた、2回目の手術前日のことです。今度は抗体価が下がらず拒絶反応のリスクが高まってしまい、ご本人と相談して再度延期したのです。
3回目にしてようやく移植を無事終えたところ、患者さんは「腎不全と闘ってきた間ずっと、気温の変化だけでも毎日しんどかった。それが今は、毎日生きているのが楽しいです」と、笑顔を見せてくれました。
もちろん中にはほんの少数ですが、治療がスムーズに進まない患者さんもいます。それでも移植に挑戦してよかったと、患者さんに言ってもらえるよう努めたいと思っています。

「腎移植」という言葉すら知らない患者さん…… 

腎不全の患者さんの中には、「腎移植」という言葉すら知らない方もいます。
外勤先で、自尿がほとんどなく透析を受けていた患者さんに「腎移植を考えたことはありませんか」と聞いたら、「何ですか、それ」と言われたことがあるんです。年に何度か経験することです。腎移植に関する知識がもっと普及するよう願っています。

ぜひ移植医療に関わってほしい

腎移植に携わっていると、他科の医師には感謝の念でいっぱいになります。腎臓内科を中心に内科や整形外科の協力があってこそ、腎移植は成り立っているからです。腎不全の患者さんは糖尿病を合併していることが多く、透析期間が長ければ心機能の低下もあり、ステロイドを服用していれば骨がもろくなっていることもあります。そうした患者さんが移植を希望された場合、他科の協力が必須なのです。
そして他科の医師も移植に関わると、それがひとつの扉となって医学知識が広がります。移植で得た知識は、どんな臨床現場でも役立てることができると思います。
私は泌尿器科医ですが、腎移植に関わらなければ知らなかった病態があり、その治療経験がないと、手も足も出ないと困惑することがありました。こうした泌尿器科医は多いと思います。ぜひ移植医療に関わって、臨床に役立つ知識を得ていただければと思います。
移植医療は特段難しい治療を行っているわけではなく、実に地道なものです。ぜひ私たちに気軽に問い合せてみてください。私たちもさまざまなルーツを持つ医師たちとつながりを持てたら嬉しいです。

劇的な回復と忘れられない瞬間

泌尿器病態学 医員
山野井 友昭 先生

劇的に回復する腎移植

私は大学院生として、臨床の現場にいながら研究も少しずつ進めています。他施設との共同研究なども行いつつ、腎移植に関わって3年ほどです。
腎移植の9割を占める生体腎移植においては、レシピエントとドナー双方の手術を行いますので、二重のプレッシャーを感じつつも大きなやりがいを感じています。
移植後は徐々にクレアチニン値が下がり、患者さんは劇的に回復していきます。元気に退院していく患者さんの姿を見ると、腎移植がいかに力強い医療か、改めて実感できるんです。
移植後に外来を訪れた患者さんから「ラーメンが食べられるようになりました!」などと聞くと、とても嬉しいですよ。

レシピエント:臓器移植を希望する人、臓器移植を受ける・受けた人。    

忘れられない瞬間 

自分が初めて受け持った、腎移植の患者さんのことは忘れられません。事前の準備をすべて終えて手術室に入り、私が移植腎の血管をふん合したんです。
悪性腫瘍の手術と違い、腎移植は術中に結果がわかります。初尿が出ることで移植の無事終了を知ることができるのです。私も手術室で初尿が出る様子を見たときは大変感激しました。忘れられない瞬間です。
その患者さんは今も元気に外来に通っていますよ。

門戸を広げたい……

透析以外の腎代替療法である腎移植の門戸を、少しでも広げられたらと思っています。
たとえば腎臓内科の充実している地域病院に、私たちから連携をお願いしたところ「ぜひやりましょう」と快諾してもらえたことがあります。私が外勤として行くことになり、当院で移植を終えた患者さんも診てもらえるようになりました。さらに「この患者さんは、腎移植の対象としてどうでしょう」と相談を受ける機会も増えたのです。

腎移植の実際を知ってほしい

医学生と研修医に、腎移植の素晴らしさを伝えていきたいですね。特に医学生には臨床現場に出る前にぜひ知ってもらいたいですし、研修医にも泌尿器科を回ってもらって、患者さんが劇的に回復する姿を見てほしいのです。
私自身、学生時代も初期研修でも、そして泌尿器科医になってからも移植医療に触れる機会はまずありませんでした。移植については教科書で読む程度で、透析を当然のことと捉えていたのです。
ですが透析は毒素が完璧に除去されるわけではなく、合併症を起こしやすいのです。もちろん移植だって合併症を起こすことはありますが、通常の暮らしを平穏に送っている患者さんがほとんどなんですよ。

(2023年8月取材/被取材者兼監修者の所属と肩書は取材時のものです)
〈取材・編集:ライフサイエンス出版株式会社〉


関連ページ

アステラス製薬株式会社の医療関係者向け情報サイトに​アクセスいただき、ありがとうございます。​

本サイト(Astellas Medical Net)は、日本国内の医療提供施設にご勤務されている医療従事者を
対象としています。該当されない方はご登録・ご利用いただけませんので、予めご了承ください。

ご利用にはアステラスメディカルネット利用規約への同意が必要です。
ご同意頂ける場合は以下の該当ボタンをクリックしてお進み下さい。

本サイトでは、利便性向上、利用履歴の収集・集計のためCookieを利用してアクセスデータを取得しています。
詳しくは利用規約をご覧ください。オプトアウトもこちらから可能です。

アステラスの企業サイトをご利用の方はこちらからご覧ください。 

アステラスメディカルネット会員の方

medパス会員の方

medパスのパスワード再発行をご希望の場合も上記よりアクセスください。

会員登録されていない方

医療従事者の方は、会員限定コンテンツを除いたアステラスメディカルネットサイトの一部をご覧いただけます。
会員登録すると、製品に関する詳細な情報や領域ごとの最新情報など、会員限定のコンテンツが閲覧できます。

会員向けコンテンツをご利用の方

会員になると以下のコンテンツ、サイト機能をご利用いただけます。 

会員限定コンテンツの閲覧

ニュースや読み物、動画やWEBセミナーなど、
日々役立つ豊富な情報が閲覧可能になります。

情報収集サポート機能の利用

ブックマークやWEBセミナー予約など、手軽に、
効率的に情報を収集・共有いただける機能を
ご利用いただけます。