• お知らせ

    アステラスメディカルネットでは、利便性向上、利用履歴の収集・集計のため
    Cookieを利用してアクセスデータを取得しています。詳しくは利用規約をご覧ください。オプトアウトもこちらから可能です。

メディカルアフェアーズ情報

情報提供に関する留意事項

そこが知りたい、移植医療の今 ~患者さんに寄り添うチーム医療

治療の選択肢として、移植医療は目覚ましい進展を続けています。
手術手技の向上や薬の開発のみならず、専門スタッフの自己研鑽に基づいたチーム医療は治療成績に大きく貢献しました。
その最前線をレポートします。

チームの「総合力」で、難易度の高い症例に挑む 〜術前・術後管理から長期予後まで丁寧に支える肝移植

Interview
長崎大学病院 肝移植診療グループ (長崎県長崎市)
移植・消化器外科教授 江口 晋 先生

【プロフィール】
えぐち すすむ:1992年に長崎大学医学部を卒業し、同年第二外科へ入局。1998年に長崎大学大学院 博士課程を修了し、同年同大学移植・消化器外科へ。その後、オランダGroningen大学病院肝移植・肝胆膵外科勤務などを経て、2012年より現職。2021年より長崎大学病院副病院長(安全管理担当)も兼任。日本移植学会の代議員・理事、日本臓器移植ネットワークの倫理委員会委員も務める。

肝移植は移植手術だけでなく、術前・術後管理や長期にわたる経過観察が肝要だ。それらすべてが長期成績の向上につながっている。長崎大学病院で実施している肝移植は、術前の検査入院は内科が担当し、術後の集中治療を行った後は内科と外科による併診が行われている。各科の連携は「非常にスムーズで、お互いに遠慮がない」そうだ。詳しく聞いた。

長崎大学の肝移植、その特徴とは

長崎大学病院は肝臓、肺、腎臓、膵臓と4臓器の移植を実施している、日本でも数少ない施設です。中でも私たちが行っている肝移植の特徴は、「チームによる総合力」で成り立っていることでしょう。外科が移植手術をするだけで患者さんが回復し、長期予後が向上するわけではありません。術前に患者さんの状態をどこまで改善できるか、そして術後に合併症などが起こった場合はどうしていくのか、チームで議論し取り組んでいます。皆で同じ目標を持って進めていくのが当たり前にできており、またそうしやすい土壌があるのです。

強固な信頼関係による連携とは

過去にチーム内の連携がうまくいかなかったときは皆で反省し、そのたびに乗り越えてきました。こうしたトライ・アンド・エラーの繰り返しによって強固な信頼関係が生まれ、今日のチームの雰囲気が醸成されたのだと思います。
私たちが大切にしているのは「おのおのの専門領域で、自ら肝移植に興味を持って関わること」です。そうでないといつまで経っても「やらされている感」がぬぐえません。
現在、チームの面々は肝移植に興味を持って「どうしたらうまくいくのか」を常に考えて臨床にあたり、それぞれが研究や教育も実施しています。実に頼もしいですよ。

肝移植の実績と長期生存率、成績向上の理由は

成人肝移植の実績は327例で、うち19例が脳死肝移植です(1997年〜2021年7月28日)。国内でも比較的多いほうではないでしょうか。術後成績は、初回の移植で1年生存率が84%、5年生存率が72%、10年生存率が67%です(1997年〜2020年)。
術前状態のよい、合併症の少ない患者さんのみに対応していれば生存率は上げられますが、全国から非常に厳しい状態の患者さんも受け入れてきましたので、数値はどうしてもそれに伴った結果となっています。
しかし昨今はその成績が大幅に向上しました。大きな理由は4つあり、まずは移植後にC型肝炎や肝硬変になっても内科医の治療によって克服できるケースが増えてきたこと。次に免疫抑制剤の進歩です。副作用が少なくなって服薬管理も容易になり、血液型不適合移植の成績も向上しました。そして集中治療部との密な連携です。手術手技は大きく変わっていませんので、こうした術前術後管理の向上が、そのまま成績向上につながっていると考えています。
さらにもうひとつ、チーム間の連携も長期成績の向上に大きく貢献しています。患者さんが元気になって笑顔で外来を訪れ、「孫が生まれました」、「起業しました」など、それぞれの新しい人生が拓かれていく様子を聞けることは、私たちの大きな喜びでもあります。

COVID-19の影響による変化

当院は地域の基幹病院でもありますから、重症化したCOVID-19の患者さんによってICUが満床となり、移植手術を先延ばしにせざるを得ない時期もありました。
私たちも防護服の着脱などのトレーニングを行いましたし、肝移植を受けた患者さんには早めに電話再診を開始しました。

肝移植は患者さんの人生を大きく変える

全国のかかりつけ医にお願いしたいことがあります。患者さんの肝機能が悪化したら「もう治らない」と諦める前に、肝移植の可能性を考え、ぜひ専門医に一度相談してみてください。肝移植を「別世界の話だ」とは思わないでほしいのです。
患者さんは肝移植を受けることで、人生が大きく変わります。もちろんご家族もそうです。
私たちはこれからも患者さんとご家族の笑顔のために、チームの総合力をもってがんばっていきたいと思っています。

移植チームのスタッフから

相談には迅速かつface to faceで

移植・消化器外科 准教授
日髙匡章 先生

患者さんの紹介は全国から

全国の医療機関から肝移植の相談を受けています。
私たちのモットーは「紙(カルテや検査値など)だけを見るな」です。ですから「診にきてほしい」と言われれば、「何とかします」という姿勢で、九州全域はもちろん、東北や近畿、関西圏にも行きました。
遠隔地からの相談は、血友病の薬害でHIV陽性となった方の肝移植など、難しい症例であることが多いですね。患者さんのご家族から直接電話で「どこからも肝移植を断られた」と相談を受けたこともあります。
私が心がけているのは、迅速に現地に赴いて患者さんを診て、主治医やご家族にface to faceで対応することです。そうすることによって「この人なら患者さんを紹介したい」と感じてもらえればと思っています。

術後早期は、素早い異変察知を

肝移植の術後早期は、ささいな変化への対応が少し遅れるだけで血管トラブルや拒絶反応、感染症など取り返しのつかない事態になる可能性があります。ですからICUの医師らが「これはおかしい」と察知したらすぐに何でも言ってもらえるようコミュニケーションを大切にしています。

「電話魔」と呼ばれても

連携においては、気になることはすぐスタッフに尋ねるよう心がけています。「電話魔」と言われていますが(笑)、何度かけても各専門職がすぐ答えてくれます。ICUや放射線科、感染症専門医など、さまざまな領域の専門家が垣根なくすぐに支えてくれることは、私たちの大きな強みです。
たとえば当院は肝移植前に内科に入院して検査を行い、手術当日は内科から手術室に入りますが、このようなシステムは全国的に珍しいのではないでしょうか。通常は術前も外科に入院して手術を実施する施設が多いと思います。これまで内科と外科がともに肝移植の患者さんを診るという、先人たちが培ってきたいい関係性をずっと踏襲しています。

移植の普及啓発は

当院は救急救命科に脳外科出身の医師がおり、ご家族に臓器提供の話をしてくれていますので、比較的臓器提供は多いと思います。ICUの医師も臓器提供に協力する院内体制が整っています。
県で定期的に開催している臓器提供に関する「移植情報担当者協議会」には脳外科医や救急医も集まりますが、私たち移植外科医と当院の移植コーディネーターも参加しています。

苦い思いと考え続けること

肝移植までたどり着けなかった患者さんや、肝移植で救えなかった患者さんのことは、自分を戒める意味でもずっと忘れられません。
患者さんとご家族は希望を持って肝移植に臨まれますので、「先生、助けてくれると言ったじゃないか」と言われたことは、一度や二度ではありません。そうした苦い思いから、あのときどうすればよかったのかと考え続けています。
肝移植は今後、肝炎治療薬の進展などによって全体の症例数は減っていくでしょう。しかしそれでもまだ肝移植が必要な患者さんはいます。再生医療も移植を凌駕するほどになるには時間がかかるでしょう。肝移植が今後も必要な医療であることに間違いはありません。
自分の経験を次の世代の医師が活かしていくために、どう伝えていけばいいのか、これからも考えていきたいと思います。

最前線にも出ていく「後方支援部隊」

集中治療部 准教授/副部長
関野元裕先生

移植前から関わることも

私たち集中治療部は、肝移植後の全身管理だけでなく、移植前から患者さんに関わることもあります。移植待機中の感染症、呼吸不全、腎不全などで命に関わるような状態になった場合ですね。私たちが介入し患者さんの状態を整えてから移植手術を行っています。最近はそうしたケースが増えてきました。厳しい状態で移植に臨まれる患者さんが増えている、また逆に厳しい状態の患者さんでも移植が行えるようになったとも言えるでしょう。

議論を重ねた外科との連携

外科とはこれまで治療方針などをめぐって遠慮なく議論を重ねてきましたので、強固な信頼関係が成り立っています。連携も非常にスムーズですよ。
私たちは主治医ではありませんが、患者さんを預ったら、主治医の望んだことを淡々とこなしていくだけの対応はしません。私たちの専門性を持って全力で対応していますので、主治医に対して「先生、それは違います。こうしませんか」と言うこともあります。それはつまり、責任を負うことでもあります。帰宅しても患者さんの状態が気になって眠れず、朝3時、4時に目覚めてしまうことも多々ありますが、それも覚悟の上です。
確かに言われたことだけをやっていれば楽なんですよ。ですが各職種がそれぞれ言われた通りのことしかしなかったら、それは本当の連携と言えるでしょうか。
カンファレンスで意見を述べ、他科の医師とぶつかり合うことがあっても、最終的に信頼を得て「任せるわ」と言われれば、私たちのモチベーションもさらに上がります。

違和感を無視しないこと

連携する上で気を付けているのは、患者さんの状態を検査の数値やレントゲン画像だけで診ないことです。バイタルサインなど「何かおかしい、何かが違う」という経験からくる違和感を無視せず、躊躇なく外科医につないでいます。

大変な思いが吹き飛ぶ瞬間とは

私たちはコミュニケーションが取れる状態の患者さんに会うことがなかなかありません。術後はたいてい麻酔がかかっている状態で、意識が戻れば数日のうち病棟へ移動しますので、患者さんとの関わりは基本的に少ない科でもあります。
ただ、最近は術前から状態が悪くICUへ入院するケースが増えていますので、患者さんも私たち集中治療に関わるスタッフのことを覚えていてくれて、退院後に、あいさつに来てくれることもあるんです。それまでの大変だった思いが吹き飛んで、また頑張ろうと思える瞬間です。

信頼を得て、これからも

私たちは後方支援部隊として、また場合によっては最前線にいつでも出ていける協力部門としてこれからも頑張っていきたいと思います。

患者さんの劇的な回復に感激することも

消化器内科 准教授
宮明寿光先生

内科医として、チーム制で

内科医として肝移植に関わっています。内科は3年ほど前から主治医制でなくチーム制を導入していて、現在3チームあります。患者さんをチームで担当して診ますので、医師一人ひとりの負担が減りました。
肝移植もこのチーム制で対応しており、各チームに肝臓の専門医と、胆膵診療を主とする医師をひとりずつ配置しましたので、多くの内科医が移植医療の経験を重ねられるようになりました。

肝移植前の検査は内科で

肝移植前には、患者さんに外科だけでなく内科外来も一緒に受診してもらいます。さらに移植前のスクリーニング検査は内科で行いますので、まずは内科に2週間ほど入院してもらい、移植適応か否かなどの検査を一通り実施しています。

移植後は内科と外科で併診を

術後も患者さんの状態が落ち着いたら、内科と外科で併診していくケースがほとんどです。
また、長崎大学は肝移植を受けた患者さんはほぼ1年後に肝生検を行っていますが、それも含めて移植後の肝生検は内科が担当しています。
従来、肝移植の適応となるのはウイルス性肝炎が多かったのですが、最近は脂肪肝やアルコールの大量摂取など生活習慣に関係した原因も増えてきました。そうした管理は内科が得意ですので、移植後も長く関わるようになりました。

問い合わせには快く

連携する際はまず、依頼を快く受けることを意識しています。問い合わせにはすぐ応じ、相談にのっています。医局や外来でもお互いにすぐ相談できる体制になっているので、気兼ねなく話をすることができるんですよ。

「こんなによくなったんだ」

肝移植は内科から患者さんを紹介することが多いので、状態が悪い姿をよく知っています。そうした患者さんが肝移植を受けて、また内科に戻ってきたときに「こんなによくなったんだ」と実感することがよくあります。長期予後も大幅に改善し、高齢になった患者さんから「先生、あのとき肝移植を受けてよかった」と言ってもらえることもあって、感慨深いですね。

治療の選択肢として

新薬の登場によってウイルス性肝炎が何とかコントロールできる時代になりました。肝疾患への取り組みも少しずつ変わっていくと思います。これからは生活習慣に関連した、脂肪肝によるNASHからの肝硬変やアルコール性脂肪肝への取り組みが大きな課題となっていくでしょう。
長崎大学は若い内科医らも肝移植について学ぶ機会がありますので、彼ら彼女らがいずれどの医療機関で働くことになっても、肝移植を治療の選択肢として提示できるようになればと思っています。

「何でも屋」として支えていく

レシピエント移植コーディネーター
辻あゆみさん

コーディネーターは橋渡し役

移植コーディネーターをひと言で表現するなら「何でも屋」です。患者さんやご家族からの相談を何でも受け、また必要な際に医師への橋渡しをする役割も担っています。
患者さんやご家族に接するときは「いつでもウェルカムです」とユーモアも交えながら、相手が緊張せず話せるように心がけています。ご家族に話しかけるときも「ご主人様」や「奥様」でなく、名前を覚えて呼びかけているんです。そのほうが他人行儀でない本音を聞けるかなと思いまして。

負の側面も説明

肝移植について患者さんやご家族に説明するときは、私が作ったオリジナルパンフレットを使い、パワーポイントのスライドもお見せしています。
患者さんが気にされるのは手術のことが多いですね。どんな手術でどんな傷がつくのか、実際の写真を見せてイメージしてもらっています。それから術後の経過や移植後はどうなるか、いい話だけでなく負の側面もすべてお話しします。
どんなに丁寧に説明し、ようやく移植できても、現代医学ではどうしても結果が伴わないことがあります。期待ばかり持たせてしまうと、「こんなはずじゃなかった」、「こんな話は聞いていない」と言われてしまいます。
ですから移植は万能の医療ではなく、手術を乗り越え、定期的な受診をし、免疫抑制剤を生涯飲み続ける必要があること、合併症の可能性、移植後の生存率、日本では生体ドナーの死亡例が1例あることなど、すべてを伝えます。もちろん患者さんだけでなく、サポートしてもらうご家族にも、事前に知ってもらうようにしています。その上で本当に移植を選択しますか、家族一丸となって取り組めますかと問いかけます。
たいていの患者さんは驚かれます。「そんなに大変な治療なのですか」と。中には「移植以外の治療で頑張っていこうと思います」と言う方もいますが、それも選択肢のひとつです。
本人とご家族にとってベターな選択ができるよう悩む過程を支え、決定したら全力でお手伝いしたいと思っています。

仲のいい肝移植チーム

肝移植チームのスタッフはとても仲がいいですよ。お互いの垣根が低く、電話も相談も躊躇なくパッとできます。こうした関係性が築けているのは、お互いが相手の要求や期待にきちんと応えてきたからだと思います。

移植を増やすために

私は看護系大学で講義も行っていますが、日本の臓器提供の状況や意思表示カードについては看護を目指す学生であってもよく知りません。一般の方はもっとご存知ないでしょう。普及啓発ついては、若い世代に話すことで今後の臓器移植の推進につながるのではないかと期待しています。

新しい人生を生み出せる医療

脳死(肝)移植を受け回復した患者さんが、毎年ご遺族にサンクスレターを書かれている姿などを見ると、やはり移植医療に関わってよかったと思えるんです。特に脳死移植は、誰かの命が誰かにつながって新しい人生を生み出すことができますから。

(2021年7月取材)
〈取材・編集:ライフサイエンス出版株式会社〉
※所属・役職は2021年7月時点の情報です。


関連ページ

アステラス製薬株式会社の医療関係者向け情報サイトに​アクセスいただき、ありがとうございます。​

本サイト(Astellas Medical Net)は、日本国内の医療提供施設にご勤務されている医療従事者を
対象としています。該当されない方はご登録・ご利用いただけませんので、予めご了承ください。

ご利用にはアステラスメディカルネット利用規約への同意が必要です。
ご同意頂ける場合は以下の該当ボタンをクリックしてお進み下さい。

本サイトでは、利便性向上、利用履歴の収集・集計のためCookieを利用してアクセスデータを取得しています。
詳しくは利用規約をご覧ください。オプトアウトもこちらから可能です。

アステラスの企業サイトをご利用の方はこちらからご覧ください。 

アステラスメディカルネット会員の方

medパス会員の方

medパスのパスワード再発行をご希望の場合も上記よりアクセスください。

会員登録されていない方

医療従事者の方は、会員限定コンテンツを除いたアステラスメディカルネットサイトの一部をご覧いただけます。
会員登録すると、製品に関する詳細な情報や領域ごとの最新情報など、会員限定のコンテンツが閲覧できます。

会員向けコンテンツをご利用の方

会員になると以下のコンテンツ、サイト機能をご利用いただけます。 

会員限定コンテンツの閲覧

ニュースや読み物、動画やWEBセミナーなど、
日々役立つ豊富な情報が閲覧可能になります。

情報収集サポート機能の利用

ブックマークやWEBセミナー予約など、手軽に、
効率的に情報を収集・共有いただける機能を
ご利用いただけます。