インフルエンザQ&A

Q:卵アレルギー、気管支喘息などアレルギーをもつ方における、接種上の留意点について教えてください。

A

インフルエンザワクチン中の鶏卵成分は、きわめて微量です。そのため、卵アレルギーや気管支喘息などのアレルギーをもっていても、多くの場合、インフルエンザワクチンは安全に接種できています。本稿では、アレルギーを有する方へのインフルエンザワクチン接種に関し、米国および国内の対応をまとめました。

解説

1.米国ACIPの勧告

米国の予防接種諮問委員会(ACIP: the Advisory Committee on Immunization Practices)は、「インフルエンザワクチンによるインフルエンザの予防と対策の勧告」を毎年発表しています。2021/2022シーズンの勧告では、卵アレルギー患者の項で改訂が行われ、また、「インフルエンザワクチン接種でアレルギー反応の既往がある者」の項が新設されました。下記にご紹介します。

■卵アレルギーの既往がある者

米国で入手可能なインフルエンザワクチンの大部分(RIV4およびccIIV4を除く)は、孵化鶏卵で培養したウイルスを用いて製造され、微量の卵たん白(オボアルブミン)が含まれる可能性がある。卵アレルギーの既往がある者へ、ACIPは次のように勧告する(表1)。

1. 卵を摂取した後に、蕁麻疹のみが出現したことがある者
米国で承認・推奨されているすべてのインフルエンザワクチン(例:すべての不活化ワクチン、RIV4、またはLAIV4**)から、年齢や健康状況を考慮して最適なワクチンを選択し、接種する。

2. 卵に関連した症状で蕁麻疹のほかに、血管浮腫・腫脹・呼吸困難・意識もうろう・繰り返す嘔吐などがみられたり、エピネフリン投与などの救急処置を必要としたことがある者
1と同様に、米国で承認・推奨されているすべてのインフルエンザワクチン(例:すべての不活化ワクチン、RIV4、またはLAIV4)から、年齢と健康状況を考慮して最適なワクチンを選択し、接種する。ただし、ccIIV4、またはRIV4以外のワクチンを使用する場合は、医療施設で重度アレルギー症状を診断・治療できる医師などの監督のもと、接種を行う。

ワクチン接種を行うすべての医療従事者は、救急時の対応を熟知しておくべきである。卵アレルギー患者に特別に推奨する接種後の観察時間はないが、どのワクチンを使用した場合でも、患者を(座位または仰臥位で)接種後15分間、観察することを推奨する(もしも転倒した場合の受傷リスクを減らすために)。

RIV4(Recombinant Influenza Vaccine, quadrivalent): 遺伝子組み換え技術を用いて製造される卵たん白を含まない4価インフルエンザワクチン。米国で18歳以上に適応。日本では未承認。
ccIIV4(cell culture-based Inactivated Influenza Vaccine, quadrivalent): 細胞培養不活化4価インフルエンザワクチン。米国で2歳以上に適応。日本では未承認。
**LAIV4(Live Attenuated Influenza Vaccine, quadrivalent): 弱毒生4価インフルエンザワクチン。経鼻型のワクチンで、米国では2~49歳に適応。日本では未承認。

表1. 卵アレルギーを有する者へのインフルエンザワクチン接種―米国ACIP勧告
2021/2022インフルエンザシーズン

Prevention and control of seasonal influenza with vaccines: Recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices ー United States, 2021-22 influenza season. MMWR Recomm Rep. 70(5): 1-28, 2021.より作表(著者一部改変・訳)

■インフルエンザワクチン接種でアレルギー反応の既往 がある者(新設)

すべてのワクチンと同様に、インフルエンザワクチンにはアレルギー反応やアナフィラキシー反応を起こす可能性のある成分が含まれている。大部分のインフルエンザワクチンの添付文書では、ワクチンのあらゆる成分、あるいは過去のインフルエンザワクチン接種で重度のアレルギー反応(アナフィラキシーなど)の既往がある者を接種不適当者に挙げている。ccIIV4およびRIV4では、あらゆるワクチン成分で重度のアレルギー反応の既往がある者を接種不適当者としている。他のインフルエンザワクチンでアレルギー反応の既往がある者を接種不適当者と明記した表示はない。しかしながら、重度のアレルギー反応は、まれではあるが、インフルエンザワクチンの接種後、既往がない者やアレルギーはないとされている者にも起こりうる。ワクチンの成分は添付文書で確認できるが、特別なアレルギー検査をしなければ原因成分を特定することは困難である。RIV接種後の重度のアレルギー反応症例がVAERS(ワクチン有害事象報告システム)に報告されており、その一部は、卵やインフルエンザワクチンでアレルギー反応の既往がある者で、アレルギーの兆候を増悪させる傾向が示されている。まれではあるが、こうした重度のアレルギー反応は起こりうるので、ACIPは、過去のインフルエンザワクチン接種で重度アレルギー反応の既往のある者へ、次のように勧告する(表2)。

・鶏卵培養4価不活化インフルエンザワクチン(IIV4)およびLAIV4
あらゆるインフルエンザワクチン(鶏卵培養IIV※1、ccIIV※2、RIV※3, LAIV※4[いずれも何価でも])の接種で重度アレルギー反応(アナフィラキシーなど)の既往がある者は、接種不適当者である。ワクチンのあらゆる成分で重度アレルギー反応の既往がある者も、接種不適当者である。

・ccIIV4
鶏卵培養IIV、RIV, LAIV(いずれも何価でも)の接種で重度アレルギー反応(アナフィラキシーなど)の既往がある者は、接種要注意者である。このような者へのccIIV4の接種は、医療施設で重度アレルギー症状を診断・治療できる医師などの監督のもとで行う。予防接種実施者は、ワクチン成分がアレルギー反応の原因になるか、アレルギー専門医に照会することを検討する。
ccIIV(何価でも)の接種、またはccIIV4のワクチン成分で重度アレルギー反応(アナフィラキシーなど)の既往がある者は、接種不適当者である。

・RIV4
鶏卵培養IIV、ccIIV, LAIV(いずれも何価でも)の接種で重度アレルギー反応(アナフィラキシーなど)の既往がある者は、接種要注意者である。このような者へのRIV4の接種は、医療施設で重度アレルギー症状を診断・治療できる医師などの監督のもとで行う。予防接種実施者は、ワクチン成分がアレルギー反応の原因になるか、アレルギー専門医に照会することを検討する。
RIV(何価でも)の接種、またはRIV4のワクチン成分で重度アレルギー反応(アナフィラキシーなど)の既往がある者は、接種不適当者である1)

※1 IIV: 不活化インフルエンザワクチン、※2 ccIIV: 細胞培養不活化インフルエンザワクチン、※3 RIV: リコンビナントインフルエンザワクチン、※4 LAIV: 弱毒生インフルエンザワクチン

表2. インフルエンザワクチン接種で重度アレルギー反応の既往がある者における接種不適当者および 接種要注意者―米国ACIP勧告 2021/2022インフルエンザシーズン

文献1)より

2.国内のガイドライン
1)予防接種ガイドライン

2021年度版の「予防接種ガイドライン」2)には、接種液の成分に対してアレルギーを呈するおそれのある者に対する対応を日本小児アレルギー学会の見解(令和2年12月に修正。修正部分は太字)として掲載しています。以下に抜粋して引用します。「接種液の成分によってアナフィラキシーを呈したことが明らかにある者は接種不適当者である。気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、じんましん、アレルギー体質などだけでは、接種不適当者にはならないが、気管支喘息がコントロール不良である場合はリスクが高くなり、喘息も含めて、これらの疾患がコントロール不良である場合はワクチン副反応との鑑別が困難になる。したがって、接種前に良好なコントロールを得ることが重要である。

ワクチンによる副反応歴、ワクチンに含まれている成分に対するアレルギー歴とこの成分と交差反応する物質に対するアレルギー歴を問診することによって接種要注意者かどうか判定する。

接種液成分でアレルギーと関連した報告があるのは、ワクチン主成分、安定剤のゼラチン、防腐剤のチメロサール及び培養成分である培養液、鶏卵成分、抗菌薬である。

同じ種類のワクチンでもメーカーによって成分量やその比率が異なるため、ワクチン添付文書でその内容を確認することが望まれる。

要注意者は健康状態や体質を勘案し、診察及び接種適否の判断を慎重に行い、ワクチンの必要性、副反応、有用性について十分な説明を行い、同意を確実に得た上で、注意して接種する。過敏症状を起こし得るので、接種後約30分の院内観察や緊急時薬の準備など、発症時に速やかに対応できる体制を整えておくことが推奨される。

ワクチン接種による即時型アレルギー症状誘発を予知する確実な手段はない。保護者や接種医が強い不安を抱く場合には、要注意者への対応に準じ、慎重な観察と緊急時の体制を整える。接種の可否判定に困る際は、専門施設へ紹介する。

(ア)鶏卵由来成分
卵成分が関連するワクチンはインフルエンザ及び黄熱である。
国内の現行インフルエンザワクチンは、有精卵(孵化鶏卵)から作られ、卵白アルブミンの混入が懸念されていたが、その量は数ng/mLと極めて微量でWHO基準よりはるかに少ない。
添付文書には、本剤の成分又は鶏卵、鶏肉、その他鶏由来のものに対して、アレルギーを呈するおそれのある者は接種要注意者、本剤の成分によってアナフィラキシーを呈したことが明らかな者は接種不適当者と記載されている。しかしながら、接種後の鶏卵アレルギーによる重篤な副反応の報告はなく、鶏卵アレルギー患者であっても接種可能である3)。インフルエンザワクチン接種後のアナフィラキシーは鶏卵由来のタンパクではなく、インフルエンザHA抗原によるものであることが報告されている4)
いずれのワクチンでも
接種可否の判断が困難な症例は専門施設へ紹介する。

(イ)乳由来成分
予防接種中の牛乳アレルギー成分としては麻しん・風しん混合ワクチンなどに安定剤として含まれる乳糖がある。皮下注射であり接種量も少ないことから牛乳アレルギー患者であっても接種可能である。

(ウ)その他の成分
黄熱と狂犬病の予防接種には現在でも安定剤としてゼラチンが添加されている。
抗菌薬としては、一部のワクチンにエリスロマイシンやカナマイシンが添加されている。接種にあたっては、接種しようとするワクチンの添付文書を確認する。

これまで、定期接種として接種されてきた、BCG、DPTIPV四種混合ワクチン、日本脳炎ワクチン、Hibワクチン、小児用肺炎球菌ワクチン、水痘ワクチンなどは、アレルギー疾患児に特有の副反応は認められていない。ヒトパピローマウイルスに対するワクチンが我が国でも導入されたが、アレルギー疾患児への接種については現時点で格別の留意点はない」。

2)喘息予防・管理ガイドライン

日本アレルギー学会監修の「喘息予防・管理ガイドライン 2018」5)では、次のように記載されています。

「喘息などの慢性呼吸器疾患患者は呼吸器感染症で基礎疾患が増悪し、時に重症化する。呼吸器感染症には、ワクチンで予防できる疾患(VPD)も含まれ、必要なワクチン接種により当該感染症を予防することは、基礎疾患の増悪や合併症予防に有用と考えられる。喘息患者へのワクチン接種時の注意事項として、ステロイド薬治療を受けている患者が挙げられる。ステロイド薬治療を受けていても、次の事項に該当する場合は、生ウイルスワクチン接種が禁忌となるほどの免疫抑制状態にはならない6)
①治療期間が14日以内である。
②低~中等量のステロイド薬全身投与(プレドニゾン注)換算で20mg未満)である。
③短期作用性薬剤では2週間以上の長期隔日投与である。
④漸減療法中の生理的用量による補充療法である。
⑤局所投与(塗布・点眼)、吸入、関節内など。
一方、14日以上のプレドニゾン注)換算2mg/kg/日または20mg/日以上の場合は、終了後1か月間は生ワクチン接種を延期すべきとなっている6)」。

注)プレドニゾンは、日本では未承認。

次に、インフルエンザワクチンの安全性の項を抜粋し引用します。

「喘息の重症度、インフルエンザ罹患率、ワクチンの有効性と安全性など多くの要因を考慮して接種の可否を判断する必要がある。米国では、喘息患者はインフルエンザ罹患による重症の合併症を来す可能性が高いハイリスク群とされ、毎年接種を受けるべきとされている7)。国内の予防接種後の副反応疑い(有害事象)報告は、医薬品との因果関係が不明なものを含め、製造販売業者または医療機関等から報告されたものであり、個別に医薬品との関連性を評価したものではない。インフルエンザワクチン接種後の副反応疑い報告数(平成28年10月1日から平成29年4月30日報告分まで)は製造販売業者から77例(死亡4例)、医療機関から243例(うち重篤86例、死亡 6例)報告されている。アナフィラキシーの可能性のある症例は、2016~2017シーズンは19例(うち重篤16例)で、ブライトン分類で専門委員評価を加えたレベル3以上は 8例(0.15/100万接種)であった。ロット間に差は認められなかった。8例のうち基礎疾患なしが5例、食物アレルギー 1例、薬物過敏症・関節リウマチ1例、喘息1例であった注)。国内では卵加工食品などを食べている喘息患者での接種後のアナフィラキシーなどの重篤な有害事象の報告はきわめて稀で安全に接種できているため、卵アレルギーがあっても多くはかかりつけ医で接種できると考えられるが、本人や保護者の心配が強い場合はアレルギー専門医などの相談も考慮する」。

(岡田 賢司)

注)最新の副反応疑い報告数は、Q4をご参照ください。

文献

1)CDC: MMWR Recomm Rep. 70(5): 1-28, 2021. https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/70/rr/pdfs/rr7005a1-H.pdf(アクセス2021年9月8日現在)

2)予防接種ガイドライン等検討委員会: 予防接種ガイドライン2021年度版. 公益財団法人予防接種リサーチセンター. 2021.

3)Greenhawt M, et al.: Ann Allergy Asthma Immunol. 120(1): 49-52, 2018.

4)Nagao M, et al.: J Allergy Clin Immunol. 137(3): 861-867, 2016.

5)「喘息予防・管理ガイドライン2018」作成委員: 喘息予防・管理ガイドライン2018. 一般社団法人日本アレルギー学会 喘息ガイドライン専門部会 監修. 協和企画. 2018.

6)CDC: MMWR Recomm Rep. 60(RR-2): 1-60, 2011.

7)CDC: MMWR Recomm Rep. 59(RR-8): 1-62, 2010.

8)厚生労働省: 重篤副作用疾患別対応マニュアル アナフィラキシー. 2008年3月(2019年9月改定). https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1h01_r01.pdf(アクセス2021年4月19日現在)


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