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事後解析のデータ及び単施設の後ろ向き解析のデータを含みますが、臨床上重要な安全性情報のため掲載しています。

ビロイ®の副作用のひとつである低アルブミン血症について、実臨床での使用を通して発現状況や他の症状との関連性等が明らかになってきました。
本コンテンツでは、がん研究会有明病院 消化器化学療法科 副部長 大木 暁 先生ご監修のもと、ご施設で報告された低アルブミン血症の臨床像について、ご紹介いただきます。

監修者の所属・役職は2026年9月時点の情報です
(2026年9月作成)

本コンテンツでは、以下の臨床試験を取り上げています。

●国際共同第Ⅲ相試験(SPOTLIGHT試験)(海外データを含む)[検証試験]1,2)

化学療法歴のないCLDN18.2陽性かつHER2陰性の治癒切除不能な進行・再発の胃癌[食道胃接合部(GEJ)腺癌を含む]患者565例(日本人65例を含む)を対象に、mFOLFOX6併用下で本剤とプラセボの有効性及び安全性を比較することを目的としたランダム化二重盲検比較試験[安全性解析対象集団(SAF):557例、データカットオフ日:2022年9月9日]
※SPOTLIGHT試験の詳細はこちらをご参照ください。

●国際共同第Ⅲ相試験(GLOW試験)(海外データを含む)[検証試験]2,3)

化学療法歴のないCLDN18.2陽性かつHER2陰性の治癒切除不能な進行・再発の胃癌(GEJ腺癌を含む)患者507例(日本人51例を含む)を対象に、CAPOX併用下で本剤とプラセボの有効性及び安全性を比較することを目的としたランダム化二重盲検比較試験(SAF:503例、データカットオフ日:2022年10月7日)
※GLOW試験の詳細はこちらをご参照ください。

ビロイ®による低アルブミン血症

2024年6月に「CLDN18.2陽性の治癒切除不能な進行・再発の胃癌」を効能又は効果としてビロイ®が上市されました。ビロイ®の実臨床での使用が進む中、ビロイ®の電子化された添付文書では発現割合が5~10%未満とされていた低アルブミン血症について、実臨床ではビロイ®投与患者の100%に認められたという報告もみられています4,5)。今回は、ビロイ®による低アルブミン血症の臨床像について、化学療法歴のないCLDN18.2陽性かつHER2陰性の治癒切除不能な進行・再発の胃癌患者を対象としたビロイ®の国際共同第Ⅲ相試験(SPOTLIGHT試験、GLOW試験)及び市販直後調査のデータに加えて、当施設で実施した後ろ向き研究の解析結果をご紹介します。

国際共同第Ⅲ相試験及び市販直後調査における低アルブミン血症の発現状況

■国際共同第Ⅲ相試験における低アルブミン血症の発現状況
国際共同第Ⅲ相試験(SPOTLIGHT試験、GLOW試験)で認められたビロイ®の副作用である低アルブミン血症の発現状況は以下のとおりです6,7)。SPOTLIGHT試験における全Grade及びGrade 3以上の低アルブミン血症は、ビロイ®+mFOLFOX6群では279例中12例(4.3%)及び2例(0.7%)、プラセボ+mFOLFOX6群では278例中3例(1.1%)及び0例に認められました6)。一方、GLOW試験における全Grade及びGrade 3以上の低アルブミン血症は、ビロイ®+CAPOX群では254例中15例(5.9%)及び1例(0.4%)、プラセボ+CAPOX群では249例中13例(5.2%)及び0例に認められました7)。
SPOTLIGHT試験及びGLOW試験の患者背景は本記事の末尾をご参照ください。

【承認時評価資料】国際共同第Ⅲ相試験(SPOTLIGHT試験)(DIR230115)
【承認時評価資料】国際共同第Ⅲ相試験(GLOW試験)(DIR230117)

さらに、事後解析として胃切除歴有無別の低アルブミン血症(有害事象)の発現状況を解析した結果、SPOTLIGHT試験のビロイ®+mFOLFOX6群において、胃切除歴のある患者では82例中3例(3.7%)、胃切除歴のない患者では197例中40例(20.3%)に認められました8)。

ビロイ®の審査報告書

■市販直後調査における低アルブミン血症の発現状況
ビロイ®の市販直後調査9)では、集計期間(2024年3月26日~2024年12月11日)に収集されたすべての副作用は840例2,020件であり、重篤な副作用は192例284件、非重篤な副作用は786例1,736件でした。低アルブミン血症は29件報告されており、そのうち重篤な低アルブミン血症は2件認められました。
市販直後調査の患者背景は本記事の末尾、結果の詳細はこちらをご参照ください。

がん研究会有明病院における低アルブミン血症の解析10)

■研究の背景
実臨床においてビロイ®による低アルブミン血症がしばしば発現することを受けて、ビロイ®投与による低アルブミン血症の経時的推移、on-target/off-tumor toxicityと考えられる症状(四肢浮腫、食欲不振、胃炎所見)や腹水変化等との関連を明らかにすることを目的に、当施設でビロイ®治療を受けた胃癌(GEJ腺癌を含む)患者70例を対象とした後ろ向き研究を実施しました10)。
本研究の概要は以下のとおりです。

■患者背景
本研究対象70例の患者背景は以下のとおりです。年齢の中央値は61歳(範囲:30-84)であり、ECOG PSは0が31例(44.3%)、1以上が39例(55.7%)でした。腹膜転移は54例(77.1%)、腹水は39例(55.7%)に認められ、腫瘍の組織型はびまん型が55例(78.6%)であり、19例(27.1%)が胃切除術を受けていました(胃全摘術:13例、18.6%)。

Ooki A, et al.: ESMO Gastrointest Oncol. 2026; 13: 100383.より作表
(本論文の著者にアステラス製薬より謝礼金を受領している者が含まれる)

7. 用法及び用量に関連する注意(抜粋)
7.2 併用する他の抗悪性腫瘍剤は「17. 臨床成績」の項の内容を熟知し選択すること。[電子添文17.1.1、17.1.2参照]

■低アルブミン血症の発現状況
70例全例で治療中に血清アルブミン値の低下が認められました。最低下時のGradeは、Grade 0–1が28例(40%)、Grade 2が27例(39%)、Grade 3が15例(21%)でした。Grade 2以上の低アルブミン血症の発現割合は、ベースラインでは13%、サイクル1中に44%、サイクル2 Day1に49%とピークを示した後、サイクル3、4、5、6 Day1ではそれぞれ36%、29%、30%、25%へ低下しました。サイクル7以降にGrade 3の低アルブミン血症は認められませんでした。
Grade 2以下(灰色線)の55例において、53例がビロイ®を休薬又は中止することなく治療継続し、その後血清アルブミン値の改善が認められました。Grade 3の15例では、4例は休薬なく継続しましたが(水色線)、9例で休薬、2例で中止が必要となりました(紫実線/破線)。いずれの症例でも血清アルブミン値は改善しました。

Ooki A, et al.: ESMO Gastrointest Oncol. 2026; 13: 100383.より作図
(本論文の著者にアステラス製薬より謝礼金を受領している者が含まれる)

血清アルブミン最低値までの期間の中央値は、Grade 2の低アルブミン血症で16.0日、Grade 3の低アルブミン血症で28.0日、Grade 0又は1の低アルブミン血症で23.0日でした。また、回復までの期間の中央値は、それぞれ18.0日、16.5日、19.5日でした。
低アルブミン血症は、多くの症例で改善し得る事象であることが示唆される一方、治療開始後早期の血清アルブミン値に注意し、ビロイ®の休薬又は中止等検討することが重要です。なお、低アルブミン血症のみを理由としたアルブミン補充は通常実施されず、重度感染症で1例のみアルブミンが投与されました。

Ooki A, et al.: ESMO Gastrointest Oncol. 2026; 13: 100383.より作表
(本論文の著者にアステラス製薬より謝礼金を受領している者が含まれる)

■Grade 3の低アルブミン血症における関連因子
Grade 3の低アルブミン血症は胃切除歴のない患者にのみ認められ、胃切除歴を有する患者(胃全摘術例を含む)ではGrade 3の低アルブミン血症は認められませんでした。探索的単変量ロジスティック回帰解析では、高齢(65歳以上、p値=0.03*)、ECOG PS不良(1以上、p値=0.04*)がGrade 3の低アルブミン血症と関連しました。また、ベースライン時の血清アルブミンの中央値は、Grade 0-1で4.0 g/dL、Grade 2で3.7 g/dL、Grade 3で3.2 g/dLと、Grade 3の低アルブミン血症を発現した患者は、より低い血清アルブミン値で治療が開始されていました。さらに、ベースラインから最低下時の低下量中央値は、それぞれ0.4、1.1、1.7 g/dLであり、Grade 3でより大きく血清アルブミン値が低下していました。
*:Fisherの正確確率検定

■on-target/off-tumor toxicity及び腹水との関連
Grade 3の低アルブミン血症は、ビロイ®のon-target/off-tumor toxicityと考えられる症状と併発していました。Grade 3の低アルブミン血症例では、四肢浮腫が100%、食欲不振が93%、内視鏡的胃炎が47%、腹水増加又は新規腹水が60%に認められました。一方、Grade 0–2の低アルブミン血症例では、それぞれ33%、53%、17%、13%でした。内視鏡検査は必須ではなく医師の裁量で実施され、Grade 3の低アルブミン血症例のうち内視鏡検査を受けた8例では、7例(87.5%)で胃炎が確認されました。
Grade 3の低アルブミン血症に伴って腹水増加又は新規腹水が認められ、アルブミン最低下時及び回復時の画像評価が可能であった9例中5例(56%)で、血清アルブミン値改善に伴う腹水減少が確認されました。したがって、ビロイ®開始後早期の腹水増加は、必ずしも腹膜病変の進行を意味するのではなく、低アルブミン血症に関連した一過性の体液移動を反映する可能性があります。

Ooki A, et al.: ESMO Gastrointest Oncol. 2026; 13: 100383.より作図
(本論文の著者にアステラス製薬より謝礼金を受領している者が含まれる)

■日常診療でのモニタリング・マネジメント
本研究結果を踏まえた当施設における実践フローを紹介します。ビロイ®関連低アルブミン血症では、治療前のリスク評価、治療開始後早期の血清アルブミン測定、症状を伴う低アルブミン血症への対応、及び腹水変化の慎重な解釈が重要です。
治療開始前には、特に、ベースライン時の血清アルブミン値が低い患者、ECOG PSが1以上の患者、高齢患者、胃切除歴のない患者では、Grade 3の低アルブミン血症発現に注意して、より慎重に経過を確認することが望まれます。
治療開始後は、臨床的に問題となる低アルブミン血症が主にサイクル1-3に発現することを踏まえ、各サイクルDay1の血清アルブミン測定を基本としています。リスクが高い患者や、早期に急速な低下を示す患者では、7-14日以内の再検査を検討します。血清アルブミン値だけでなく、体重、経口摂取量、食欲不振、末梢性浮腫、腹部膨満、消化器症状、ECOG PSの変化を併せて評価することが重要です。低アルブミン血症の重症度とこれらの関連する症状負担の双方に基づきマネジメントしていくことになりますが、最終的な治療方針は、患者の心理的及び身体的状態、治療目標、ならびに全体的なリスク・ベネフィットプロファイルに応じて個別化していくことが必要となります。

Ooki A, et al.: ESMO Gastrointest Oncol. 2026; 13: 100383.より作図
(本論文の著者にアステラス製薬より謝礼金を受領している者が含まれる)

おわりに

当施設における70例の後ろ向き研究から、ビロイ®関連低アルブミン血症は治療開始後早期に高頻度に発現し、約20%がGrade 3に至ることが示されました。Grade 3の低アルブミン血症は浮腫、食欲不振、胃炎及び一過性の腹水増加を伴うことがあり、on-target/off-tumor toxicityとしての胃粘膜障害が関与する可能性があります。ビロイ®治療開始後早期は特に血清アルブミン値に注意し、これらの臨床的に問題となる症状を伴う場合には支持療法及びビロイ®休薬/中止の対応が重要です。
今回ご紹介した内容が、CLDN18.2陽性の治癒切除不能な進行・再発の胃癌診療においてビロイ®を投与する際の一助になりましたら幸いです。

がん研究会有明病院 消化器化学療法科 副部長
大木 暁

臨床試験及び市販直後調査の患者背景

■SPOTLIGHT試験1,2)

【承認時評価資料】国際共同第Ⅲ相試験(SPOTLIGHT試験)(DIR230046、DIR230115、DIR230116)

■GLOW試験2,3)

【承認時評価資料】国際共同第Ⅲ相試験(GLOW試験)(DIR230047、DIR230117、DIR230118)

■市販直後調査9)

ビロイ®点滴静注用100 mg市販直後調査・集計結果の最終報告(副作用集計期間:2024年3月26日~2024年12月11日)

1)【承認時評価資料】国際共同第Ⅲ相試験(SPOTLIGHT試験)(DIR230046)
2)【承認時評価資料】国際共同第Ⅲ相試験(SPOTLIGHT試験、GLOW試験)(DIR230101)
3)【承認時評価資料】国際共同第Ⅲ相試験(GLOW試験)(DIR230047)
4)Shimozaki K, et al.: J Cancer Res Clin Oncol. 2026; 152(1): 16.
5)Yamamoto K, et al.: ESMO Open. 2025; 10(10): 105805.(本論文の著者にアステラス製薬より助成金、コンサルティング料等を受領している者が含まれる)
6)【承認時評価資料】国際共同第Ⅲ相試験(SPOTLIGHT試験)(DIR230115)
7)【承認時評価資料】国際共同第Ⅲ相試験(GLOW試験)(DIR230117)
8)ビロイ®の審査報告書
9)ビロイ®点滴静注用100 mg市販直後調査・集計結果の最終報告(副作用集計期間:2024年3月26日~2024年12月11日)
10)Ooki A, et al.: ESMO Gastrointest Oncol. 2026; 13: 100383.(本論文の著者にアステラス製薬より謝礼金を受領している者が含まれる)
11)Shimozaki K, et al.: ESMO Gastrointest Oncol. 2025; 7: 100128.

本剤をより安全にご使用いただくため、ビロイ®適正使用ガイド及び副作用マネジメントガイドも併せてご参照ください。

製品のご使用にあたっては、最新の電子化された添付文書をご参照ください。

VLY-AMN-00034(2026年9月作成)

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