吉野先生 : まず「同性愛」です。1980年台までは疾病とされていましたが、1990年、WHOは国際疾病分類から同性愛を削除しました。
1995年には日本精神神経学会も、WHOのこの見解を尊重すると表明しました。これにより同性愛は日本でも、疾病ではなくなりました。
医療従事者が異性愛を当たり前と考えていると、患者さんのお付き合いしている人が異性であると決めつけた話し方をしてしまいます。
婦人科でも、性行為について問診が必要な時、異性間での性交のことだけを前提にして聞くと現状がわからなくなります。
まずは医療従事者自身の意識を変えないといけません。
ナレーター : 第1回でもご紹介したように、「同性愛」という言葉は「性的指向」を表します。それとは別に「性自認」もLGBTQに関係していました。
吉野先生 : ご指摘の通りです。典型的にはトランスジェンダーの人たちですね。
トランスジェンダーもかつては、「性同一性障害」に分類され、「障害」として認識されていました。
しかし2013年、「性的違和」すなわち違和感、不快感に分類が変わり、「障害」ではなくなりました。
さらに2018年には「性的不合」、つまり「不一致」、「不調和」に分類され、疾病の概念はなくなったわけです。
ナレーター : 現在では、同性愛、トランスジェンダーとも疾病扱いされていない、つまり異常な状態ではないというのが、医学的コンセンサスなのですね。
吉野先生 : その通りです。医療従事者もまず、それを認識しなくてはなりません。
ナレーター : 医療従事者には、LGBTQの方々に対する、偏見や差別意識はないのでしょうか?
吉野先生 : 医療従事者は、患者さんを分け隔てなく診療していただいていると信じています。
でも、どうしても違和感を抱いてしまう先生がいらっしゃるなら、それは悲しいことですね。
「クリニカル・バイアス」、つまり、患者が属するある特定の集団に対し、医師が偏見を持つがゆえに生ずる臨床的判断や態度のゆがみ*7がもしあるようなら、
そういう医師はご自身で診療するのではなく、信頼できる医師に責任をもって紹介することを検討すべきです。