メディカルアフェアーズ情報
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基礎疾患を有する方は、インフルエンザに罹患した場合に重症化しやすいので、接種不適当者でなければ、インフルエンザHAワクチン接種が勧められます。ただし、基礎疾患を有する方は、電子化された添付文書*の接種要注意者に該当することがあります。また、健康人よりもワクチン効果が低いことが多く、基礎疾患自体による症状や、併用する治療薬の影響とワクチンの副反応との鑑別に苦慮する例があることにも注意が必要です。
厚生労働省は、心臓、腎臓もしくは呼吸器などの機能に障害がある方は、インフルエンザに罹患すると重症化しやすいことから、インフルエンザHAワクチン接種による便益が大きいとしています1)。米国疾病対策センター(CDC)も、慢性呼吸器疾患(喘息を含む)、心血管疾患(高血圧を除く)、腎疾患、肝疾患、神経疾患、血液疾患、代謝疾患(糖尿病を含む)ならびに免疫抑制状態(薬物によるものやHIV感染を含む)の患者さんには、優先的にインフルエンザワクチンを接種すべきであるとしています2)。これらの基礎疾患を有する患者さんへのインフルエンザHAワクチン接種について、具体的な注意点を述べます。接種にあたっては、インフルエンザHAワクチンの電子化された添付文書*をご確認ください。
厚生労働省によると、インフルエンザHAワクチンの副反応疑い報告で、2024年10月1日から2024年12月31日の間に、推定接種可能人数(回分)およそ4,779万人のなかで、基礎疾患に呼吸器疾患があり、同ワクチン接種後に重篤な呼吸器系の副反応疑いが生じた例は、2例(アナフィラキシー反応)でした。このうち、報告医評価によるワクチン接種との因果関係が「関連あり」とされたのは1例でした(医療機関からの報告)3)。このデータから、喘息やCOPDの患者さんにもインフルエンザHAワクチンは使用できるといえます。ただし、インフルエンザHAワクチンの電子化された添付文書*には、喘息発作の誘発や、間質性肺炎の発症に注意を促す記述がありますので、接種後の観察は必要です。なお、喘息の治療に使用される内服ステロイドは、高用量であっても5日程度の短期間であれば、ワクチン効果に影響を及ぼさないとされています4)。
*インフルエンザHAワクチンの電子化された添付文書の記載事項(抜粋)
9. 特定の背景を有する者に関する注意
9.1 接種要注意者(接種の判断を行うに際し、注意を要する者)
被接種者が次のいずれかに該当すると認められる場合は、健康状態及び体質を勘案し、診察及び接種適否の判断を慎重に行い、予防接種の必要性、副反応、有用性について十分な説明を行い、同意を確実に得た上で、注意して接種すること。
9.1.1 心臓血管系疾患、腎臓疾患、肝臓疾患、血液疾患、発育障害等の基礎疾患を有する者[9.2、9.3参照]
9.1.3 過去にけいれんの既往のある者
9.1.4 過去に免疫不全の診断がなされている者及び近親者に先天性免疫不全症の者がいる者
9.1.5 間質性肺炎、気管支喘息等の呼吸器系疾患を有する者
9.2 腎機能障害を有する者
接種要注意者である。[9.1.1参照]
9.3 肝機能障害を有する者
接種要注意者である。[9.1.1参照]
11. 副反応
次の副反応があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には適切な処置を行うこと。
11.1 重大な副反応
11.1.1 ショック、アナフィラキシー(いずれも頻度不明)
蕁麻疹、呼吸困難、血管性浮腫等があらわれることがある。
11.1.2 急性散在性脳脊髄炎(ADEM)(頻度不明)
通常、接種後数日から2週間以内に発熱、頭痛、けいれん、運動障害、意識障害等があらわれる。本症が疑われる場合には、MRI等で診断し、適切な処置を行うこと。
11.1.3 脳炎・脳症、脊髄炎、視神経炎(いずれも頻度不明)
異常が認められた場合には、MRI等で診断し、適切な処置を行うこと。
11.1.4 ギラン・バレー症候群(頻度不明)
四肢遠位から始まる弛緩性麻痺、腱反射の減弱ないし消失等の症状があらわれることがある。
11.1.5 けいれん(熱性けいれんを含む)(頻度不明)
11.1.6 肝機能障害、黄疸(いずれも頻度不明)
AST、ALT、γ-GTP、Al-Pの上昇等を伴う肝機能障害、黄疸があらわれることがある。
11.1.7 喘息発作(頻度不明)
11.1.8 血小板減少性紫斑病、血小板減少(いずれも頻度不明)
紫斑、鼻出血、口腔粘膜出血等が認められた場合には、血液検査等を実施すること。
11.1.9 血管炎(IgA血管炎、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、白血球破砕性血管炎等)(頻度不明)
11.1.10 間質性肺炎(頻度不明)
発熱、咳嗽、呼吸困難等の臨床症状に注意し、異常が認められた場合には、胸部X線等の検査を実施すること。
11.1.11 皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、急性汎発性発疹性膿疱症(いずれも頻度不明)
11.1.12 ネフローゼ症候群(頻度不明)
ワクチン接種局所の疼痛に関連した血圧の変動、血管迷走神経反射などに注意します。また、抗凝固薬・抗血小板薬服用中の患者さんではワクチン接種部位の血腫に注意します。
心血管リスクのある患者さんでは、インフルエンザに続発する心血管イベント(急性冠状動脈症候群)が問題となりますが、あるメタアナリシスでは、心血管疾患患者のうち、インフルエンザワクチンを接種した群では、非接種群に比べて1年以内の主要な心血管イベントのリスクが低いことが示されています5)。
慢性腎臓病(保存期CKD)の患者さんにおいては、インフルエンザワクチン接種後の抗体獲得率はインフルエンザウイルスのサブタイプにより差があることや、健康人と比べて有意な抗体価上昇は低い傾向がありますが、インフルエンザワクチン接種が強く推奨されています6)。
透析患者さんにおいては、免疫能が低下しているとインフルエンザに細菌感染が合併しやすく予後不良となることや、末期腎不全患者がインフルエンザに罹患すると死亡率が有意に高値となること、インフルエンザ罹患は透析施設で患者間の伝播の場となりやすいことなどから、すべての透析患者さんにインフルエンザワクチン接種が推奨されています7)。
十分なデータがありませんが、肝硬変の患者さんにおいても不活化インフルエンザワクチンの有用性を示す報告があります8)。血小板が減少している場合は接種部位の皮下出血に注意します。
リウマチの患者さんで、免疫抑制療法、TNF阻害薬、およびその他の生物学的製剤などを使用している場合、健康人と比較してインフルエンザワクチンに対する免疫応答が低下していることが報告されています9)。
全身性エリテマトーデス(SLE)患者さんでも、健康人に比べてややワクチンに対する免疫応答が減少しますが、特にアザチオプリン、ステロイド薬、ヒドロキシクロロキンを使用中の場合は低下します10)。ワクチン抗原による負荷が自己免疫疾患の病態に影響を与える可能性については、SLEにおいて、A/H1N1単価の不活化インフルエンザワクチン接種の前後で自己抗体のレベルに差がなかったとする報告があります11)。
HIV感染者におけるインフルエンザワクチン接種後の抗体価上昇は、CD4数に大きく依存すると考えられており、CD4低値症例やAIDS発症者では、抗体反応の低下が顕著にみられますが、すべての成人HIV感染者にインフルエンザHAワクチンの接種が推奨されています。また、60歳以上65歳未満で、HIVにより免疫の機能に重度の障害を有する方(身体障害者手帳1級程度)は、インフルエンザHAワクチンの定期接種対象者です12)。
免疫抑制剤の影響については、Q9を参照してください。
免疫不全をきたす各種疾患患者への予防接種に関しては、「免疫不全状態にある患者に対する予防接種ガイドライン2024」13)が参考になります。
インフルエンザHAワクチンの有害事象としてごくまれにギラン・バレー症候群や急性散在性脳脊髄炎などが報告されますが、もともと神経学的所見がある場合、これらの疾患が検出しにくくなる可能性があるので注意が必要です。脱力やけいれんなどもワクチンの副反応との鑑別が必要となります。
てんかんの既往のある方については、日本小児神経学会によると、予防接種実施の基準は以下の通りです。
「(1)コントロールが良好なてんかんをもつ小児では、体調が安定して主治医(接種医)が適切と判断した時期に現行のすべてのワクチンを接種して差し支えない。また乳幼児期の無熱性けいれんでも、自然終息性乳児てんかん(良性乳児けいれん)や軽症胃腸炎関連けいれんに属すものは上記に準じた基準で接種してよい。
(2)(1)以外のてんかんをもつ小児でもその発作状況がよく確認されており、病状と体調が安定していれば主治医(接種医)が適切と判断した時期にすべての予防接種をして差し支えない」14)。
発熱によってけいれん発作が誘発されやすいてんかん患児では、発熱が生じた場合の発作予防策と万一発作時の対策を個別に設定・指導しておく14)必要があります。その他の注意事項など詳細は、「予防接種ガイドライン」14)を参照してください。
造血器腫瘍の患者さんにおける有効性については、報告により大きな差があります。化学療法を行っている患者さんは一定期間、接種を延期する必要がありますが、そのような状況でない場合は、接種が推奨されます15)。免疫能の低下、他の薬物との相互作用、易出血性など、種々の要因が関わるため、個々のケースでの判断が必要となります。
糖尿病患者さんでは、インフルエンザワクチンの効果はやや落ちるものの有効とされています16)。2型糖尿病でインフルエンザワクチンを接種した者において、脳卒中・心不全・肺炎・インフルエンザによる入院率や全死亡率が減少したという報告があります17)。
手術がインフルエンザHAワクチンの効果に及ぼす影響については十分なデータがないと思われますが、術後には発熱等がみられたり、複数の薬剤が使用されたりするので、何らかの症状が出た場合、ワクチンの副反応かどうかわかりにくくなります。したがって、あえて周術期にワクチン接種を行うことは望ましくありません。
臓器移植(造血幹細胞移植および実質臓器移植)においては、合併症対策・感染症対策は非常に重要で、その中でのワクチン接種には大きな意義があります。ただし、個々の患者の状態を考慮し、接種する時期や免疫能の評価について注意する必要があります18)。造血細胞移植患者へのインフルエンザHAワクチン接種については、「造血細胞移植ガイドライン 予防接種(第4版)」19)が参考になります。
一般外科、整形外科、産婦人科などの手術を受けた患者さんにおいては、周術期にインフルエンザワクチンを接種しても退院後の救急受診、入院、発熱などの増加は認められなかったという報告もあります20)。
手術の内容や侵襲の程度、患者さんの免疫能など身体の状態によって接種に適した時期は異なります。また、周辺地域のインフルエンザの流行状況も考慮し、個々のケースで検討します。
COVID-19に罹患した後のインフルエンザHAワクチン接種については、定まった見解はないようですが、おおむね症状が軽快し、感染性がなくなれば接種は問題ないと思われます21)。日本小児科学会・日本小児感染症学会・日本外来小児科学会の小児COVID-19合同学会ワーキンググループ22)は「症状消失後2〜4週間程度(無症候性では診断後2週間程度)の延期が目安となる」としています。なお、新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンとの同時接種は可能です23)。
医療機関でインフルエンザワクチンを接種できない方の接種については、定期接種実施要領によると「定期接種の対象者が寝たきり等の理由から、当該医療機関において接種を受けることが困難な場合においては、予防接種を実施する際の事故防止対策、副反応対策等の十分な準備がなされた場合に限り、当該対象者が生活の根拠を有する自宅や入院施設等において実施しても差し支えない」とされています24)。また、任意接種の場合も、医療機関外で任意の予防接種を行う場合の注意事項として「定期接種実施要領による実施場所、注意事項その他の取扱いに準じて実施するよう努めること」とされています25)。
免疫能の低下した患者さんについては十分な問診と観察を行います26)。
(川名 明彦)
文献
1)厚生労働省: インフルエンザワクチン(季節性).
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/yobou-sesshu/vaccine/influenza/index.html(アクセス2025年4月7日現在)
2)CDC: Who Needs a Flu Vaccine.
https://www.cdc.gov/flu/vaccines/vaccinations.html(アクセス2025年4月7日日現在)
3)第106回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、令和7年度第1回薬事審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会(合同開催). 資料2-30. 2025年4月14日.
https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001475809.pdf(アクセス2025年4月15日現在)
4)Pesek R, et al.: Allergy. 66(1): 25-31, 2011.
5)Udell JA, et al.: JAMA. 310(16): 1711-1720, 2013.
6)日本腎臓学会: エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン 2023. 2023年6月.
7)日本透析医会: 透析施設における標準的な透析操作と感染予防に関するガイドライン(六訂版). 2023年12月.
8)Song JY, et al.: J Clin Virol. 39(3): 159-163, 2007.
9)Huang Y, et al.: Curr Med Res Opin. 33(10): 1901-1908, 2017.
10)Westra J, et al.: Nat Rev Rheumatol. 11(3): 135-145, 2015.
11)Lu CC, et al.: Vaccine. 29(3): 444-450, 2011.
12)日本エイズ学会: HIV感染者のためのワクチンガイドライン. 2023年7月.
13)日本小児感染症学会 監修: 免疫不全状態にある患者に対する予防接種ガイドライン2024. 2024年.
14)予防接種ガイドライン等検討委員会: 予防接種ガイドライン2025年度版. 公益財団法人予防接種リサーチセンター. 2025.
15)Casper C, et al.: Blood. 115(7): 1331-1342, 2010.
16)Lau D, et al.: Thorax. 68(7): 658-663, 2013.
17)Vamos EP, et al.: CMAJ. 188(14): E342-E351, 2016.
18)岡部信彦、多屋馨子:予防接種に関するQ&A集2024. p.26-27, 一般社団法人日本ワクチン産業協会. 2024.
19)日本造血・免疫細胞療法学会: 造血細胞移植ガイドライン 予防接種(第4版). 2023年12月.
20)Tartof SY, et al.: Ann Intern Med. 164(9): 593-599, 2016.
21)一般社団法人日本呼吸器学会 COVID-19 FAQ広場.
https://www.jrs.or.jp/covid19/faq/(アクセス2025年4月7日現在)
22)日本小児科学会・日本小児感染症学会・日本外来小児科学会 小児COVID-19合同学会ワーキンググループ: 小児の外来診療におけるコロナウイルス感染症2019(COVID-19)診療指針 第2版. 2021年9月29日.
23)厚生労働省: 新型コロナワクチンQ&A.
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_qa.html(アクセス2025年4月7日現在)
24)厚生労働省: 定期接種実施要領.
https://www.mhlw.go.jp/content/001092480.pdf(アクセス2025年4月7日現在)
25)厚生労働省通知: 医政発0331第68号, 健発0331第28号. 2015年3月31日.
26)Caldera F, et al.: Vaccine. 39: A15-A23, 2021.
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