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VIVA! ORTHO

Meet the Expert 座談会 整形外科領域の医工・産学連携

医工・産学連携に取り組むきっかけ

中村 整形外科領域では、近年、リハビリテーション・ロボットや手術支援デバイスなど、さまざまな研究成果が臨床現場に届き始めています。医療機器などの研究開発においては医療現場のニーズと工学のシーズを結びつける「医工連携」が、社会への実装に向けては医療機器メーカーやものづくり企業との「産学連携」が欠かせません。本日は、本領域の第一線を走っておられる3人の先生方に、整形外科における医工・産学連携の現状について伺います。

まずは、先生方が医工・産学連携に関わる研究を始められたきっかけをお聞かせください。

島田 私は1982年に札幌医科大学を卒業後、秋田大学の整形外科に入局しました。当時の荒井三千雄教授に機能的電気刺激(FES)の研究を勧められ、その後、英国のストラスクライド大学医用工学研究所へ留学機会を得ました。そこはバイオメディカルエンジニアの養成校としてトップクラスの大学院大学で、工学系の大学を卒業した人たちが、生理学や解剖学、組織学、生化学などの専門医学教育を受けていました。欧米では、バイオメディカルエンジニアが大学や大きな病院に必ず在籍し、給料も社会的地位も高い存在だということを、私はそこで知りました。

「脊椎損傷患者さんを自分の足で歩かせたい」との誓いを胸に帰国しましたが、日本には医用工学や福祉工学に関する部門はあっても、欧米のようなバイオメディカルエンジニアはいません。自分が見てきたものとかけ離れた日本の実情にショックを受け、日本で工学系の研究者を欧米型のバイオメディカルエンジニアに育てることを決意し、そのための活動を続けて約30年になります。

中村 ありがとうございます。海外留学でバイオメディカルエンジニアの重要性を目の当たりにされたことが大きなきっかけだったのですね。佐藤先生はどのようなことがきっかけでしたか。

佐藤 私は1994年に新潟大学の整形外科に入局し、医師4年目に米国ミネソタ州のヘネピンカウンティメディカルセンターに留学しました。開放骨折で有名なRamon B. Gustilo先生のラボで人工膝関節置換術の臨床と研究に携わり、そこで初めて医工連携に触れました。まず驚いたのが、エンジニアやその協力者が手術室に入ってくることで、そしてバイオメカニクスのミーティングが積極的に行われ、エンジニアと医師がフラットに議論している姿が強く印象に残りました。

帰国後は知識も技術も足りない状態のまま、さまざまな地方の病院に派遣されました。自分が留学で得たことから患者さんに対してできることは何だろうと考え、術前計画を綿密に立てて手術に臨むことにしました。レントゲンを撮るところから患者さんに付き、最適なものが撮れるまで何回も撮り直しをしたりしましたが、矢状面と冠状面のアライメントは評価できるものの、横断面、つまり回旋アライメントを評価することができないという壁に突き当たりました。回旋アライメントが荷重状態の立位で評価できるようにならないものかという思いを現場で抱えていました。

そして2001年に新潟こばり病院(現 新潟医療センター)に赴任すると、留学のきっかけでもあり、私の師匠である古賀良生先生がおられました。古賀先生は80年代から新潟大学工学部との連携体制を築いておられ、その研究テーマの1つに下肢アライメントを荷重状態で三次元評価するための原理の開発がありました。自分が抱えていた課題の解決につながる可能性を感じて研究に参加したことが、この道に足を踏み入れたきっかけです。

中村 留学が1つのきっかけになり、それから臨床現場で感じたアンメットニーズを解決したいとの思いから医工・産学連携の道にどんどん入っていかれたのですね。名倉先生はいかがですか。

 

名倉 私は1992年に慶應義塾大学の整形外科に入局し、その後、進学した大学院でバイオメカニクスの研究に従事したことがきっかけとなりました。慶應義塾大学理工学部に歩行解析の第一人者である山崎信寿先生がおられ、学位研究をご指導いただきました。

そして留学先を探していると、膝のバイオメカニクスを研究されていた松本秀男先生に「スタンフォード大学に行かないか」と誘われたのです。それでスタンフォード大学の工学部に留学したのですが、そこに歩行解析を専門とするエンジニアのThomas P. Andriacchi先生がおられました。世界で最も多く使用された人工膝関節のデザインを考案したAndriacchi先生と一緒に研究したことが、大きなターニングポイントになったと思います(写真1)

帰国後は、松本先生が大学で歩行解析を手がける研究室を立ち上げられたところだったので、そこでの研究に携わるうちに医工連携の研究を進めることになりました。

写真1 スタンフォード大学留学時/Stuart B. Goodman先生(中)、Thomas P. Andriacchi先生(右)と

医工・産学連携の難しさとその打開策

中村 先生方に共通するのは、海外での経験や人との出会いが医工・産学連携を始めるきっかけになっていたことかと思います。実際に、領域の異なる人たちと研究開発を進めてこられて、連携の難しさやその打開策についてはどのような経験をされたのでしょうか。

島田 連携の難しさについては、さまざまな分野の人を入れて大きなグループをつくったほうが、むしろ難しさは少ないです。私のチームは現在100人規模になり、工学者はもちろん、学生やデザイナー、行政関係者、企業人も参加しています。私と工学部の教授が中心となり、一人ずつ声をかけて集めましたが、誘う際に伝えるのは、「このグループに入ることで医療者でない人がどのようなメリットを得られるか」です。

中村 パートナーシップを築くために非常に重要なポイントですね。医療者にとってメリットになることとは別に、工学者にとってもどのようなメリットがあるのかを示す必要があります。

島田 それも「ギブ・アンド・テイク」ではなく、「ギブ・アンド・ギブ」であることが重要です。医工・産学連携を長続きさせるためには、いかに相手にプラスになるものを与えられるかに尽きます。私はそのために2週間に1回、早朝に医学のミニレクチャーを行っています(写真2)。欧米のバイオメディカルエンジニアと張り合えるくらいの知識を身に付けてもらうために、解剖学や生理学、整形外科など幅広い内容を扱っています。ギブを継続し続けて30年が経ち、グループに所属する人が教授になったり、学生が一流企業に就職したりといういい流れができてきて、人が集まりやすくなってきました。

名倉 工学者も学部生をはじめ、修士・博士まで進まれる方など、それぞれの立場やめざすところがあります。そこへわれわれがどれだけギブできるかということが重要だと感じます。かつては、医工連携といえば医師が主導するイメージがありましたが、現在は日本臨床バイオメカニクス学会の役員もエンジニアの先生方が多くなり、かなりイーブンになっていますね。

写真2 AMAG(Akita Motion Analysis Group)のカンファレンスのようす

中村 実際に研究を進めるにあたり、心がけておられることはありますか。

佐藤 基本的なことですが、工学者に対して、臨床的な背景と開発の意義を時間を掛けて説明して共有することを徹底しています。

島田 研究の過程では、グループを細分化してワーキンググループをつくり、商品化までのスケジュールを皆で話し合って折り合いをつけます。グループに必要な人材が足りなければ、全国から専門家を探します。常に最新の情報をグループで共有して、プロセスや必要な要素を具体化していくことが重要ではないかと思います。

中村 薬事法による規制や知的財産について、苦労された経験などはおありでしょうか。

島田 たとえばリハビリテーション・ロボットの場合には、薬事承認を取得し、保険審査を通る必要があります。日本でそれを一からやろうとすると、一生をかけても実用化に辿り着けません。医工連携のものづくりは「西回り」といわれ、まず承認が比較的容易なドイツで保険適用を得て、それから米国食品医薬品局(FDA)の承認を取得できれば、日本での薬事承認が通りやすくなります。

佐藤 私は特許で苦労しました。ある手術の支援技術を開発した際に、開発者として私が個人名で特許を取り、ソフトウェアメーカーが特許権者になり、研究を進めていました。そして引き合いが出てきたときに、販売の都合上、ソフトウェアメーカーから私にロイヤリティを支払う必要があるという話になったのです。確かにコアな技術は私のアイデアでしたが、工学者や先輩の先生方が作ってきた基盤があってこそという認識があり、果たして私のみがロイヤリティを得てよいものか大変悩みました。特許を申請する段階で、最終的にどのように運用するかをきちんと話し合っておくべきです。

島田 私は現在、秋田大学の産学連携担当副学長をしており、知財部門長を務めています。さまざまな分野の知財を毎月数十件審査していますが、医師はあまりにも知財に対して疎く、知識も意欲も乏しいと感じます。現在、審査の過程で、知財戦略やロイヤリティの配分、どのような企業と組めばよいのかなどについて、知財部門が汗をかいて一人ひとりの研究者に教えているところです。

名倉 医師は新しい発見をしたときに、学会発表を行い、論文を書いて出したいという思いが先走ります。しかしながら、学会発表を行えばその発明は公開済みとなり、特許を受けることができなくなるということが、ようやく周知されてきたところです。また、論文の共著者や謝辞にも表れている通り、日本人はチーム意識が強くあります。佐藤先生のように、ロイヤリティが自分にだけ入ることに悩まれるお気持ちもわかりますが、米国では研究者の当然の権利だという空気があり、そこをモチベーションとして「よし、次だ」といういい流れがありましたね。

中村 日本には、研究は患者さんを治すためにするものであって、金儲けのためにするものではないという意見が根強くあります。もちろん、患者さんのために研究開発をするわけですが、自分のアイデアを社会に還元して、それが個人や組織の収益になるというのは欧米では当たり前のことです。ロイヤリティが大学や病院などの組織に入り、基礎研究がさらに活性化すれば素晴らしいですし、それが個人に入り、研究による社会貢献で収入が得られれば、若い研究者に夢を与えることになります。

私は、医師が知財に無知であることは、社会に対する罪悪だとすら思っています。素晴らしい研究をしていても、学会発表などで公知の事実にしてしまえば、知財は取れなくなり、企業は商品にできません。素晴らしいアイデアが社会実装できなくなってしまいます。また、最近は特許を取得する流れにはなってきましたが、出口戦略を練っていないことでいわゆる「塩漬け状態」になっているものも多くあります。その結果、ほかの誰も手が出せなくなることも大きな問題です。

島田 特許の塩漬けについては、大学の知財部門が塩漬けになっていないかどうかをチェックしています。秋田大学の場合は、7年経っても物にならないものについては権利を放棄させます。厳しいようですが、そうしないと塩漬けばかりが増えていきます。できるだけそうならないように、特許を取得する際には必ず知財コーディネーターとマンツーマンで話をして、戦略を立て、大学が何%費用を負担するのかを決めています。まずは、核となる部分の知財に対して特許を取るという経験をさせることが重要だと考えています。

整形外科が今後向かうべき医工・産学連携

中村 最後に、今後、整形外科が医工・産学連携において向かうべき方向性について伺いたいと思います。若手の先生方へのメッセージも含めてお願いいたします。

佐藤 私は膝関節外科医として、特に人工膝関節置換術に関する研究開発に携わっています(写真3)。この分野でもロボットやナビゲーションシステムは新しい技術が次々に開発されてきていますが、それらが患者さんの不満足を実際に解決しているかというと、必ずしもそうはなっていないように思います。「患者さんのためになる技術」をめざすときに、解決策の1つとなるのがビッグデータの活用で、臨床成績から得られたデータを技術に組み合わせ、患者さんの不満足を満足に変えることが、これからの医工連携において重要です。

名倉 私は三次元動作解析装置を用いて、さまざまな運動器疾患や外傷の動作解析を行っています。それに基づき装具や評価システム、ヘルスケアデバイスなどの開発を行っており、近年はAIやウェアラブルセンサの研究も手掛けています。患者さんの日常生活がモニターできたり、三次元の身体運動画像が見られたりということができるようになっていますが、佐藤先生が言われた通り、その技術をどう臨床に最適化するかが課題です。新しい技術や製品が患者さんのためになり、売上のロイヤリティが大学や個人に入り、最終的にその成果が産業にも波及することが理想です。研究自体の楽しさに加え、若い人たちが夢をみられるよう、成功例をわれわれが示していく必要があると改めて感じています。

写真3 人工膝関節置換術における三次元画像情報を用いた手術支援システム

島田 若い先生方には、イノベーションを起こす技術の開発をめざしてもらいたいと思います。そのために必須となるのが情報通信技術との融合です。近年はAIのほかにAR(拡張現実)やMR(複合現実)もめざましい進歩をみせています。われわれは現在、特にMRの実装をめざしており、最終的に脳活動によって機械を操作するブレイン・マシン・インターフェース(BMI)を実用化すべく共同研究を行っています。イノベーションを起こすためには、「Don't hesitate(躊躇するな)」、とにかく挑むべきです。

中村 かつては「学会発表で終わりではなく、論文にして後世に形として残せ」とよく言われました。もちろんそれも重要ですが、医師が行う研究は患者さんに還元され、社会に貢献してこそ真の意味をもちます。そのためには工学者や企業人との連携が必要であり、イノベーションは異分野の文化がぶつかり合うことが起点となって生まれます。是非、若い先生方には、「世の中に届ける」というビジョンをもって、研究に取り組んでいただきたいと思います。島田先生の言われた「Don't hesitate」の精神が、医療を変えていく力になります。本日はありがとうございました。

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