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VIVA! ORTHO

Sports スポーツの現場から ケガを未然に防げるサポートを ―ケガ発症のメカニズムを科学的に追究する

東京大学大学院医学系研究科感覚・運動機能医学講座整形外科学 講師 武冨 修治

1993年のJリーグ開幕以来、ワールドカップ、オリンピックでの日本人サッカー選手の奮闘ぶりに競技人口は一気に増加し、東京2020を目前に控え、ホームで戦う日本代表の活躍が期待されています。サッカーを中心に多くのスポーツ選手を診てきた武冨修治先生は、ケガからの復帰後のパフォーマンス向上を目指すメディカルサポートに加え、受傷メカニズムに着目したケガのリスクの科学的な解明にも尽力しています。今回はサッカーのケガやメディカルサポートの現状や今後の展望などについてお話しいただきました。

サッカードクターになりたくて

サッカーは中学から始めたのですが、幸いにも学生時代に大きなケガの経験はなく、大学まで続けてこられました。まさにJリーグの幕開けを思春期で迎え、医師になりたいというよりも、サッカードクターになりたい一心で医学部に進学しました。卒後に入局した整形外科には、日本で最初にスポーツ整形外科を立ち上げた中嶋寛之先生や、サッカー日本代表のチームドクターを務めた福林徹先生といった膝のエキスパートがいらっしゃって、自然と膝の診療に携わるようになりました。Jリーグ発足から6~7年が経過し、日本がワールドカップ初出場を果たし、競技熱が加速しはじめていた頃です。

入局当初からサッカーのケガ(障害・外傷)を診てきましたが、当時からサッカーは他競技に先駆けてドクター帯同のスタイルが定着しており、メディカルサポートを重視する傾向にあったように思います。サッカーのケガの特徴として、部位では大腿部や膝、足関節などの下肢が中心となり、ケガのタイプでは筋肉系が最多で、次に靱帯損傷・捻挫と続きます。サッカー特有と言えば、第5中足骨の疲労骨折であるジョーンズ骨折が多いのですが、これは週5、6日も練習するような運動強度の高い選手に多くみられます。サッカーの特性上、キックやターンなどの同じ動作を繰り返すことによるオーバーユース的なケガが発生しやすくなりますが、最近では科学的根拠に基づいたトレーニングが最適な練習時間内で行われるようになっており、練習のしすぎによる障害に遭遇する機会は以前よりも少なくなりました。

ケガをしない体づくりの重要性

成長期においては、軟骨や骨端が力学的負荷に弱く、ケガをしやすいのが特徴です。身長が急激に伸びるこの時期の骨の成長スピードに筋肉などの軟部組織の伸長が追いつかず、相対的に短縮して柔軟性が低下し、脆弱な部位に負担を引き起こしていると考えられます。ケガの種類も多様で、成長のピークである小学校高学年~中学生の頃には、骨端の障害が多くみられます。典型的なものはサッカー少年に発症しやすい、かかとの骨端にストレスがかかって痛みが生じるシーバー病です。中学生ぐらいになると、障害を受けやすい部位は骨端線周囲となり、オスグッド・シュラッター病や骨盤裂離骨折が特徴的に起こります。そして高校生になって成長のピークを過ぎれば、疲労骨折や膝蓋腱炎など、骨や腱の付着部の損傷、障害が起こるようになり、成人選手と同じケガの分布になります。

子どものケガについては成長段階ごとの特徴の把握とともに、治療による競技中断をいかに保護者や指導者に理解してもらえるかがカギとなります。中途半端に治療をしながら競技を続けてしまうと、痛みを抱えたまま思うように体を動かせず、結局完治までに時間がかかる一方で再発のリスクが高まるという悪循環に陥ります。これまで幅広い世代のスポーツ選手を診てきて、中学・高校時代に頭角を現したものの、ケガからの再起が図れず、選手として実を結べなかったケースは決して少なくありません。トップに登りつめるような優秀な選手ほど、日頃のセルフケアをしっかり実践していることを、子ども本人や周囲に伝えて、ケガを予防することの重要性を浸透させていかなければなりません。

また、スポーツによるケガは、男性、女性でそれぞれ起こりやすいケガが違うことがわかってきました。たとえばハムストリングの肉離れは男性選手に、前十字靱帯損傷は女性選手に多くみられます。そもそもケガは、解剖学的な特徴や関節可動域、筋力、筋肉の柔軟性、体の使い方などの多要素が組み合わさって起こるため(図11)、ハムストリングス/大腿四頭筋の筋力比や脛骨後方傾斜角、ジャンプの着地時の膝関節外反角度などの性差が、ケガの性差にもつながっていると考えられます。つまり、ケガのリスク因子の1つに性差があるといえます。このような解剖学的な因子には介入のしようがありませんが、トレーニングで体の使い方を変えたり、硬い筋肉をストレッチでしなやかにする、コンディショニングによってケアするといった介入可能なアプローチでケガのリスクを除外していくことが可能です。

図1 スポーツ障害・外傷の発症に関わるさまざまな因子(文献1より引用・改変)

日本代表のメディカルサポートを振り返って

2014年からの3年間は日本サッカー協会からの依頼を受け、2016年のリオデジャネイロオリンピックをはじめ、男子サッカー日本代表(U-23)に帯同する貴重な経験を得ました。事前準備からメディカルスタッフの業務は多岐にわたり、開催地や個々の選手に関する情報収集など、事前準備がメインと言えるほどでした。開催地が暑い地域なら暑熱対策、高地なら低酸素への対策、衛生状態によっては各種感染症に対する予防接種も必要です。

地域に応じて黄熱病、狂犬病や腸チフスなどさまざまな予防接種を行いますが、日本代表では直前まで代表選手が確定しないため、候補段階の選手すべてに接種を行わなければならず、接種計画には非常に難渋しました。選手招集に際しては、各所属チームのドクターと連携したメディカル情報の収集が必要となりますが、それはオリンピックに限らず、またU-20、U-17など、どのカテゴリーの大会でも重要な作業です。現地入りした後の連携をスムーズに図る上でも、日頃からのコミュニケーションをうまく取っておくことの重要性を実感しました。

入念な準備を経ての現地入りですが、当然ながら現地でも選手のコンディション評価やケガ、疾病への対応などと業務は多く、当時流行していたジカ熱にはワクチンがなかったので蚊に刺されないよう対策するしか手立てがなく、現地の強い虫除けを大量購入してグラウンドや宿舎への配備を徹底するなど対応しました。

普段の臨床と並行しながらの帯同業務はハードですが、チームが勝利してレベルを上げて世界の舞台で戦っている姿を見ると、日本サッカーの競技レベル向上に一役を担っているという実感が得られます。サッカーに限らず、スポーツ整形を志望する先生方には、ぜひ現場に出ることをお勧めしたいと思います。ひとたび現場に出れば、教科書で習ったことは全体のごく一部に過ぎないと痛感するはずです。現場で選手の動きを見て、指導者の思考に触れることは、スポーツ整形を携わる上で有意義な経験になるでしょう。

現在、スポーツのメディカルサポートに加わる医師は整形外科が中心ですが、日常生活とレベルの異なる負荷がかかるのは筋肉や骨に限ったことではなく、最近は脳震盪などの頭部外傷や心疾患による突然死なども注目されています。選手を包括的にサポートしていくには幅広い専門性が必須であり、さまざまな診療科からの参画が期待されます。

ケガのリスク因子の解明をめざす

臨床や帯同での経験を踏まえて、今後実現したいと考えているのが、ケガの発症リスクの解明です。現在、東京大学スポーツ先端科学連携研究機構のプロジェクトとして、スポーツ選手のケガのリスク因子となる身体的特徴や動作を明らかにするための研究を進めています。

本研究ではあらゆる競技の選手を登録し、ベースライン時のメディカルチェックで身体情報や筋力、バランス能力、動態視力などのデータを収集して、さまざまなスポーツ動作についても情報理工学系の先生方とともに最新の動作解析を行い、その後発生するケガを前向きに追跡しています(図2)。得られた大量のデータは通常の統計解析に加えて、AI(人工知能)のNeural Networkの手法を用いて発生したケガの関連について解析を行い、ケガのリスク因子を解明していく予定です。

新たなリスク因子が明らかになれば、選手ごとのケガのリスクを算出することが可能になるかもしれませんし、ひいては個人に合った有効なケガの予防プログラムの提供やジュニアへの正しい指導が可能となります。さまざまなスポーツにおいて選手の競技力向上への貢献が期待できるため、ぜひ本研究から有用な知見の発見につなげていきたいと思います。

図2 スポーツ医科学情報解析によるスポーツ障害・外傷の病態解明と予防プロジェクト
出典:東京大学スポーツ先端科学連携研究機構. https://utssi.c.u-tokyo.ac.jp/research.html, (閲覧:2021-03-19)

文献

1)Bahr R, et al. Br J Sports Med. 2005 ; 39 : 324-9.

武冨 修治

2001年東京大学医学部医学科卒業、同年整形外科入局、関東労災病院スポーツ整形外科などを経て、2009年東京大学整形外科助教、2012年~同膝スポーツ診療グループチーフ、2015年より現職。専門は膝前十字靱帯再建術などの膝関節鏡手術。日本サッカー協会医学委員、U-20/U-18サッカー日本代表ドクター。

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