メディカルアフェアーズ情報

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VIVA! ORTHO

Sports スポーツの現場から 踏む(漕ぐ)力がすべて ―人馬一体のパフォーマンスが安全に行えるように

早稲田大学スポーツ科学学術院 教授 熊井 司

自転車競技は1896年のオリンピック第1回アテネ大会からの正式競技であり、近年は若者を中心にアクロバティックな技を競うBMXが人気を博しているほか、東京2020大会では日本発祥のケイリンでのメダル獲得も期待され、大きな注目を集めています。今回は、日本自転車競技連盟医科学部会長でトラック競技ナショナルチームのチームドクター、そして東京2020大会自転車競技選手用医療統括医師である熊井司先生に、自転車競技のケガの特性、メディカルサポートの現状と自転車競技の見どころについてご紹介いただきました。

足の外科とスポーツ医学を専門とすべく整形外科へ

現在、自転車競技に関わる職に多く就いていますが、もともと大学当時から自転車で走ることが好きで、マウンテンバイクで一晩中山の中を走るエンデューロレースにも参加していました。クラブ活動ではスキー部とバスケットボール部に所属するなかで、捻挫をはじめ、足の障害を経験することが多かったことと、講義を通じて足の外科の大家である高倉義典教授の人柄に魅かれ、足を診る整形外科に興味をもちました。

私の出身である奈良県立医科大学整形外科学教室は、1965年に当時の玉井進教授が世界で初めて完全切断母指再接着に成功し、多くの手の外科医が輩出されてきました。

玉井教授の後任となった高倉教授は一転して足の外科が専門で、私も研修医時代から強く影響を受けたこともあり、足の外科とスポーツ医学を極めるべく整形外科に入局しました。スキーに時間を割くことも難しくなるにつれて、おのずと自転車と過ごす時間が増えていきました。

医師になってからは、オーバーユースで負荷がかかりやすい腱付着部の研究をするためにイギリス・ドイツに渡り、形態学・解剖学を学びました。ウェールズ大学での上司も自転車愛好家で、毎週のようにサイクリングをされていましたし、自転車競技の本場ヨーロッパでは一年を通じて、夏はロードレース、冬ならトラックレースと、毎週どこかで競技が開催されていました。冬のヨーロッパは凍える寒さですが、競技は暖かいドームの中で開催されるため、一年中家族連れで観戦を楽しむ文化が根付いています。彼らと話すと、彼らの認識している日本企業の三本の指にもれなく自転車のパーツメーカー「シマノ」が含まれており、日本の高い技術が本場でも評価されていることが誇らしかったです。

ペダリングの科学を追究したスポーツ

自転車競技においては、自転車という機材をいかに使いこなすかが求められます。そのため、1回のレースにチームに最低2人はメカニックと呼ばれるスタッフが帯同します。彼らのテクニカルサポートが結果を左右すると言っても過言ではありません。自転車の組み立てから、選手個々の筋力に合わせたギア比やタイヤの厚み、空気圧の変更、ロードレースでは雨の降る日、風のある日、真夏の炎天下など、路面温度や天候にあわせた調整といった細部にわたるメンテナンスを含め、自転車に関わるすべての業務を担うメカニックは、自転車競技に必須の存在です。

一方、選手に求められる技術としては、他競技のような複雑な動きの組み合わせというよりは、自転車競技ではペダリングという単純な動作がすべてです。BMXフリースタイルはアクロバティックな要素もありますが、自転車競技は本来的にペダルを踏む動作だけで勝負する世界です。動力源はただ人が足でペダルを踏むこと。基本的な動作の追求で競います。

同じ自転車競技でも、一般道を長距離走るロードレースでは心肺機能やチーム戦略が、競技場を周回で走るトラックレースでは瞬発力が求められるため、双方の選手の体型はまったく異なります。ロードレースは、動力源として燃費効率よく車輪を回転させる長い足と疲れない筋肉をもっていることが有利で、体脂肪8%以下の選手も珍しくありません。一方、トラックレースではシリンダーとなる大腿の筋が太い方が有利で、トップ選手の大腿周径は70cm以上にもなります。また、ペダリングでは大腿四頭筋とハムストリングスを酷使し、それらが横にぶれないよう殿筋で支持しながら推進力へと変えていくため、強靭な下肢筋力が求められます。

オリンピック競技中トップの障害発生率

オリンピックの全競技中、障害が発生しやすい競技の1位は自転車競技のBMXです。格闘技、ボクシング、ラグビーなどが想像されるかもしれませんが、ボクシングは2位で、3位はまたも自転車競技のマウンテンバイク。期間中、最も医療スタッフの注目が集まるところです。

自転車はそもそも転倒を伴う危険な乗り物であり、競技となれば集団で走ることで自らの転倒に加え、ほかの選手との接触も発生しやすく、長距離を走るロードレースではオーバーユースも生じやすくなります。障害部位は競技種目により異なりますが、総じて多いのは腰痛です。ペダリングによる足の障害にまさる頻度で発生し、これには風を避けるために前傾姿勢をとることと自転車の構造が関係しています。

自転車のフレームの特徴は、三角形が2つ組み合わさった力学的に強いダイヤモンド構造となっていることです(図)。2つの三角形の端にそれぞれハンドルと後輪が付き、三角形の接合部にペダルが付くことで、強く美しく、最も効率よく地面に力を加えることができます。さらに、上に乗る人間がハンドル、サドル、ペダルの三点で自転車と接着して三角形を形成し、自転車と人間が一体となった剛性体をつくることでエネルギーロスを減らしてより大きなパワーを生み出します。しかしながら、フレームの一部となる手と腰への負担は大きく、ただでさえ人間は二足歩行を始めて以降腰が弱く、そこに無茶な前傾姿勢をとることで腰痛を発生させやすくなります。予防としては、体幹筋と上肢を鍛えることで、トラックレースの選手は足が太いですが、上体はさらに太く鍛えられており、そのお陰で全身から強烈なパワーを生み出しています。

図 自転車のフレームと自転車競技の主な外傷・障害発生部位
自転車のフレームは、橋や鉄橋が三角形を基本単位としたトラス構造で最強の剛性と安全性を確保しているのと同じ原理をもつ。

(臨床スポーツ医学34巻7号、熊井司、文光堂、2017年、687ページより改変・引用)

過去の反省に学び、世界レベルのメディカルサポートをめざす

東京2020大会開催に向け、選手のメディカルサポートは各競技団体に委託されるため、充足度は競技種目によって異なります。日本自転車競技連盟(JCF)としても東京2020大会開催決定後に急遽メディカルネットワークの組織化を推進することとなりました。この5、6年で積極的に募集を行った結果、現在メディカルスタッフとして医師は40名以上、看護師や理学療法士なども含めると130名程度にまで登録数を伸ばしています。

また、医科学部会では積極的に他国強豪チームのチームドクターと情報交換し、障害の発生状況やそれに対応する最新システムについての把握に努めています。現在の日本の自転車競技のメディカルサポートレベルは、強豪国に引けを取らない水準にまで引き上がっています。そこには、過去の大会からの大きな反省もありました。

以前、真冬のオランダでのトラック世界選手権大会に帯同したときのことです。通常、トラックレースの選手は心肺機能を高めるため、毎日のランニングをメニューとします。冬季シーズン中に競技会を転戦する本場の環境を知らない指導者陣が、いつもと同じ感覚で外気温マイナス15度、凍えるような寒さの中、選手たちに外の公道を3時間も走らせてしまったのです。皆スパッツの中で汗が凍り、戻ってきたときには足は真っ赤で感覚も失われていました。凍傷で皮膚が?離する可能性もあり、翌日の練習を全面ストップさせるという事態に陥りました。不慣れな環境におけるリスクマネジメントが十分でなかったとはいえ、トレーニングと医科学的サポートとの連携の手薄さを反省し、このトラブルを教訓に、自転車競技のメディカルサポートを世界標準レベルで維持できるよう、体制における連携強化に努めることの必要性が意識されました。

脚力が生むバラエティに富んだパフォーマンスに注目

自転車競技の魅力は、何といってもその多様性にあります。一口に自転車競技と言っても、その種目は「BMX(フリースタイル/レーシング)」「マウンテンバイク」「ロード」「トラック」の4つに分けられ、1つ1つがまったく別の競技と思えるほど印象が異なり、それぞれに見どころ、面白みがあります。求められる身体能力も違うため、選手層も違いますし、障害特性ももちろん異なります。

2000年のシドニー大会からオリンピックのトラック種目に日本で歴史のあるケイリン(競輪)が採用されたのは誇れることです。ケイリン発祥の日本は、トラック種目でこれまでにメダル獲得経験があり、東京2020大会でも上位進出が期待されています。大会期間中はほぼ連日、自転車競技が開催されるため、ぜひ自転車競技のもつ多彩な魅力に触れていただきたいです。自転車競技を知り、自転車競技のメディカルサポートの担い手としての魅力に気付いて、参画してくださる方が増えてきてくれれば嬉しいですね。


熊井 司

1986年奈良県立医科大学医学部卒業、同年整形外科入局後、関連病院へ出向。1997年奈良県立奈良病院整形外科 医長、2000年より英国・ウェールズ大学およびドイツ・ミュンヘン大学へ留学。2002年阪奈中央病院整形外科 部長を経て、2006年奈良県立医科大学整形外科 講師、2013年同学スポーツ医学講座 教授。2017年より早稲田大学スポーツ科学学術院 教授。日本自転車競技連盟医科学部会長、自転車トラック競技ナショナルチーム チームドクター、日本オリンピック委員会強化スタッフ(医・科学、自転車競技、バレーボール競技)、シマノレーシングチーム チームドクター、ウルフドッグス名古屋 チームドクターなど。

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