脱水

脱水

Ⅱ.重大な副作用:脱水

  1. 概要
  2. 注意事項
  3. 対処法
  4. 発現状況

Key point

  • スーグラの電子化された添付文書において、脱水は「重大な副作用」、口渇、多尿、頻尿は「その他の副作用」として記載されています。脱水に引き続き脳梗塞を含む血栓・塞栓症等を発現した例が報告されています。
  • 2型糖尿病患者を対象とした製造販売承認時の国内開発臨床試験(併用療法試験を含む)では、調査症例1,669例中、脱水が3例(0.2%)認められました1)
  • 1型糖尿病患者を対象とした製造販売承認時の国内開発臨床試験では、調査症例201例中、脱水が1例(0.5%)認められました1)
  • 高齢2型糖尿病患者を対象とした特定使用成績調査の報告では、安全性解析対象症例8,505例中、脱水が54例(0.63%)認められました2)
  • 2型糖尿病を対象とした長期特定使用成績調査の3年次最終報告では、安全性解析対象症例11,051例中、脱水36例(0.33%)認められました3)
  • 脱水の発現機序は、本剤による尿中グルコース排泄量の増加による浸透圧利尿により尿量が増え、脱水をもたらすと考えられています。
  • 脱水を惹起する兆候として多尿、頻尿の発現、脱水によって惹起される可能性がある兆候として口渇、症候として脳梗塞の発現があります。
  • 口渇、多尿、頻尿、血圧低下等の症状があらわれ脱水が疑われる場合には、休薬や補液等の適切な処置を行ってください。

電子化された添付文書記載内容(抜粋)

注意喚起の設定根拠

重大な副作用4)

市販後のSGLT2阻害剤投与において、脱水及びそれに引き続く脳梗塞を含む血栓・塞栓症等が発現する重篤な症例が集積されたことから、「重大な副作用」の項へ「脱水」を追記し、従来より広範囲の患者に対して注意喚起することとしました。

重要な基本的注意5, 6)

本剤はSGLT2によるグルコース再吸収を阻害するため、尿中グルコース排泄量の増加により尿浸透圧が上昇し、浸透圧利尿によって尿量が増え、体液量に影響を及ぼす可能性があります。
本剤の国内第Ⅱ/Ⅲ相臨床試験では、ヘマトクリットやBUNなどのわずかな増加が認められており、体液量減少に関連する有害事象として最も多くみられたものは口渇でした。多尿、頻尿を来し、脱水症状を起こすおそれがあるため、口渇感等の患者の状態を観察し、脱水、血圧低下等の異常が認められた場合は、休薬や補液等の適切な処置を行ってください。患者に対しては、口渇感等に注意し適度な水分補給を行うよう指導してください。また、潜在的に体液喪失のリスクを有する患者では、脱水や糖尿病性ケトアシドーシス、高浸透圧高血糖症候群、脳梗塞を含む血栓・塞栓症等を未然に防ぐことが大切です。特に高齢者や利尿剤の併用、体内の水分調節に関わる内分泌機能異常、下痢・嘔吐のある血糖コントロール不良の患者に対しては、十分に注意してください。夏場は発汗などにより水分を失いやすいため、特に注意してください。

発現機序

本剤はSGLT2によるグルコース再吸収を阻害するため、尿中グルコース排泄量の増加により尿浸透圧が上昇し、浸透圧利尿によって尿量が増え、体液量に影響を及ぼす可能性があります。

<出典>

  1. スーグラ錠 効能・効果、用法・用量及び使用上の注意改訂のお知らせ(2018年12月) p10. https://amn.astellas.jp/content/dam/jp/amn/jp/ja/di/doc/Pdfs/DocNo201805879_y.pdf
  2. Yokote K, Terauchi Y, NakamuraI, Suganori H. Real-world evidence for the safety of ipragliflozin in elderly Japanese patients with type 2 diabetes mellitus (STELLA-ELDER): final results of a post-marketing surveillance study. Expert Opin Pharmacother. 2016;17(15):1995-2003. (PMID:27477242)[SGL-00598]DOI: 10.1080/14656566.2016.1219341 (COI:著者のうち2名はアステラス製薬株式会社より資金提供を受けている。著者のうち2名はアステラス製薬株式会社の社員である。本研究の実施および本論文の作成にはアステラス製薬株式会社が資金提供を行った。)
  3. Nakamura I, Maegawa H, Tobe K, Uno S. Real-World Evidence for Long-Term Safety and Effectiveness of Ipragliflozin in Japanese Patients with Type 2 Diabetes Mellitus: final Results of a 3-Year Post-Marketing Surveillance Study (STELLA-LONG TERM). 2021;22(3):373-387. (SGL-01031) DOI: 10.1080/14656566.2020.1817388 (COI:著者のうち1名はアステラス製薬株式会社より資金提供を受けている。著者のうち2名はアステラス製薬株式会社の社員である。本研究の実施および本論文の作成にはアステラス製薬株式会社が資金提供を行った。)
  4. スーグラ錠 使用上の注意改訂のお知らせ(2015年1月)https://amn.astellas.jp/content/dam/jp/amn/jp/ja/di/doc/Pdfs/DocNo202210886_y.pdf
  5. スーグラ錠 新医薬品の「使用上の注意」の解説(2018年12月改定)
  6. スーグラ錠 医薬品インタビューフォーム(2023年9月改定(第14版))https://amn.astellas.jp/content/dam/jp/amn/jp/ja/di/sgl/1012/interview.pdf

臨床症状1)

口渇、多尿、頻尿、血圧低下等の症状があらわれたら脱水を疑ってください。

患者指導1)

脱水があらわれることがあるので、適度な水分補給を行うよう指導し、観察を十分に行ってください。口渇、多尿、頻尿、血圧低下等の症状があらわれ脱水が疑われる場合には、休薬や補液等の適切な処置を行ってください。

注意が必要な患者1)

血糖コントロールが極めて不良の患者、高齢者、利尿剤併用患者等は脱水を起こしやすいので注意してください。

<出典>

  1. スーグラ錠 新医薬品の「使用上の注意」の解説 2018年12月改訂

対処法

口渇、多尿、頻尿、血圧低下等の症状があらわれ脱水が疑われる場合には、休薬や補液等の適切な処置を行ってください1)

<出典>

  1. スーグラ錠 25mg, 50mg 電子化された添付文書(第3版)(2022年8月改訂)https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/800126_3969018F1022_1_14

発現頻度

電子化された添付文書

電子添文に記載された副作用発現頻度は以下の通りです。
脱水(0.2%)。口渇、多尿、頻尿、血圧低下等の症状があらわれ脱水が疑われる場合には、休薬や補液等の適切な処置を行ってください。

製造販売承認申請時1)

2型糖尿病患者を対象とした国内臨床試験の調査対象症例数は1,669例で、脱水3例(0.2%)、口渇71例(4.3%)、多尿31例(1.9%)、頻尿145例(8.7%)、脳梗塞2例(0.1%)が発現しました。1型糖尿病を対象とした国内臨床試験の調査対象症例数は201例で、脱水1例(0.5%)、口渇7例(3.5%)、多尿1例(0.5%)、頻尿8例(4.0%)が発現しました。

使用成績調査

高齢者を対象とした特定使用成績調査2)
スーグラの製造販売後3か月間に本剤を最初に処方された65歳以上の日本人2型糖尿病患者全症例を対象とし、2014年4月から2015年7月まで調査(観察期間1年間)を実施しました。安全性解析対象症例数は8,505例(男性4,181 例、女性4,324例)、平均年齢72.3 ± 5.9歳でした。解析対象患者の31.8%は75歳以上でした。脱水54件(0.6%)、口渇61件(0.7%)、多尿15件(0.2%)、頻尿125件(1.5%)、脳梗塞18件(0.2%)が発現しました。

長期使用に関する特定使用成績調査3)
日本人2型糖尿病における製造販売後3年間の長期使用実態下での本剤の安全性及び有効性について、2014年7月17日から2015年10月16日の間に本剤を最初に投与した日本人2型糖尿病患者を対象として調査を実施しました(データカットオフ:2019年9月30日)。安全性解析対象集団は11,051例(男性6,713 例、女性4,338例)、平均年齢56.9 ± 12.2歳でした。脱水36例(0.33%)、口渇35例(0.32%)、多尿303例(2.74%)、頻尿470例(4.25%)、脳梗塞23例(0.21%)が発現しました。

製造販売後調査

インスリン製剤との併用試験
①二重盲検比較試験4)
インスリン製剤単独療法又はインスリン製剤とDPP-4阻害剤との併用(インスリン製剤:中間型、持効型溶解、混合型のいずれか単剤を使用、1日投与量は8単位以上40単位以下)で血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者を対象に、本剤50 mg又はプラセボを1日1回16週間投与しました。併用療法における脱水の発現なし、口渇3例(1.7%)、頻尿8例(4.6%)が発現しました。
②長期継続投与試験5)
上記①二重盲検比較試験終了後、本剤50 mg又は100 mg(増量時)を1日1回36週間(合計52週間)継続投与しました。脱水2例(1.1%)、口渇7例(4.0%)、頻尿15例(8.6%)、脳梗塞1例(0.6%)が発現しました。

GLP-1 受容体作動薬との併用試験6)
GLP-1受容体作動薬単独療法又はGLP-1受容体作動薬とスルホニルウレア剤との併用療法で血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者(103例)を対象に、本剤50 mg又は100 mg(増量時)を1日1回52週間投与しました。脱水の発現なし、口渇6例(5.8%)、頻尿10例(9.7%)、尿量の増加1例(1.0%)、脳梗塞1例(1.0%)が発現しました。

市販直後調査および市販直後調査後の継続安全性監視・情報提供活動結果(2型糖尿病)の報告7)

スーグラの市販直後調査(調査実施期間:2014/4/17~2014/10/6)および市販直後調査後の継続安全性監視・情報提供活動(調査実施期間:2014/10/7~2015/4/16)において、脱水等の体液量減少に関連する事象は162例(165件)報告されました。その内訳は、脱水137件(重篤78件)、ヘマトクリット増加24件(重篤1件)、熱中症4件(重篤4件)でした。その他、口渇208件(重篤1件)、多尿52件、頻尿359件(重篤3件)、脳梗塞45件(重篤45件)、小脳梗塞2件(重篤2件)が報告されました。

市販直後調査(1型糖尿病)の報告8)

スーグラの市販直後調査(調査実施期間:2018/12/21~2019/6/20)において、脱水等の体液量減少に関連する事象は3例(3件)報告されました。その他、口渇3件、頻尿9件、脳梗塞1件(重篤1件)が報告されました。

発現時期

市販直後調査および市販直後調査後の継続安全性監視・情報提供活動結果(2型糖尿病)の報告7)

市販直後調査および市販直後調査後の継続安全性監視・情報提供活動において、不明54件を除く脱水等の体液量減少に関連する事象(111件)の発現時期は中央値50日(1日~283日)で、37%が30日以内に発現していました。

転帰・転帰までの期間

市販直後調査および市販直後調査後の継続安全性監視・情報提供活動結果(2型糖尿病)の報告7)

市販直後調査および市販直後調査後の継続安全性監視・情報提供活動において、転帰不明の30件を除く135件のうち127件(94%)で回復・軽快が確認されています。転帰日が報告された102件の情報に基づくと、事象が発現してから回復・軽快するまでの期間は中央値12.5日(1日~207日)であり、54%が2週間以内に回復・軽快しました。

<出典>

  1. スーグラ錠 効能・効果、用法・用量及び使用上の注意改訂のお知らせ(2018年12月) https://amn.astellas.jp/content/dam/jp/amn/jp/ja/di/doc/Pdfs/DocNo201805879_y.pdf
  2. スーグラ錠 高齢者を対象とした特定使用成績調査(全例調査)最終報告(2016年7月)
  3. Nakamura I, Maegawa H, Tobe K, Uno S. Real-World Evidence for Long-Term Safety and Effectiveness of Ipragliflozin in Japanese Patients with Type 2 Diabetes Mellitus: final Results of a 3-Year Post-Marketing Surveillance Study (STELLA-LONG TERM). 2021;22(3):373-387. (SGL-01031) DOI: 10.1080/14656566.2020.1817388 (COI:著者のうち1名はアステラス製薬株式会社より資金提供を受けている。著者のうち2名はアステラス製薬株式会社の社員である。本研究の実施および本論文の作成にはアステラス製薬株式会社が資金提供を行った。)
  4. Ishihara H, Yamaguchi S, Nakao I, Okitsu A, Asahina S. Efficacy and safety of ipragliflozin as add-on therapy to insulin in Japanese patients with type 2 diabetes mellitus (IOLITE): a multi-centre, randomized, placebo-controlled, double-blind study. Diabetes Obes. Metab. 2016;18(12):1207-1216. (PMID:27436788)[SGL-00611]DOI: 10.1111/dom.12745 (COI:著者のうち1名はアステラス製薬株式会社より資金提供を受けている。著者のうち4名はアステラス製薬株式会社の社員である。本研究の実施および本論文の作成にはアステラス製薬株式会社が資金提供を行った。)
  5. Ishihara H, Yamaguchi S, Nakao I, Okitsu A, Asahina S, Sakatani T. Efficacy and safety of ipragliflozin as add-on therapy to insulin in Japanese patients with type 2 diabetes mellitus (IOLITE): a 36-week, open-label extension of a 16-week, randomized, placebo-controlled, double-blind study. Diabetol. Int. 2019;10(1):37-50 (PMID:30800562)[SGL-00836]DOI: 10.1007/s13340-018-0359-x (COI:著者のうち1名はアステラス製薬株式会社より資金提供を受けている。著者のうち5名はアステラス製薬株式会社の社員である。本研究の実施および本論文の作成にはアステラス製薬株式会社が資金提供を行った。)
  6. Ishihara H, Yamaguchi S, Nakao I, Sakatani T. Ipragliflozin Add-on Therapy to a GLP-1 Receptor Agonist in Japanese Patients with Type 2 Diabetes (AGATE): A 52-Week Open-Label Study. Diabetes Ther. 2018;9(4):1549-1567. (PMID:29926400)[SGL-00833]DOI: 10.1007/s13300-018-0455-8 (COI:著者のうち1名はアステラス製薬株式会社より資金提供を受けている。著者のうち3名はアステラス製薬株式会社の社員である。本研究の実施および本論文の作成にはアステラス製薬株式会社が資金提供を行った。)
  7. スーグラ錠 市販直後調査および市販直後調査後の継続安全性監視・情報提供活動結果のご報告(2型糖尿病) https://amn.astellas.jp/content/dam/jp/amn/jp/ja/di/sgl/1012/shihangochousa_200023401.pdf
  8. スーグラ錠 市販直後調査結果のご報告(1型糖尿病)https://amn.astellas.jp/content/dam/jp/amn/jp/ja/di/sgl/1012/shihangochousa_200027395.pdf

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