インフルエンザQ&A

Q:今シーズンのインフルエンザワクチンとワクチンの有効性について教えてください。インフルエンザの予防には、ワクチン接種を毎年継続したほうがよいですか?

A

わが国の季節性インフルエンザワクチンは、A型2種類およびB型2種類のウイルス株を含む、不活化4価HAワクチンが使用されています。インフルエンザワクチンの有効性は、被接種者の年齢や免疫応答・流行株とワクチン株との抗原性の一致度など種々の条件により異なりますが、インフルエンザの発症・重症化・死亡の予防に一定の効果があるとされています1)。ワクチン効果の持続期間は約5カ月であること、ワクチン株はインフルエンザウイルスの流行状況から毎年のように変更が行われることから、毎年接種することが必要になります2)

解説

1.インフルエンザワクチン株の選定プロセスと今シーズンのワクチン株

近年、季節性インフルエンザの流行はA型とB型ウイルスの混合流行の傾向が多く、WHOはA型2種類とB型2種類のウイルス株を含む4価インフルエンザワクチンを推奨しています3)。米国では2013/2014シーズンから4)、わが国でも2015/2016シーズンから4価ワクチンが使用されており、世界的に3価から4価ワクチンに移行する流れとなっています。

季節性インフルエンザワクチンに使用されるウイルス株は、毎年選定が行われています。WHOは、世界におけるワクチン推奨株を毎年2回(南半球のシーズン前に1回、次いで北半球のシーズン前に1回)選定して発表します。わが国では、2018/2019シーズンから下記のプロセスで、季節性インフルエンザワクチンの国内製造株が選定されています。

まず、国立感染症研究所で(外部専門家を交えて)、WHOの推奨株を参考にしながら、国内での流行状況・流行株の解析情報・国民の血清抗体保有状況などから、次シーズンに流行の主流となりそうなウイルス株の候補を挙げます。次に、ワクチンメーカーにより候補株の収率などの生産性に関する評価が行われ、供給本数が予想されます。これらの情報をもとにして、次に、厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会の下に設置された「季節性インフルエンザワクチンの製造株について検討する小委員会(部会長:坂元 昇 川崎市健康福祉局医務監)」において議論が行われます。小委員会では、各候補株を有効性および生産可能性の観点から検討します。ここで集約された意見を踏まえて、厚生労働省が最終決定し通知が発出され5)、これに基づいてワクチンメーカーは製造を行います。このように、ワクチン株の有効性のみならず安定供給面も含めて、総合的に勘案して最適と判断された株が選定されています。

今シーズンの製造株は、次の通りです。2020/2021シーズンと比較すると、A型のA(H1N1)とA(H3N2)の2株とも変更され、B型の山形系統・ビクトリア系統の2株はともに変更ありません(図16)。ワクチン株の選定理由の詳細は、例年、「病原微生物検出情報(IASR)」に掲載されます。国立感染症研究所のホームページ7)で閲覧できますので、参照してください。

図1. 2021/2022シーズンのインフルエンザワクチン製造株

文献6)より作図

2.インフルエンザワクチンの有効性

インフルエンザに罹患すると、特に高齢者や、年齢を問わず呼吸器、循環器、腎臓に慢性疾患をもつ患者さん、糖尿病などの代謝疾患、免疫機能が低下している患者さんでは、原疾患の増悪とともに、呼吸器に二次的な細菌感染症を起こしやすくなり、入院や死亡の危険が増加します。小児では中耳炎の合併、熱性けいれんや気管支喘息の誘発、まれではありますが急性脳症などの重症合併症があらわれることもあります2)。インフルエンザワクチンは接種すればインフルエンザに絶対に罹患しないというものではありませんが、ある程度の発病を阻止する効果があり、前述のような重症化を阻止する効果があります1)

インフルエンザワクチンの有効性に関して多くの調査研究が行われていますが、調査する対象(年齢や免疫応答など)・調査地域・調査時期、また、流行株とワクチン株の抗原性の一致度など種々の条件により異なります。まず、年齢に関して、厚生労働省の「インフルエンザQ&A」1)では、「65歳以上の高齢者福祉施設に入所している高齢者については34~55%の発病を阻止し、82%の死亡を阻止する効果があったとされています」8)。「乳幼児のインフルエンザワクチンの有効性に関しては、報告によって多少幅がありますが、概ね20~60%の発病防止効果があったと報告されています9, 10)。また、乳幼児の重症化予防に関する有効性を示唆する報告も散見されます」11)と記載されています。

また、基礎疾患をもつ方や治療薬を投与中の方など、被接種者の免疫応答によっても有効性は異なります。

さらに、インフルエンザワクチンの有効性は、流行株とワクチン株の抗原性の一致度によっても異なります。流行株とワクチン株の抗原性が一致すれば効果は高くなりますが、抗原性の一致度が低いと効果は低下します。インフルエンザウイルスの流行株は毎年のように少しずつ変異します。ワクチン株もそれに合わせるように毎年変更されますが、ワクチン製造過程における抗原変異(卵馴化:図2)の課題もあります。

まとめとして、インフルエンザワクチンの有効性は種々の条件により差があり、また限界もあります。しかし、接種により完全な予防は難しくとも一定の重症化や死亡の予防効果はあること、鑑別診断が困難な他の呼吸器疾患、たとえば新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行時に、インフルエンザ感染のリスクを下げておく、また、接種可能な方が接種を受けることにより、接種の効果が比較的低いとされる乳幼児や医学的理由で接種できない方などを間接的に守る効果もあるので、接種することのメリットは大きいと思われます。

図2. 卵馴化による抗原性変化が生じる可能性
(前シーズンの流行株分離から今シーズンのワクチン株製造まで)

著者作図

3.毎年、ワクチン接種が勧められる理由

前述のように、季節性インフルエンザワクチンは、流行予測などからそのシーズンに適したウイルス株が毎年選定され製造されますので、前シーズンのワクチンでは対応できないことがほとんどです。たとえ有効期限が切れていなくても、前シーズンのワクチンは使用しないほうが賢明です。また、わが国で使用されているインフルエンザワクチンは不活化ワクチンであり生ワクチンに比べて効果の持続期間は短く、有効性が持続する期間は約5カ月とされています。したがって、個人差はありますが、前シーズンに接種していても抗体価は減衰している可能性が高く、毎年接種することが勧められます2)

なお、昨シーズンはインフルエンザの流行は世界的にも低調でしたが、同じ状況が今シーズンにもみられるとは限りませんので、感染症の予防の観点からは、今シーズンも毎シーズンと同様にインフルエンザワクチンの接種をお勧めします。

(岡部 信彦)

文献

1)厚生労働省: インフルエンザQ&A. http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/qa.html (アクセス2021年4月14日現在)

2)予防接種ガイドライン等検討委員会: インフルエンザ・肺炎球菌感染症(B類疾病)予防接種ガイドライン2020年度版. 公益財団法人予防接種 リサーチセンター. 2020.

3)WHO: Recommended composition of influenza virus vaccines for use in the 2021-2022 northern hemisphere influenza season. https://www.who.int/influenza/vaccines/virus/recommendations/2021-22_north/en/(アクセス2021年4月14日現在)

4)CDC: MMWR. Recomm Rep. 62(RR-07): 1-43, 2013.

5)第1回厚生科学審議会 予防接種・ワクチン分科会 研究開発及び生産・流通部会 季節性インフルエンザワクチンの製造株について検討する小委員会. 資料2-3. 2018年4月11日. http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000203186.pdf (アクセス2021年4月14日現在)

6)厚生労働省: 健発0423第2号.2021年4月23日.

7)国立感染症研究所ホームページ: https://www.niid.go.jp/niid/ja/(アクセス2021年4月14日現在)

8)平成11年度 厚生労働科学研究費補助金 新興・再興感染症研究事業「インフルエンザワクチンの効果に関する研究. 主任研究者: 神谷 齊(国立療養所 三重病院)」.

9)平成14年度 厚生科学研究費補助金 新興・再興感染症研究事業「乳幼児に対するインフルエンザワクチンの効果に関する研究. 研究代表者: 神谷 齊 (国立病院機構三重病院)・加地正郎(久留米大学)」.

10)平成28年度 厚生労働行政推進調査事業費補助金 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業「ワクチンの有効性・安全性評価とVPD (vaccine preventable diseases)対策への適用に関する分析疫学研究. 研究代表者: 廣田良夫(保健医療経営大学)」.

11)Katayose M, et al.: Vaccine. 29(9): 1844-1849, 2011.

12)国立感染症研究所ほか: IASR. Vol. 35 p.269-271: 2014年11月号.


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