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中枢神経系障害〈効能共通〉

中枢神経系障害〈効能共通〉

Ⅱ.重大な副作用:中枢神経系障害〈効能共通〉

  1. 概要
  2. 注意事項
  3. 対処法
  4. 発現状況

Key point

  • グラセプターの電子化された添付文書には、「1. 警告」に全身痙攣、意識障害の記載があります。致死的な経過をたどることがあるので、緊急時に十分に措置できる医療施設及び本剤についての十分な知識と経験を有する医師による使用をお願いします。
  • グラセプターの電子化された添付文書には、「11.1 重大な副作用」に中枢神経系障害の記載があります。全身痙攣、意識障害、錯乱、言語障害、視覚障害、麻痺等の症状があらわれた場合には、神経学的検査やCT、MRIによる画像診断を行うとともに、本剤を減量又は中止し、血圧のコントロール、抗痙攣薬の投与等適切な処置を行ってください。
  • グラセプターの電子化された添付文書には、「11.2 その他の副作用」に振戦等の精神神経系副作用の記載があります。観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行ってください。

電子化された添付文書記載内容(抜粋)

1. 警告〈効能共通〉
1.1 本剤の投与において、重篤な副作用(腎不全、心不全、感染症、全身痙攣、意識障害、脳梗塞、血栓性微小血管障害、汎血球減少症等)により、致死的な経過をたどることがあるので、緊急時に十分に措置できる医療施設及び本剤についての十分な知識と経験を有する医師が使用すること。

11. 副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1 重大な副作用
〈効能共通〉
11.1.3 中枢神経系障害
(0.1~5%未満)
可逆性後白質脳症症候群、高血圧性脳症等の中枢神経系障害があらわれることがあるので、全身痙攣、意識障害、錯乱、言語障害、視覚障害、麻痺等の症状があらわれた場合には、神経学的検査やCT、MRIによる画像診断を行うとともに、本剤を減量又は中止し、血圧のコントロール、抗痙攣薬の投与等適切な処置を行うこと。

注意喚起の設定根拠1)

警告

「重大な副作用」の項にも記載しているとおり、本剤の投与により、腎不全、心不全、感染症、全身痙攣、意識障害、脳梗塞、血栓性微小血管障害、汎血球減少症等の重篤な副作用が発現することが知られている。これらは致死的な経過をたどることもあるため、安全性を考慮し緊急時に十分に措置できる医療施設及び本剤についての十分な知識と経験を有する医師のもとで本剤をご使用いただくよう記載した。

重大な副作用

本剤の投与による中枢神経系障害として可逆性後白質脳症症候群、高血圧性脳症等が報告されている。中枢毒性発現の危険因子としては、免疫抑制剤の血中濃度上昇、低Mg血症、腎・肝機能障害、低コレステロール血症、高血圧、低Na血症、Al過量負荷、ステロイドのパルス療法、放射線照射等の治療歴等があると言われており2)、免疫抑制剤投与の際にはこれらの危険因子に注意が必要である。また中枢神経系症状の危険因子に関連する一般臨床検査(腎・肝機能、コレステロール、電解質、血圧等)を行い、その変動を薬剤の血中濃度や臨床症状と対応させて評価するととともに、脳症の症状(全身痙攣、意識障害、錯乱、言語障害、視覚障害、麻痺等)が現れた場合には、神経学的検査ならびにMRI、CT等の画像診断を行い、減量・休薬、血圧のコントロール、抗痙攣薬の投与等の適切な処置を行う。中枢神経症状の発現時期は遅いことがあるものの、移植領域の場合、移植後1カ月(特に1週間)以内の初期に発現することが多く、また移植後初期の1~2週間は予期せぬ血中濃度の上昇を招く危険性が高いことから、中枢毒性の発現を予防するためにはこの時期の血中濃度モニタリングは特に重要であると考えられる。2)

<出典>

  1. グラセプターカプセル0.5mg,1mg,5mgインタビューフォーム
  2. 首藤秀樹他 月刊薬事 2001;43(3):539-546

発現機序1),2)

カルシニューリンやFK結合蛋白(FKBP)は中枢神経組織に多く、特に海馬、視床下部、大脳皮質及び大脳基底核にはカルシニューリン及びFKBPが共に多く存在する。また、カルシニューリンは脳内の総蛋白質の1%以上を占め、各種神経伝達物質の動態や機能に重要な役割を果たすことが明らかとなっている。このことから、脳内のFKBPと結合したタクロリムスがカルシニューリンを阻害することにより中枢系の作用を引き起こすと考えられている。

<出典>

  1. Dawson TM et al. Neuroscience 1994;62(2):569-580
  2. Bechstein WO Transpl Int 2000;13(5):313-326

定期的な検査の実施

血圧測定、神経学的検査ならびにMRI、CT等の画像診断
タクロリムス血中濃度

対処法1)

参考に本剤と同一成分を含むプログラフ(カプセル・顆粒・注射液)の承認時までの臨床試験及び市販後の調査(移植領域)における中枢神経系障害に関連する副作用に対するプログラフの処置について掲載する。

項目

発現率(%)

程度

処置(プログラフ)

 

肝移植

骨髄移植

腎移植

高度

中等度

軽度

不明

中止

休薬

減量

経路変更

継続

その他

不明

振戦

8/39
(20.5)
18/190
(9.5)
38/328
(11.6)

2

12

50

0

2

2

14

1

43

2

0

頭痛

0/39

22/190
(11.6)
13/328
(4.0)

2

13

20

0

2

1

13

0

18

1

0

振戦を含む中枢神経障害の多くはタクロリムスの減量、もしくは投与中止で軽快することが多く、可逆性の副作用と考えられている。一方で減量、中止後も軽快しないケースも存在する。‎2)

<出典>

  1. グラセプター 再審査結果及び使用上の注意改訂のお知らせ(2016年2月). 社内資料
  2. Bechstein WO Transpl Int. 2000;13(5):313-326

発現頻度

電子化された添付文書

11. 副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1 重大な副作用〈効能共通〉
11.1.3 中枢神経系障害
(0.1~5%未満)
可逆性後白質脳症症候群、高血圧性脳症等の中枢神経系障害があらわれることがあるので、全身痙攣、意識障害、錯乱、言語障害、視覚障害、麻痺等の症状があらわれた場合には、神経学的検査やCT、MRIによる画像診断を行うとともに、本剤を減量又は中止し、血圧のコントロール、抗痙攣薬の投与等適切な処置を行うと。

11.2 その他の副作用
精神神経系 振戦(5%以上)、しびれ、不眠、失見当識、せん妄、不安、頭痛、感覚異常(0.1~5%未満)、めまい、眼振、外転神経麻痺、四肢硬直、傾眠、意識混濁、うつ病、興奮(0.1%未満)、運動失調、幻覚(頻度不明)

グラセプター 承認時までの臨床試験及び市販後の調査1)

グラセプターの承認時までの臨床試験及び市販後の調査(再審査終了時、ただし腎移植は1年観察終了時)で認められた神経系障害に関連する副作用の発現頻度を以下に示した。

電子
添文
用語
発現症例数(%)
副作用等の種類
(MedDRA PT)
承認時までの
臨床試験
発現症例数(%)

市販後の調査 発現症例数(%)

腎移植

骨髄
移植

腎移植

肝移植

骨髄
移植

肺移植

膵移植

市販後
調査合計

 

しびれ
2(0.33)

感覚鈍麻

-

1(6.67)

1(0.28)

-

-

-

-

1(0.18)

めまい
1(0.16)

体位性めまい

1(2.86)

-

-

-

-

-

-

-

振戦
7(1.15)

振戦

-

2(13.33)

5 (1.41)

-

-

-

-

5 (0.89)

中枢神経系障害
2(0.33)

意識変容状態

-

-

-

1(0.71)

-

-

-

1(0.18)

構音障害

-

-

-

1(0.71)

-

-

-

1(0.18)

痙攣

-

-

-

1(0.71)

-

-

-

1(0.18)

頭痛
3(0.49)

頭痛

1(2.86)

-

1(0.28)

1(0.71)

-

-

-

2(0.36)

脳血管障害
2(0.33)

脳出血

-

-

-

2(1.42)

-

-

-

2(0.36)

味覚異常1(0.16)

味覚異常

-

-

-

1(0.71)

-

-

-

1(0.18)

MedDRA PT:ICH 国際医薬用語集 基本語(Ver.14.1)

<出典>

  1. グラセプターカプセル0.5mg,1mg,5mgインタビューフォーム

発現時期

プログラフ 承認時1)

参考にプログラフの国内腎移植第2相及び第3相試験における振戦発現例のタクロリムス血中トラフ濃度(発現までの平均)と発現時期の関係について以下に示した。

 

発現日

血中トラフ濃度

1週以内

2週以内

4週以内

8週以内

8週超

5ng/mL未満

-

-

-

-

-

-

10ng/mL未満

-

-

-

-

-

-

15ng/mL未満

-

-

1例

-

-

1例

20ng/mL未満

2例

1例

1例

2例

1例

7例

20ng/mL以上

2例

-

2例

2例

1例

7例

4例

1例

4例

4例

2例

15例

中枢神経症状の発現時期は遅いことがあるものの、移植領域の場合、移植後1カ月(特に1週間)以内の初期に発現することが多く、また移植後初期の1~2週間は予期せぬ血中濃度の上昇を招く危険性が高いことから、中枢毒性の発現を予防するためにはこの時期の血中濃度モニタリングは特に重要であると考えられる。2)

<出典>

  1. 河村章生 TDM研究 2003;20(3):233-240
  2. 首藤秀樹他 月刊薬事 2001;43(3):539-546

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