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メディカルアフェアーズ情報

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そこが知りたい、移植医療の今 ~患者さんに寄り添うチーム医療

治療の選択肢として、移植医療は目覚ましい進展を続けています。
手術手技の向上や薬の開発のみならず、専門スタッフの自己研鑽に基づいたチーム医療は
治療成績に大きく貢献しました。
その最前線をレポートします。

院内外のスタッフがチームとなって取り組む腎移植
ー患者さんを長く支えていくために

Interview
市立札幌病院(北海道札幌市)
腎臓移植外科 医長
田邉 起 先生

【プロフィール】
たなべ たつ:2002年に北海道大学医学部を卒業し、2013年に同大学院を修了。東京女子医科大学泌尿器科、マサチューセッツ総合病院、コロンビア大学などで研究に従事した後、2022年より現職。

市立札幌病院は東北・北海道ブロック最大の腎移植施設だ。院内の医療チームはもちろんのこと、近隣の北海道大学やクリニックとも連携し、若年層から高齢者まで幅広い年代の患者さんに腎移植を行ってきた。院内外を巻き込んだ密な連携が、「治療成績の向上に貢献していることは間違いない」とスタッフは口をそろえる。詳しく話を聞いた。

900件超の歴史ある腎移植

当院の腎移植は東北・北海道地方でもっとも歴史が古く、第一例を手掛けたのは1985年です。それから症例を重ね、移植件数は同地方最多の累計942件(〜2020年)となりました。特にこの20年近くは、年間30〜40件のペースで行っています。
レシピエントの年齢は10代後半から最高齢は75歳です。最近は条件の厳しい高齢者の移植も増えてきましたが、最新の生着率**は1年生着率が98.2%、5年が94.5%、10年が87.7%です(2010年〜10年間、少数の献腎移植を含む)。全国的にもよい成績と言えるのではないでしょうか。

レシピエント:臓器移植を希望する人、臓器移植を受ける・受けた人。
**生着率:移植後に機能している移植腎の割合。

チームの連携が長期予後の向上に

私たちの強みは、総合病院として複数の科がチームを組んで腎移植に取り組んでいることです。術前検査では循環器内科、消化器内科、糖尿病内科、精神科などと連携しますし、術後の拒絶反応が疑わしいときは病理診断科で適切に診断することが可能です。
とりわけ腎臓内科と密接な連携を行っています。情報共有は電子カルテを確認すればできますが、それよりも直接顔を合わせて話し合うことを大切にしています。合同カンファレンスを週に2回開催するだけでなく、毎日のように電話等で連絡を取り合っています。
こうした他科との連携も含めて、移植コーディネーターなどのスタッフやリハビリテーションチームなど、大規模なチーム医療で腎移植に取り組んでいます。
このような連携が、生着率や予後などの成績向上に役立っていることは間違いありません。

厳格な術前検査と長期ケアを要する移植、それでも

腎移植は手術までに検査が多く準備が大変ですし、術後も長期ケアが必要です。患者さんにはそうした点を移植前に厳格に伝えています。それは術後に免疫抑制剤を飲まなかったり、糖尿病を悪化させたりして、また腎不全になってしまうことがあるからです。
それでも移植後は患者さんから感謝の声を聞くことが多いんです。長い透析暮らしから離脱した若い方は涙を流して喜んでくれました。
腎不全の患者さんにとって、腎移植はベストな治療だと思っています。

高齢患者が増えている

移植を受ける方の平均年齢が上がってきています。昔は40代の親が20代の子どもに腎臓を提供する、といったケースが多かったのですが、最近増えているのは高齢夫婦のうち片方が腎不全になって透析を受けた後、配偶者から腎臓提供を受けるケースです。高齢者は動脈硬化や心臓が弱っている等の問題もありますので、若年層より注意が必要です。
それでも移植手術を受けて透析から解放され、「夫婦で旅行に行ってきました」などと、人生を楽しんでいる方の話をよく聞くようになりました。移植が生活の質をいかに向上させるか感じる機会も増えていますね。

紹介元との有機的なつながり

「移植は免疫抑制剤を使う、難しい医療だ」と思われてしまうことがあります。確かに免疫抑制剤は服用し続けなければなりませんが、それ以外の健康管理は通常の患者さんと何ら変わりありません。
ですから腎臓病の患者さんを診たときに、「移植は難しいから」とは言わずに、ぜひ移植実施施設に相談してみてください。当院へも気軽にご連絡いただければと思います。
私たちは患者さんの紹介を受けたら、もとの主治医にはお礼と移植後の経過を伝え、元気になった患者さんをお返ししています。
そうするうちに、継続して患者さんを紹介してくれるようになった医療機関もあります。そして紹介元の医療機関も徐々にどんな術前検査が必要かを把握して、事前に実施してくれることがあるんです。先日、紹介されてきたある患者さんは悪性腫瘍の検査やスクリーニングをすべて終えており、「あとは移植をお願いします」という状態で来られました。こうした地域でのやりとりがさらに広がっていくことを期待しています。

移植チームのスタッフから

開業して腎移植後をフォロー

はらだ腎泌尿器クリニック 院長
/北海道移植医療推進財団 副理事長
原田 浩 先生

増え続ける“移植後の”患者さん

私は市立札幌病院の腎移植チームに所属していたのですが、増え続ける移植後の患者さんをサポートするために、病院の目の前にクリニックを開業しました。開業して4年経ちましたが、現在も病院の腎移植を手伝いつつ、クリニックで移植後の患者さんの診療も行っています。
病院で移植を受けた患者さんはまず、病院の外来に通ってCTなどの検査機器を駆使してさまざまな検査を行います。そして1年ほど経過した頃に腎生検を受け、問題がなければ当クリニックへ紹介されてきます。1〜2か月に1回は外来で移植後の腎機能を確認する必要があるためです。

少ないフォロー機関、パンク寸前の移植施設……

ただ、当クリニックのような移植後の患者さんを診る施設は全国的に少ないため、多くの患者さんは移植を受けた施設に通い続けているのが現状でしょう。移植施設はパンク寸前とも言えます。移植成績の向上により、移植後の患者さんは増え続け、診察の待ち時間が長くなっているものの、免疫抑制剤を処方する上で受診期間を延ばすことはできません。
そこで移植医が私のように開業したり、近隣の他院に移植医が行ってフォローアップしたりする方法が広まりつつあるのです。

移植後の患者さんをどう診るか

移植を受けた患者さんの診察には注意が必要です。たとえば足がむくんできた、タンパク尿が出てきた等の兆候を見逃さないようにしていますし、クレアチニン値は上昇がゆるやかでも放置してはいけません。それが移植腎廃絶など取り返しのつかない事態になることもありますので。
また、過剰な免疫抑制は感染症などの合併症を引き起こしかねないので、血中濃度など詳細な情報を把握し、適切な免疫抑制を行うことで合併症を最小限に抑えるようにしています。

印象に残る症例の数々

腎移植を受けた患者さんから「生活がこんなに改善したんです」という話はよく聞きます。末期腎不全で車いすに乗っていた方がサッサッと歩けるようになったり、ゴルフができるようになったと報告してくれたり。
ある患者さんからは「命を2回、救われた」と感謝されたことがあります。1回目は腎移植で、2回目は移植後の経過観察中にがんを早期発見できたのです。移植後のフォローアップを丁寧に行っていたためと言えるでしょう。
腎移植を2回受けた方もいます。1次移植は兄弟から提供を受けたのですが、時を経て移植腎が機能低下したため、自分の子どもから再提供を受けたのです。若い世代から高齢世代に腎臓を提供することは日本ではあまり一般的とは言えませが、アメリカでは珍しくありません。その方も自分の子どもから提供を受けることに葛藤したと思いますが、その方が家族にとってかけがえのない存在だったことは間違いなく、仲の良い家族が、大切なひとりの命をつないでいるんだと感動しました。その方は今もお元気にしていますよ。

献腎移植を! 

患者さんが16歳以上の場合、献腎移植の待機期間は現在17年4か月です(日本移植学会ファクトブック2022より)。脳死・心停止による臓器提供は現在、一部の救急医の努力によって成り立っている状況で、それではまったく足りていません。臓器提供をもっと円滑に進められる全国的なシステムを整備する必要があります。
生体ドナーのいない人にとって、腎移植が幻の医療であってはなりません。

もっと腎移植について知ってほしい 

腎不全を診ている医療従事者の方々に、「腎移植は決して特別な医療ではないこと」を知っていただければと思います。移植実施施設に紹介してもらえれば、患者さんを元気な姿でお返しすることが可能なんです。
患者さんを移植施設に紹介するか否かは、ほぼ担当医の判断に委ねられているのが現状です。担当医によって、患者さんの予後や生活の質が大きく変わってしまうのです。
また、患者さんにも「移植という選択肢があること」を伝えていきたいですね。当クリニックのWebサイトはトップページに腎移植の情報を掲載していますが、通いやすいイメージのクリニックが率先してこうした情報を発信することで、一般の方々にも移植をもっと認知してもらえればと考えています。

内科医として腎移植に携わって

市立札幌病院 腎臓内科 部長
島本真実子 先生

腎代替療法、選択肢のひとつとして

末期腎不全は腎臓の機能がほとんどなくなってしまった状態です。こうした場合、血液透析や腹膜透析などの腎代替療法が必要になりますが、腎移植もその選択肢のひとつです。
腎移植がまだ今日ほど一般的でなかった時代には、腎移植という選択肢を知らないまま透析治療を続ける患者さんも多くいました。ですから私たち腎臓内科医は、患者さんが最適な腎代替療法を選べるよう、腎不全となった最初の段階から関わっていきます。
当科で腎代替療法選択外来を設け、3年になろうとしています。そこでは治療法の選択に迷っている患者さんに、移植についてもしっかりと説明し、スタッフも交えて話し合いながら考えていきます。そして移植を希望された場合、私たちは腎臓移植外科に紹介する橋渡し役となります。
また、移植後も内科合併症を持つ患者さんを腎臓移植外科と一緒に診ていきますし、生体ドナーとなった方の健康状態もフォローアップをしています。

先行的腎移植が増えている?

先行的腎移植***は増えています。当院も4割近くが先行的腎移植で、日本国内にはもっと高い比率で行っている病院もあります。先行的腎移植で重要となるのは、移植の準備期間です。患者さんに早く情報を提供して、移植に向けて決断してもらわないと腎機能が悪化して間に合わないこともあります。ですから先行的腎移植は、私たち腎臓内科医の協力が大きく影響するのだと気持ちを引き締めています。

***先行的腎移植:維持透析を経ずに腎移植を行うこと。

外科との連携は

私たち腎臓内科と腎臓移植外科は良好な関係を築けています。可能な限りお互いのカンファレンスに参加して、どんな患者さんがいるのか情報共有していますよ。
病院によっては、科が違うとコンサルテーションしづらいとも聞きますが、当院は科の垣根がないんです。電話一本ですぐに相談できますし、実際に会っても話をしやすいんです。

腎移植のやりがいとは

私たち腎臓内科医は、血液透析や腹膜透析を受けている患者さんたちとも一緒に腎不全と闘っていますが、腎移植を行うことで患者さんが透析から脱却すると、長期透析によって起こりやすい動脈硬化や関節の痛みなどの合併症を軽減できるメリットがあります。
私自身が移植手術を行うわけではありませんが、移植後の患者さんから「移植できてよかった」、「腎臓移植外科に紹介してくれて本当にありがとうございます」等と聞くと、私も本当によかったと思います。

心に残るエピソード 

強く印象に残っている患者さんがいます。腎不全の若い女性でしたが、腎移植を受けてから出産に成功したんです。移植手術を受けても、将来の出産を諦めなくていいことは人生設計において非常に大切です。
また、腎臓内科医としては、移植手術を強く望んだにもかかわらずドナーが見つからないなど、さまざまな事情で移植できなかった方々とも接していきます。彼ら彼女らが本当に残念な思いと向き合いながら、別の道を歩んでいく姿にも感銘を受けています。

内科医へ啓発活動を  

研修医や医学生が腎臓内科へ学びに来たときは、できるだけ腎移植手術を見学してもらうようにしています。腎臓が移植されて初尿が出てくる瞬間を見ると、皆さん感動して帰っていきますよ。
移植の実際を知らないと、移植患者を診る際に緊張することもあるでしょうが、たとえば救急外来などでそうしたケースに遭遇しても抵抗なく診療できる医師になれるよう、こうした啓発活動は継続していきたいと考えています。

それぞれの役割を結集して

当院の強みのひとつとして、私たち医師だけでなく、薬剤師や栄養士、そしてリハビリテーションスタッフらによるチーム医療が挙げられます。最近は特に腎臓リハビリテーションが注目されていて、食事や運動などによる包括的サポートの重要性が改めて見直されています。
これからもそれぞれの役割を結集して腎移植を推進していきたいと思っています。

外科医として腎移植全般を診る

市立札幌病院 腎臓移植外科 医長
佐々木 元 先生

劇的に回復する腎移植

私は泌尿器科医ですが、腎移植を専門にしています。腎移植におけるドナーとレシピエントの手術はもちろん、外来では移植後のケアも行っています。また、腹膜透析のチューブを入れる手術など、透析の外科的な治療にも関わっています。
 私が移植医療を専門とするようになったのは、若い頃に腎移植に関わり、その素晴らしさに感動したからです。外科医が持てる技術を注いで腎臓を移植することで、患者さんはひと晩で劇的に腎不全から脱却します。
腎不全は、ドナーさえいれば腎移植が最善の選択だと考えています。腎移植を受けた方やご家族から「すごく元気に過ごしていますよ」などと手紙をもらうこともあるのですが、とても嬉しいですね。

顔の見える関係で連携を

院内の連携は腎臓内科をはじめ、非常にスムーズです。違う科であっても声をかけやすく、顔が見える関係で素早く対応してくれますので、とても恵まれていると思っています。
また、近隣の北海道大学病院とも良好な関係で、難しい症例などについて相談しています。電話でのやりとりが主ですが、気軽に話せる関係を築けています。
さらに当院の目の前にあるクリニックと連携し、移植後のフォローをお願いしています。院長の原田先生はかつて当院で腎移植に携わっていて、今も手術指導や術後のフォローのために当院へ頻繁に来てくれます。また、クリニックの患者さんに入院が必要となったときも、すぐに当院が対応できています。移植後のフォロー機関とこんなに密接に連携する取り組みは、全国的にも珍しいのではないでしょうか。

普及させるべきは…… 

生体腎移植は生体ドナー****が存在する点で、少し特殊な医療ではあると思います。そのため、健康な方からの腎臓提供に抵抗を覚える医療者がいることも理解しています。確かに本来、臓器提供は亡くなった方から行われるべきものです。ただ、日本人の死生観や文化的背景もあり、なかなか普及していません。
そこで私が今、重視しているのは若い医師や医学生への教育です。彼ら彼女らは腎不全についてはもちろん勉強しますが、治療を透析中心に考えがちです。そこに先行的腎移植という重要な選択肢があることを伝えたいのです。現在の若い世代に「腎移植は特殊でなく当たり前の選択肢である」との認識を持ってもらうことが、重要な命題だと思っています。

****生体ドナー:臓器の提供を希望、もしくは提供した人。原則として6親等以内の血族と3親等以内の姻族、事実婚のパートナーなどに限定。 

実現を望みたい研究 

日本で献腎移植の待機者数が1万4千人近くに上る中(日本臓器移植ネットワーク2023年)、世界では異種移植や再生医療分野の研究が進んでいます。
アメリカでは豚の腎臓をヒトに移植する試験が行われていますし、iPS細胞などを使った腎臓再生にも期待が寄せられています。また、末期腎不全に新たな細胞を使った細胞治療で、腎機能が少しでも回復すればと期待もしています。いずれも、もし実用化されれば献腎移植待機者にとって朗報となるでしょう。遠い未来になるかもしれませんが、実現を望みたいと思います。

(2023年5月取材/被取材者兼監修者の所属と肩書は取材時のものです)
〈取材・編集:ライフサイエンス出版株式会社〉


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