近畿大学生物理工学部 人間環境デザイン工学科 准教授 谷本 道哉
近畿大学生物理工学部 人間環境デザイン工学科 准教授 谷本 道哉
SDGs(持続可能な開発目標)とは国連が定めた国際目標で、世界をよりよくするための17の目標からなります。この17項目ある目標の3番目に「すべての人に健康と福祉を」があります。1番目が「貧困をなくそう」、2番目が「飢餓をゼロに」ですので、先進国であるわが国においては、健康と福祉が実質1番目の目標といえます。
アントニオ猪木さんは「元気があれば何でもできる」と言われました。古代ローマの詩人ユウェナリスは「健全な精神は健全な肉体に宿る」の言葉を残しました。健康でなければ何もできないということではありませんが、やはり健康で元気でいることがさまざまな行動や気持ちのもち方に強く影響すると思います。
そして、高齢の方の元気で健康な体の礎になるのは「強い足腰」です。自分の脚で立って歩いて、行動範囲を広げていきましょう。コラムの最後にスクワットのやり方を紹介します。100歳まで歩ける健脚で、自分も周りも幸せになれる、よりよい世界に変えていきましょう。
自分の脚で歩ける筋力がつけば、すぐ近くまで車で出かけることもなくなります。歩行はちょっとした有酸素運動であり、歩数が増えると心疾患や糖尿病などの生活習慣病のリスクが下がります。同時にSDGsの13番目の目標である「温暖化対策」の行動ともいえます。地方の人ほど車依存度が高いので、強い足腰をつくり、歩ける距離は歩きましょう。
また、健脚でよく動くようになることには、うつ病の改善や予防の効果があることがわかっています。精神疾患の患者数は糖尿病やがんよりも多く、厚生労働省は2011年にがん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病の4疾病に、精神疾患を加えて5疾病としました。16番目の目標に「平和と公正」がありますが、個々人が精神的に平和であることも大切なことです。
元気で健康な体は、その人のQOL(生活の質)、幸福度の向上につながりますが、その恩恵は自分自身だけのものではないはずです。自立して生活できていれば、周囲の介護負担が減ります。元気に活動できれば、自分自身が人生を楽しめるだけでなく、周りの人が嬉しくなることもたくさんできます。
もちろんSDGsの掲げる残りのさまざまな目標につながる積極的な行動もできるでしょう。
生活機能を支える上で、体重を支えて移動を行う脚の筋肉は重要です。加齢で衰えやすい部位なので、スクワットでしっかりと鍛えて健脚を目指しましょう。スクワットにはさまざまなフォームのアレンジがありますが、今回はフォームが簡単で、腰への負担が少ないワイドスクワットを紹介します。
足幅を肩幅の1.5倍強に広めにとり、つま先を45度くらい外に向けます。背すじをまっすぐに伸ばして、痛みのない範囲でしゃがめるところまで深くしゃがんで立ちます。浅いスクワットは浅はかなスクワットですよ。回数をたくさん行うよりも、1回ずつしっかり奥深く丁寧に行います。膝や腰などに違和感や痛みを感じる場合は、無理せずに痛くないところまでで動作してください。筋トレは痛みのない方法で行うのが基本です。
10~20回を目安に、できるだけの回数をしっかり行います。1セットか2セットを週に2、3回行ってください。この方法でキツイ人や転倒の不安のある人は、安定したテーブルなどに手を置いて体を支えながら、痛みや筋力に無理のないしゃがみ込みの深さで行うとよいでしょう。
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