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メディカルアフェアーズ情報

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そこが知りたい、移植医療の今 ~患者さんに寄り添うチーム医療

治療の選択肢として、移植医療は目覚ましい進展を続けています。
手術手技の向上や薬の開発のみならず、専門スタッフの自己研鑽に基づいたチーム医療は
治療成績に大きく貢献しました。
その最前線をレポートします。

複数の診療科が手厚く診る、腎移植
ーレシピエントだけでなく生体ドナーの健康も追い続けて

Interview
北海道大学病院(北海道札幌市)
泌尿器科 講師
堀田記世彦 先生

【プロフィール】
ほった きよひこ:2000年に北海道大学医学部を卒業し、奈良県立医科大学勤務などを経て、2011年に北海道大学大学院を修了。米国ハーバード大学医学部マサチューセッツ総合病院にて移植免疫の研究に従事した後、北海道大学病院臓器移植医療部副部長となり、2019年より現職。 

北海道大学病院で行われている腎移植は、泌尿器科だけでなく、腎臓内科や小児科など複数の科がそれぞれの専門的な視点で関わっている。レシピエント本人だけでなく生体ドナー**のフォローも丁寧に行い、双方の健康維持に努めてきた。移植手術だけでない、術前・術後の各科の関わり方はどのようなものなのか。詳しく取材した。

レシピエント:臓器移植を希望する人、臓器移植を受ける・受けた人。
**生体ドナー:臓器の提供を希望、もしくは提供した人。原則として6親等以内の血族と3親等以内の姻族、事実婚のパートナーなどに限定。 

北海道大学病院の腎移植の特徴

私たちが腎移植を開始したのは1965年ですが、この約60年の間に治療成績は大きく向上しました。最近の移植腎生着率***は5年95%、10年90%です。
現在の年間症例数は、関連病院である市立札幌病院や市立釧路総合病院などと合わせて80例ほどです。
また当院は1歳後半からの小児腎移植に対応していることも特徴です。年間2〜3例ではありますが、体重10kg台の子に腎移植が実施可能な施設はそう多くないと思います。私たちは北海道の子どもは北海道で治療する、との気概を持って診ています。本州など遠隔地へ転院しての腎移植は、患児や家族に大きな負担を強いることになりますから。

***生着率:移植後に機能している移植腎の割合

小児と成人の腎移植はどこが違うのか

小児と成人の腎移植を比較すると、手術時間も移植腎の生着率もほとんど変わらないのですが、小児のほうが身体が小さい分、手術の難易度は高いと言えるでしょう。成人の腎移植は移植腎の腎動脈をレシピエントの腸骨動脈につなぎ、小児は一番太い大動脈に縫い付けるのですが、それでも成人に比べてとても血管が細いのです。もちろん成人も小児も最大限の準備をして最善の移植手術を行いますが、小児のほうがよりシビアかもしれませんね。

腎臓内科との連携は密に

移植医療はこの10年ほどで、移植外科だけでなく他の科が密接に関わるようになりました。かつては何でも外科医が対応していましたが、今は術前術後の管理などを内科の医師らと連携しながら行っています。
たとえば腎移植を受けた患者さんの半数は退院後も当院の外来で診ていきますが、術後の内科的管理は腎臓内科と一緒に主治医が2人いるような形で行います。
さらに腎臓内科とは毎週一緒にカンファレンスを行っています。カンファレンスは若い医師が発言しやすいフランクな場にしているんですよ。実際、所属している科にかかわらず何でも話し合えますので、お互いに患者さんの紹介もしやすいんです。

増えている先行的腎移植

当院で実施している腎移植の多くは、当院または他施設の内科医から紹介を受けたケースです。
最近は透析導入前に腎移植を行う「先行的腎移植」も増えているのですが、これは腎不全を診ている内科医が、患者さんに腎代替療法について説明するとき、透析だけでなく腎移植についても提示してくれているお陰だと思います。
患者さんや医師の中にはまだ、「腎臓移植なんて危険なことをしなくても、透析で暮らせるならいいじゃないか」と考える方もいますが、これは50年以上前の生存率が低い時代の移植をイメージされているからでしょう。現在の腎移植は治療成績もよく、QOLを非常に高める事実を知っていただければと思います。

生体ドナーのフォローを重視

私たちは生体ドナーのフォローも大切にしています。生体ドナーとなるのは健康な成人ですが、腎臓提供後の様子を調べようと、過去に当院で生体ドナーとなった約300人に手紙や電話で健康状態を確認いたしました。
すると透析導入となった方が2人いました。1人は腎臓を提供していなくても腎不全を避けられなかった方ですが、もう1人は高血圧を放置して腎不全となっていました。腎臓摘出後の長期管理をきちんとしていれば防げたかもしれないケースです。
それでも300人を追跡してわかったのは、生体ドナーは日本人の平均寿命よりも長生きをしているということです。ただ、もともと腎臓を提供できる健康な方に対し、日本人の平均寿命算出には母数に病気の方も入っていますので、純粋な比較データとは言えませんが。
私はドナー候補者に説明するとき、この300人のデータを見せて「平均寿命よりは長生きできていますので、普通の人と同じく不摂生しないよう気を付ければいいんですよ」と伝え、腎臓摘出後は毎年必ず1回は受診してもらうようにしています。そこで「あなたの受診データが、次のドナー候補者の役に立つんですよ」と伝えると、進んで受診してくれるようになるんですよ。

アメリカのように移植後は内科医が

私はかつてアメリカで移植の研究をしていましたが、移植患者がどの病院にもたくさんいて、一般のクリニックでも移植後の患者さんを診ていました。残念ながら日本の医療機関では「免疫抑制剤を飲んでいる患者さんはちょっと……」と、躊躇されてしまうことがあります。
ですが内科医であればどなたでも、移植後の患者さんを私たち外科医よりきちんと診られるはずです。ですから私たちが患者さんの地元の内科医に直接電話をして、「こういう患者さんで、こういう点を診て、データを送ってくれれば大丈夫です」とお願いすると、すんなり受け入れてくれることが多いのです。そうして移植を受けた患者さんを実際に診てみると、腎不全の患者さんより元気ですから、長く診てくれるようになるんです。

手技を伝えていく後進の育成

全国的に移植医が足りないと言われていますが、当院は幸い若い医師の入局が増えています。学生や研修医に腎移植手術を見学してもらい、目の前で初尿を確認したり、翌日のクレアチニン値を実際に見てもらうと、「すごい!」と感激してくれますよ。
移植手術を教えるのは大変ですが、自分が苦労したところはあまり苦労させないようにしています。技術の向上は地道な作業の積み重ねです。教科書や技術書には書いていない手術のコツはたくさんありますので、それらを少しずつ手術室で伝えていく努力をしています。若い医師たちが私を追い越して育っていけばと思います。

20年後、30年後を見据えて

腎不全で苦しんでいた子どもが移植後に元気になっていく姿は、いつ見ても感激します。
私が医師になって初めて経験した腎移植は、中学生のお子さんでした。腎不全で透析を受けていたのですが、夏休みにお母さんの腎臓を移植し、夏休みのうちに退院していったんです。ほぼ学校を休むことなく復帰していく様子を見て「すごい」と思いました。
それから20年以上経ちましたが、その患者さんは今も元気に当院を定期的に受診しています。
移植腎の「10年生着率」とはよく言われますが、小児や20代〜30代で腎移植を受けた方にとって10年なんてあっと言う間です。今後は20年、30年後の生着率をどう伸ばすかを考えて、臨床と研究を続けていきたいと思います。

移植チームのスタッフから

腎臓内科医として、移植は日常診療の一環

第二内科(腎臓グループ) 診療准教授
西尾妙織 先生

どのように腎移植に関わっているか

私は内科医として、腎不全の患者さんに今後の治療選択肢について話しますが、透析と腎移植を同列に扱って説明しています。
また、外来では患者さんに「腎機能が低下して移植を選択せざるを得ない時期」の予測を伝えるようにしています。たとえば「3月まではもつけれど、それ以降は厳しいかもしれません」、「あと1年は大丈夫だと思います」などです。泌尿器科医もそれを基に移植のスケジュールを立ててくれます。
それからドナー候補者の適応確認も泌尿器科と一緒に行っています。血圧が高めだったり、尿タンパクが少し出ているなどの場合は、私たち内科で精査するようにしています。
手術当日と周術期はあまり関わることはなく、免疫抑制剤の調整も泌尿器科主体で行っていますが、高血圧や骨代謝異常、貧血など内科的な問題のある方は泌尿器科と併診しています。

腎代替療法の説明時に心がけていること

私から見て移植をしたほうがいいと思う患者さんには勧めますが、現在は患者さん主導で考えるSDM(Shared Decision Making)が主体ですから、こちらの考えを押しつけることのないよう、最終的にご本人が納得する選択をしてもらうことを心がけています。もしかしたら透析をしていたほうが幸せな方も中にはいるかもしれませんので。
ですから患者さんとはよく話し合います。患者さんは、私たち医師には言えない思いを看護師に伝えることもありますので、患者さんが他のスタッフと話のできる時間も設けるようにしています。

患者さんやご家族の思いを汲むこと

現在、献腎移植の待機期間は約15年ですから(日本臓器移植ネットワークより)、腎移植は生体ドナーの有無がもっとも大きな問題と言えるでしょう。
私は患者さん本人だけが来院されたときに「ご家族にどなたか腎臓を提供してくれる方はいますか」と、ストレートに聞いています。半数以上の方が「家族の身体を傷つけてまで腎移植を受けたくない」と言いますが、そんなとき私は「私が親の立場だったら、子どもには提供したいですよ。弟や妹などにもそうです」と伝えています。
患者さん本人がご家族に「腎臓の提供を受けたい」と言い出せないときは、通常の外来診察以外にご家族を連れてきてもらい、私から説明しています。するとご家族から申し出てくれることもあります。
ただ、提供しなければいけない雰囲気には絶対しないよう注意しています。移植医療も100%ではありません。術後に何かトラブルが起こったときに「移植しなければよかった」と患者さんやご家族が感じることのないよう、納得して選択できる話し合いを心がけています。

一般の方に、もっと知ってほしい

患者さんやご家族の中には、いまだに「移植には何千万円もかかる。家を売らなければ移植できない」と思っている方もいます。
普段、移植に接する機会がなければそれも仕方ないのかもしれません。日本ではドナーカードを持つ方も献腎移植も十分に増えてはいませんから。
ですが海外では小学校で移植の授業を行うなど、移植医療がもっと身近にあります。日本もそうなってほしいので、何かいい情報提供の仕方がないか模索しています。移植医療に触れる機会のない方にこそ知っていただくために、たとえば新しくできたファイターズスタジアムで観戦者全員に尿検査スティックを配るなど、何か新しくてわくわくするような啓発活動ができたらと思います。

「移植してよかった」

腎移植後に、患者さんから「自由になれた。本当に感謝しています」と言われたことがあります。透析をしなくていい生活は、透析を受けていた患者さんにしかわからないことですから、ご本人たちから「移植してよかった」と聞くと私も本当によかったと思います。

移植は日常診療

毎週、移植カンファレンスがあり、研修医を含めて全員で話し合っています。また、腎移植を受けた患者さんに発熱や肺炎、尿路感染症、帯状疱疹などの合併症が起こったときは、私たち内科の病棟に入院してもらっています。ですから私たち内科医にとって移植を受けた患者さんを診ることは日常診療と言えます。

移植の知識を持つ腎臓内科医を!

北海道大学で学んだ腎臓内科医たちは、普段から移植を日常診療の一環として診ていますので、移植が特別な治療だと感じている医師はおそらくいないでしょう。
こうした医師たちが市中病院に散らばって診療している中、移植希望の患者さんをたくさん紹介してくれています。ですから北海道の移植は非常に増えているのです。
これからも移植にも携わる腎臓内科医をたくさん育てていけたらと思っています。

劇的に回復する小児腎移植

小児科 診療講師
岡本孝之 先生

小児の腎移植は体格が重要

小児が透析を受ける場合、その多くはシャント作製が困難であることから自動腹膜透析装置に毎晩つなげる腹膜透析となります。腎機能が低下しているため食事の経口摂取が難しく、経管栄養となるケースや成長障害が見られることは少なくありません。
身体の小さな子は移植前に、成人生体ドナーの腎臓が入る程度の体格に成長を促すことが求められます。私たち小児科医はできるだけいい状態で移植手術につなげられるよう、透析中に食事療法や薬による管理を行い、場合によっては成長ホルモンを投与することもあります。

科は違ってもすぐ相談を 

私は小児科医として、腎機能の低下した子どもについてはすぐ泌尿器科医に相談するようにしています。その子が移植する必要に迫られたときでなく、将来を見据えてあらかじめ話しておくんです。いざと言うときは電話をかけますが、夜間休日や学会出張中でも応じてくれますので非常にありがたい存在ですね。

腎移植後は日に日に改善

腎移植後の子はもちろん透析からすぐに離脱できますし、少しずつ口から食事が摂れるようになります。生活の質は大幅に向上し、顔色はよくなって背も伸び始め……、何よりも活発になっていくんですよ。
かつて私は小児科医としての研修を終えた後、腎臓を専門にしようと当院に戻りました。そのときに初めて、3歳の子の腎移植に関わったのです。生まれてからずっと透析を受けていた子が劇的に回復し、腎移植が非常にダイナミックな治療であることを肌で感じました。その子はもう高校生になりましたが、今も元気に過ごしています。
小児の腎代替療法においては、移植に勝るものはないと実感しています。

患者さんとご家族に選択肢を伝えるときは

私は患者さんとご家族に腎代替療法について説明するとき、その選択肢に移植と透析、それからコンサバティブマネジメントとして保存的に診る方法も含めて提示しています。それでも選べる状況にあるならば、移植が一番だと伝えています。

移植後の外来診察で心がけていること

移植後は患者さんに小児科外来へ通ってもらいますが、泌尿器科と一緒に診ています。
まず気を付けているのは服薬管理です。幼少期は親が管理していますが、成長するにつれて本人が管理するようになると、ノンアドヒアランスに陥ってしまうケースがあるんです。免疫抑制剤の怠薬は拒絶反応を引き起こし、移植腎の廃絶につながる恐れがあります。
私たちが「薬は飲んでいるはずだ」と思っていても、その子の理解が不十分だったりすると、「実は飲んでいなかった」と言われることも起こり得ます。
ですから小児科医や泌尿器科医だけでなく、移植コーディネーターや看護師など複数のスタッフが関わることによって、そのうちの誰かにその子が本音を話せるような環境づくりを心がけています。そうしてスタッフ間で情報共有することによって、きちんと服薬管理できるよう留意しています。

回復した姿を皆に伝えたい

一般に、「腎移植」と聞いてもピンとこない医療従事者はいらっしゃるでしょう。私も当院で腎臓を専門にするまではそうでした。透析患者が腎移植後に劇的に回復する様子を見る機会がありませんでしたから。
透析を受けていた子が当院で腎移植を受け、また地元に戻って主治医のもとへ行くと、「あまりにも元気になっていて驚きました。腎移植ってすごいですね」と大変驚かれます。
また親御さんも、透析を離脱した子どもの世話が楽になり、日常生活に余裕が出てきます。子どもが透析を受けていたときは、自分の服装なども構っていられない様子でしたが、診察室でも笑顔が見られるようになるんですよ。

密な連携で 

北海道の土地は広大ですが、患者さんがどの地域に住んでいても遅延なく腎移植を受けられるよう、医療機関同士で密なコミュニケーションを図り、相談しやすい環境をさらに整えていければと考えています。

(2022年12月、1月取材)
〈取材・編集:ライフサイエンス出版株式会社〉
  ※所属・役職は2022年12月時点の情報です。


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