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VIVA! ORTHO

Meet the Expert 座談会 -ポストコロナ時代を踏まえて、整形外科医療の在り方を考える-

COVID-19パンデミックで整形外科はどのような影響を受けたか

田中 2015年の創刊以来、タイトル同様にユニークな企画を重ねてきた『VIVA! ORTHO』は、残念ながら本号をもって発刊終了となります。最終号では、編集委員の先生方にお集まりいただき、また日本整形外科学会(日整会)第13代理事長を務められた松本守雄先生をゲストにお迎えして、創刊からの6年間を振り返りながら、今後の整形外科医療の在り方について語り合いたいと思います。

まず、どうしても避けて通れないのが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する話題です。整形外科の診療も大きな影響を受けました。また、外出の機会が減ったことによる高齢者の運動機能の衰えも指摘されています。松本先生、日整会ではコロナ禍でどのような取り組みをしてこられたのでしょうか。

松本 日整会では2020年4月の段階で、形を変えても学会のミッションは継続することを理事会決定し、会員の安全を担保するためにも学会のICT化を進めてきました。ご存じのように、2020年の第93回学術総会は丸毛啓史会長が早々にオンライン開催を提案され、続く骨・軟部腫瘍学術集会、基礎学術集会もすべてオンラインで開催されました。各種講習会や専門医試験も全国各地でCBT(computer based testing)形式での実施を早々に決断しました。また、COVID-19に関する特設サイトを学会Webサイト内に立ち上げて、会員への情報発信に取り組んでまいりました。

田中 非常に速やかな対応で、特に第93回学術総会のオンライン開催は、大規模な学会としては先鞭をつけたという意味でも大きな意義があったかと思います。

続いて、外出自粛により運動量が減少し、本誌でも取り上げることの多かったロコモティブシンドローム(ロコモ)の悪化が懸念されていますが、帖佐先生、その点はいかがでしょうか。

帖佐 わが国でも複数の調査が実施され、日本臨床整形外科学会が2020年7~8月に外来受診した患者さんおよびご家族を対象に行った「コロナ自粛後の身体変化に関するアンケート調査」では、コロナ自粛後に「つまづきやすくなった」「階段が昇りづらくなった」「速く歩けなくなった」というロコモ早期兆候を自覚した人の割合が年齢とともに増加し、70代では30%、80代以上では40%を超えていたことがわかっています(図1)1)。このいわゆるコロナロコモについては、日整会のプロジェクトとしても、より大規模な調査を実施すべく準備を進めているところです。

図1 コロナロコモ

(文献1より引用・改変)

田中 中村先生は脊椎疾患がご専門ですが、コロナ禍の影響はいかがでしたか。

中村 これまで脊柱管狭窄症や腰痛を抱えながらも、日常生活の活動性を通して何とか過ごしてこられていた方が、外出自粛により大きな影響を受けました。動くこと、歩くことの重要性を教えられたともいえます。ウェルビーイングな生活を送るために、運動器がいかに重要かということを、われわれ整形外科医はもちろん、国民の多くが実感されたのではないでしょうか。

また、コロナ禍がもたらす社会的な分断や孤立が、慢性疼痛、特に運動器の疼痛にネガティブな影響を与えていることも、日本をはじめ海外からも複数報告されています2)。COVID-19パンデミックが運動器の痛みや活動性に大きな影を落としていることは間違いなく、ピンチをチャンスに変える意味でも、ポストコロナ時代においては運動器の重要性を強く発信していく必要があると感じています。

田中 黒田先生はスポーツ整形の領域から、この1、2年をどのように振り返られますか。

黒田 2020年4月に最初の緊急事態宣言が発令され、スポーツ活動が一気にストップし、スポーツ外傷の患者さんの来院はほとんどなくなりました。また、不急の手術は延期するという病院の方針に従い、整形外科は手術件数を7割に減らさなければなりませんでした。人工関節置換術のほか、前十字靱帯損傷の手術などもスポーツをしないなら待機可能ということで後ろに回さなければならず、私自身が精神的にダメージを受けていた気がします。

田中 「不要不急」という言葉が流行語のようになり、整形外科の手術についても不要ではないけれども不急と判断した医療機関が多く、アイデンティティクライシスを起こしかねないような状況だったように思います。COVID-19に大きな影響を受けたという意味では、東京2020オリンピック・パラリンピックがその最たるものだったのではないでしょうか。

黒田 オリンピック・パラリンピックは無事に1年遅れで開催され、そのこと自体はとてもよかったです。しかし、ボランティアを含め参加された医療従事者の皆さんは、自分が果たして現地へ行ってもよいのだろうかと自問されたでしょうし、なかには批判を受けた人もいたと聞きますので、複雑な思いでした。

帖佐 当院からもスタッフが多く参加しましたが、東京から戻った際には1週間待機するか、3日間待機ののち抗原検査を受けることが義務付けられました。診療に影響が出ないようにシフトを組みましたが、なかなか現場のやりくりが大変でした。

ポストコロナ時代の整形外科の在り方

田中 続いて、ポストコロナ時代において整形外科がどのように発展していくべきなのか、その未来像について考えていきたいと思います。まずは松本先生に日整会の方向性を伺います。

松本 学会誌のオンライン化はもとより、学術集会は今後もしばらくはオンラインを併用したハイブリッドでの開催を予定しており、各都道府県の会場を利用したCBT形式での専門医試験も継続を検討しています。

中村 Zoomなどのビデオ会議システムをはじめ、デジタル化が一気に進んだことは、今回のパンデミックがもたらしたポジティブな遺産といえます。多様な働き方を考えたときに、オンラインで研修や学会に参加する選択肢があれば、出産や育児、介護と並行してキャリアをつなぐことができます。学会はハイブリッド開催として、各個人が状況に応じて選択していくというのが、今後のニューノーマルになっていくのではないでしょうか。

田中 COVID-19の感染拡大をきっかけにオンライン診療の規制が緩和されましたが、先生方の施設ではどの程度、導入されていますか。

帖佐 当院では電話診療を活用するようにとの指示が出され、初診以外の患者さんを対象に実施しています。ただ、整形外科の場合は画像検査などを必要とすることが多く、関節リウマチなどでも半年に1回は血液検査を行いますので、その点に課題を感じます。現在、関連病院で検査を行い、診療はリモートで大学病院が提供するという構想があります。

松本 オンライン診療については、日本医学会連合から整形外科で初診に適さない症状について問い合わせがあり、回答しました。「オンライン診療の初診に関する提言」にまとめられていますが3)、整形外科は患者さんを見て触って正しい診断を導き出していく科であるため、かなり多くの症状が入ってしまいました。実際に臨床現場に落とし込んでいくためにはさまざまな課題が考えられますが、学会にはそれをクリアしながら推進していく努力が求められます。

中村 日整会に新しく次世代医療技術検討委員会が発足し、オンライン診療について現状把握する調査を予定しています。他の領域から著しく後れを取ってガラパゴス化することのないよう、整形外科としてもできるところについてはしっかり取り込んでいかなければなりません。

再生医療の目覚ましい進歩と運用の課題

田中 この6年間で再生医療は目覚ましい進歩を遂げ、さまざまなシーズが実際に臨床現場に届き始めています。黒田先生は軟骨再生治療に取り組んでおられますが、再生医療の現状や課題についてはどのようにお考えですか。

黒田 わが国では、自家培養軟骨移植術が2013年4月に保険収載されていますが4)、対象が若年層に起こりやすい外傷性軟骨欠損症や離断性骨軟骨炎であるため、対象症例数はそれほど多くありません。むしろ超高齢社会のわが国における大きな市場は変形性関節症であり、日整会の移植・再生医療委員会で毎年実施しているアンケート調査をみると、近年は特に変形性関節症に対する脂肪由来幹細胞の関節注射が自由診療で増えています。これは再生医療等安全性確保法の第二種再生医療等技術にあたる治療として認められていますが、美容外科クリニックなども参入し、日整会が把握しきれないところにまで広がりつつある現状に不安を覚えています。

中村 われわれにはアカデミア発のシーズが社会実装されていく際に、それが安全かつ適正に患者さんに届けられているかというところまで見ていく責務があります。政府もこの事態を憂慮し、再生医療ナショナルコンソーシアムのなかで、再生医療のシーズの適正評価委員会を発足して議論を始めています。整形外科全体の信用にかかわる問題に発展する恐れがあり、日整会としても何らかの対応をとる必要があると思われます。

黒田 重要なご指摘です。その一方で、脊髄損傷に対する再生医療はとても丁寧に積み上げてこられているように思います。

中村 脊髄損傷に対する再生医療については、札幌医科大学附属病院とニプロ株式会社が共同開発したヒト自己骨髄由来間葉系幹細胞が2019年に保険収載されました5)。今まさに市販後調査が実施されており、その結果を見ながら安全・安心な医療として定着していくことを願っています。同じ山を登るのにさまざまなルートがあるのと同様に、脊髄損傷に対する再生医療の正解も1つではなく、われわれが研究しているiPS細胞由来神経前駆細胞を用いた再生医療についても現在、亜急性期脊髄損傷に対する臨床研究を行っているところです。そのほかにもさまざまなシーズが育っており、長かった研究のフェーズを少し抜け、基礎から臨床に応用される最も重要な時期に差し掛かっているといえます。

整形外科が目指すべき将来像

田中 最後に、整形外科が目指すべき将来像について、一言ずついただきたいと思います。私個人としては、日本の独自性ともいえる、保存療法、手術療法、リハビリテーションを三位一体で手掛ける整形外科で今後もあり続けなければならないと思っています。先生方、いかがでしょうか。

中村 運動器の健康が重要であることは、世界的なコンセンサスとなっているといえます。2017年に発表された世界の疾病負荷研究(Global Burden of Disease Study:GBD)のわが国の疾患別DALYs(死亡と障害の両方を鑑みた包括指標)をもとに2040年の疾病負荷を推計した調査では、上位10疾患に腰痛と転倒の整形外科疾患が2つ入っていました(表)6)。高齢化の進む社会で、延長した寿命を支える運動器に対し、整形外科がどのような治療を提供できるかが問われており、そのためにも再生医療やロボット、AIの活用が期待されています。

表 169疾患別のDALYs上位20疾患(2040年推計)
方法:世界の疾病負荷研究(GBD2017. Lancet. 2017 ; 392 : 1859-922.)より1990~2017年のわが国の疾患別DALYsのデータを使用し、標準的な時系列解析手法であるARIMA(自己回帰和分移動平均)モデルを用いて、2040年までの将来の疾患別DALYsを予測した。DALYsに影響しうる変数として、社会人口指数(socio-demographic index:出生率・教育歴・所得の複合指数)、体格指数(BMI)、喫煙率、飲酒率を考慮した
対象:GBD2017で対象とする全169疾患

(文献6より引用)

帖佐 厚生労働省の「令和元年国民生活基礎調査」をみると、介護が必要となった主な原因として、「関節疾患」「骨折・転倒」「脊髄損傷」をあわせた運動器疾患が24.8%と、認知症の17.6%や脳血管疾患の16.1%と比較しても多いことがわかります(図2)7)。介護予防においても運動器が重要であることを本領域の皆さんと共に発信していきたいと思っています。

黒田 老化という現象が疾患と捉えられるようになり、骨粗鬆症や変形性関節症の診断と治療は日々進化しています。整形外科はますます必要とされる分野であり、運動器を治すプロとなって未来を明るくしていこうと、これから医師になる人には伝えたいですね。

松本 内閣府の「令和2年版高齢社会白書」によると、2019年の65~69歳の就業率は48.4%にのぼります8)。働く高齢者の労働災害が増えており、その原因として転倒や腰痛が上位に入っています。つまり整形外科は、今後、高齢者が活躍する社会を医療の面から支える、非常に重要な役割を担う科であるといえます。また一方で、運動器に障害を抱える子どもが増加しているという現状もあり、日整会としても小児整形外科の教育に注力していく必要性を感じています。加えて、整形外科は変形性関節症や骨粗鬆症などの女性患者が多いにもかかわらず、基本領域のなかで女性医師の比率が依然として最も低い状況にあり、女性整形外科医を増やすことも重要な課題と考えています。

田中 ありがとうございました。先生方のお話のとおり、整形外科は今後も重要性がどんどん増していく分野です。是非、明日の整形外科を担う人材が多く育ってくれることを願います。編集委員の先生方、本日ゲストとして参加いただきました松本先生、本当にありがとうございました。読者の皆様、6年間にわたりご愛読いただきましたことに改めまして深謝いたします。

図2 介護が必要となった主な原因

(文献7より作図)

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