イレウス〈効能共通〉

イレウス〈効能共通〉

Ⅱ.重大な副作用:イレウス〈効能共通〉

  1. 概要
  2. 対処法
  3. 発現状況

Key point

  • グラセプターの電子化された添付文書には、「11.1 重大な副作用」にイレウスの記載があります。観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行ってください。
  • グラセプターの電子化された添付文書には、「11.2 その他の副作用」に消化器に関する記載があります。観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行ってください。

電子化された添付文書記載内容(抜粋)

11. 副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1 重大な副作用
〈効能共通〉
11.1.7 イレウス
(0.1~5%未満)
11.2 その他の副作用
消化器 腸管運動障害、食欲不振、下痢、腹痛、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、大腸炎、口内炎、悪心、嘔吐、腹部膨満感(0.1~5%未満)、下血(0.1%未満)、胸やけ、消化管出血(頻度不明)

注意喚起の設定根拠

重大な副作用1)

本剤と同一成分を含むプログラフの投与によるイレウスが報告されている。イレウスの症状があらわれた場合には減量・休薬等の適切な処置を行うこと。
腎移植におけるプログラフの前期第Ⅱ相試験成績では腹部膨満感などの腸管運動障害が36例中11例(30.6%)に認められたが、ほとんどがプログラフ静脈内投与中に発現しており、プロスタグランジンE2投与及びプログラフの経口投与への変更にて速やかに消失している。2)
また動物実験において、ラット肺移植後100日以上の長期生着例6例中1例を除き、最大体重より13~55%の体重減少を認めた。体重減少例はX線写真上でイレウス像を呈しており、死亡直前の腹部は全てガス像を有していた。本症例は腸管膜動脈に異常所見は認めず、移植後に認めた体重減少はタクロリムスによる麻痺性イレウスが原因と考えられた。3)

<出典>

  1. グラセプターカプセル0.5mg,1mg,5mgインタビューフォーム
  2. 石橋道男他 移植 1994;29(3):294-313
  3. 栗本義彦他 日本胸部外科学会雑誌 1996;44(増刊号):1574

発現機序

重篤副作用疾患別対応マニュアル  麻痺性イレウス 平成20年4月(令和3年4月改定)  厚生労働省1)
2.副作用の概要 (6)発症機序 C:抗がん剤、免疫抑制剤
免疫抑制剤であるタクロリムスはマクロライド構造を有する化合物である。マクロライド系抗生物質であるエリスロマイシンは、結腸から空腸にかけて腸管収縮・蠕動運動の異常を起こし、嘔吐を来たすことが知られているが、タクロリムスによる麻痺性イレウスも同様の機序が疑われている。2)
ラットでの肺移植実験で本剤によると思われる麻痺性イレウスの報告3)があり、また日本における本剤の治験時に、腹部膨満などの腸管運動障害が約30%にみられている。4) タクロリムスの血中トラフ値とイレウスの発現率に関係があるとされる。

なお、臨床でみられる下痢については、本剤の免疫抑制作用により感染に対する消化管局所での免疫能が低下したことに伴う感染性の下痢の可能性も考えられる。5)

<出典>

  1. 重篤副作用疾患別対応マニュアル  麻痺性イレウス 平成20年4月(令和3年4月改定)  厚生労働省
    https://www.pmda.go.jp/files/000240120.pdf
  2. Ikoma A et al. Gastroenterology 1993;104(4):A525
  3. 栗本義彦他日本胸部外科学会雑誌 1996;44(増刊号):1574
  4. 石橋道男他 移植 1994;29(3):294-313
  5. Helderman JH et al. Am Soc Nephrol 2002;13(1):277-287

対処法1)

プログラフの腎移植における前期第2相試験では腹部膨満感などの腸管運動障害が36例中11例(30.6%)に認められたが、ほとんどが静注内投与に発現しており、プロスタグランジンE2投与及びプログラフの経口投与への変更にて速やかに消失している。2)
また、動物実験において、ラット肺移植後100日以上の長期生着例6例中1例を除き、最大体重より13~55%体重減少を認めた。体重減少例はX線写真上でイレウス像を呈しており、死亡直前の腹部は全てガス像を有していた。腸管膜の動脈に異常は認めず、移植後に認めた体重減少はタクロリムスによる麻痺性イレウスが原因と考えられた。3)

重篤副作用疾患別対応マニュアル  麻痺性イレウス 平成20年4月(令和3年4月改定)  厚生労働省4)
6.典型的症例の概要
【症例3】20歳代、男性  使用医薬品:タクロリムス  慢性糸球体腎炎に対する生体腎移植後、シクロスポリン、抗リンパ球グロブリン(Anti-lymphocyte globulin)、プレドニゾロン、アザチオプリンの4剤で免疫抑制していたが、腎機能悪化のためアザチオプリンよりタクロリムスに変更したところ、12日目に嘔気・嘔吐・腹痛が出現し、イレウスと診断された。タクロリムスを1/3に減量したところ、症状は軽快した。5)

参考に本剤と同一成分を含むプログラフ(カプセル・顆粒・注射液)の承認時までの臨床試験及び市販後の調査(移植領域)におけるイレウスに関連する副作用に対するプログラフの処置について掲載する。6)

項目

発現率(%)

程度

処置(プログラフ)

 

肝移植

骨髄
移植

腎移植

高度

中等度

軽度

不明

中止

休薬

減量

経路変更

継続

その他

不明

腹部
膨満感

0/39

8/190
(4.2)
22/328
(6.7)

1

9

20

0

1

0

6

0

23

0

0

嘔吐

2/39
(5.1)

31/190
(16.3)
9/328
(2.7)

2

19

21

0

1

2

15

1

18

5

0

<出典>

  1. グラセプターカプセル0.5mg,1mg,5mgインタビューフォーム
  2. 石橋道男他 移植 1994;29(3):294-313
  3. 栗本義彦他 日本胸部外科学会雑誌 1996;44(増刊号):1574
  4. 重篤副作用疾患別対応マニュアル  麻痺性イレウス 平成20年4月(令和3年4月改定)  厚生労働省
  5. 今井利一他 共済医報 1999;48(supple):142
  6. グラセプター 再審査結果及び使用上の注意改訂のお知らせ(2016年2月). 社内資料

発現頻度

電子化された添付文書

11. 副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1 重大な副作用
〈効能共通〉
11.1.7 イレウス
(0.1~5%未満)

製品のご使用にあたっては、最新の電子化された添付文書をご参照ください。

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