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低血糖

低血糖

Ⅱ.重大な副作用:低血糖

  1. 概要
  2. 注意事項
  3. 対処法
  4. 発現状況

Key point

  • スーグラの電子化された添付文書において、低血糖は「重大な副作用」として記載されています。
  • 2型糖尿病患者を対象とした製造販売承認時の国内開発臨床試験(併用療法試験を含む)では、調査症例1,669例中、低血糖が9例(0.5%)、無自覚性低血糖が1例(0.1%)認められました1)
  • 1型糖尿病患者を対象とした製造販売承認時の国内開発臨床試験では、調査症例201例中、低血糖が196例(97.5%)認められました1)
  • 高齢2型糖尿病患者を対象とした特定使用成績調査の報告では、安全性解析対象症例8,505例中、低血糖が58件(0.68%)認められました2)
  • 2型糖尿病患者を対象とした長期特定使用成績調査の3年次最終報告では、安全性解析対象症例11,051例中、低血糖が57例(0.52%)認められました3)
  • 低血糖の発現機序は不明です。インスリン製剤、スルホニルウレア剤又は速効型インスリン分泌促進剤と併用する場合には、これらの薬剤による低血糖のリスクが増加するおそれがあります。
  • 低血糖症状が認められた場合には、糖質を含む食品を摂取するなど適切な処置を行ってください。ただし、α-グルコシダーゼ阻害剤との併用により低血糖症状が認められた場合にはブドウ糖を投与してください。

電子化された添付文書記載内容(抜粋)

注意喚起の設定根拠

重大な副作用4)

承認申請時の臨床試験においては重篤なものはありませんでしたが、本剤との関連性が否定されなかった低血糖は認められており、市販後に重篤な転帰に至る低血糖の発現が否定できないことから、重大な副作用の項に記載しました。

重要な基本的注意5)

患者に対しては、低血糖症状及びその対処方法について十分な説明が必要です。特に、インスリン製剤、スルホニルウレア剤又は速効型インスリン分泌促進剤と併用する場合には、これらの薬剤による低血糖のリスクが増加するおそれがあります。また、GLP-1受容体作動薬との併用試験においても低血糖が認められています。これらの薬剤と併用する場合には、これらの薬剤の減量を検討する必要があります。
本剤投与により、低血糖症状が起こるおそれがあることから、高所作業、自動車の運転等に従事している患者に投与する際には注意が必要です。

発現機序

本剤投与による低血糖の発現機序は不明です。SGLT2阻害薬単独では低血糖を起こしにくいとされていますが6)、作用機序の異なる糖尿病用薬(特に、スルホニルウレア剤、速効型インスリン分泌促進剤、インスリン製剤)の併用により、血糖降下作用が相加的に増強されるおそれがあります。

<出典>

  1. スーグラ錠 効能・効果、用法・用量及び使用上の注意改訂のお知らせ(2018年12月) https://amn.astellas.jp/content/dam/jp/amn/jp/ja/di/doc/Pdfs/DocNo201805879_y.pdf
  2. Yokote K, Terauchi Y, NakamuraI, Suganori H. Real-world evidence for the safety of ipragliflozin in elderly Japanese patients with type 2 diabetes mellitus (STELLA-ELDER): final results of a post-marketing surveillance study. Expert Opin Pharmacother. 2016;17(15):1995-2003. (PMID:27477242)[SGL-00598]DOI: 10.1080/14656566.2016.1219341 (COI:著者のうち2名はアステラス製薬株式会社より資金提供を受けている。著者のうち2名はアステラス製薬株式会社の社員である。本研究の実施および本論文の作成にはアステラス製薬株式会社が資金提供を行った。)
  3. Nakamura I, Maegawa H, Tobe K, Uno S. Real-World Evidence for Long-Term Safety and Effectiveness of Ipragliflozin in Japanese Patients with Type 2 Diabetes Mellitus: final Results of a 3-Year Post-Marketing Surveillance Study (STELLA-LONG TERM). 2021;22(3):373-387. (SGL-01031) DOI: 10.1080/14656566.2020.1817388 (COI:著者のうち1名はアステラス製薬株式会社より資金提供を受けている。著者のうち2名はアステラス製薬株式会社の社員である。本研究の実施および本論文の作成にはアステラス製薬株式会社が資金提供を行った。)
  4. スーグラ錠 新医薬品の「使用上の注意」の解説(2018年12月改定)
  5. スーグラ錠 医薬品インタビューフォーム(2023年9月改定(第14版))
    https://amn.astellas.jp/content/dam/jp/amn/jp/ja/di/sgl/1012/interview.pdf
  6. コンセンサスステートメント 2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム(第2版) 糖尿病 2023;66(10):715-733. http://www.jds.or.jp/uploads/files/article/tonyobyo/66_715.pdf

臨床症状1)

血糖値が正常の範囲を超えて急速に降下した結果、交感神経刺激症状として、発汗、不安、動悸、頻脈、手指振戦、顔面蒼白などの症状があらわれます。また、中枢神経症状として、血糖値が50 mg/dL程度に低下した際に頭痛、眼のかすみ、空腹感、眠気(生あくび)などの症状があらわれ、50 mg/dL以下ではさらに意識レベルの低下、異常行動、けいれんなどが出現し昏睡に陥ります。

患者指導

患者に対しては、低血糖症状及びその対処方法について十分説明してください。特に、インスリン製剤、スルホニルウレア剤又は速効型インスリン分泌促進剤と併用する場合には、これらの薬剤による低血糖のリスクが増加するおそれがあります。また、GLP-1受容体作動薬との併用試験においても低血糖が認められています。これらの薬剤と併用する場合には、これらの薬剤の減量を検討してください。

注意が必要な患者2, 3)

低血糖を起こすおそれのある以下の患者又は状態に注意してください。

  • 脳下垂体機能不全又は副腎機能不全を有する患者:グルココルチコイド分泌不全により血糖値が下がった際に十分な血糖値の回復ができず低血糖のリスクを増大させ、また、低血糖に至ると遷延する可能性があります。
  • 栄養不良状態、るいそう、飢餓状態、不規則な食事摂取、食事摂取量の不足又は衰弱状態の患者:本剤は尿中へのグルコース排出を促進するため体重を減少させることがあります。体重減少は一般には糖尿病治療において好ましい作用となりますが、本項に該当する患者に対しては栄養不良状態を悪化させるおそれがあります。また、栄養不良状態、るいそう、飢餓状態、不規則な食事摂取、食事摂取量の不足又は衰弱状態では、肝臓におけるグルコースの貯蔵が十分に行われず、そのため本剤の作用により血糖値が低下した場合、血糖値を回復させるだけのグルコースを生成できずに、低血糖を起こすおそれがあります。
  • 激しい筋肉運動を行った状態:筋肉運動の際に筋肉での糖利用が肝臓からの糖放出を上回ると血糖値が低下し、低血糖を起こすおそれがあります。
  • 過度にアルコールを摂取した状態:アルコールは肝臓における糖新生を抑制する作用があり、過度のアルコール摂取者では本剤によって血糖を低下させた際に十分なグルコース生成ができずに低血糖に至る可能性があります。

<出典>

  1. 日本糖尿病学会編・著 8. 低血糖およびシックデイ 糖尿病治療ガイド2022-2023, 98.
  2. スーグラ錠 新医薬品の「使用上の注意」の解説(2018年12月改定)
  3. スーグラ錠 医薬品インタビューフォーム(2023年9月改定(第14版))https://amn.astellas.jp/content/dam/jp/amn/jp/ja/di/sgl/1012/interview.pdf

対処法1)

低血糖症状が認められた場合には、糖質を含む食品を摂取するなど適切な処置を行ってください。ただし、α-グルコシダーゼ阻害剤との併用により低血糖症状が認められた場合にはブドウ糖を投与してください。

<出典>

  1. スーグラ錠 25mg, 50mg 電子化された添付文書(第3版)(2022年8月改訂)https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/800126_3969018F1022_1_14

発現頻度

電子化された添付文書

電子添文に記載された副作用発現頻度は以下の通りです。

  • 重大な副作用としての低血糖の頻度は1.0%注1)

注1)承認時までの国内の臨床試験(他の糖尿病薬と併用しない場合)の試験結果に基づいている。

製造販売承認申請時1)

2型糖尿病患者を対象とした国内臨床試験の調査対象症例数は1,669例で、低血糖症9例(0.5%)、無自覚性低血糖1例(0.1%)でした。1型糖尿病を対象とした国内臨床試験の調査対象症例数は201例で、低血糖症196例(97.5%)でした。

使用成績調査

  1. 高齢者を対象とした特定使用成績調査2)
    スーグラの製造販売後3か月間に本剤を最初に処方された65歳以上の日本人2型糖尿病患者全症例を対象とし、2014年4月から2015年7月まで調査(観察期間1年間)を実施しました。安全性解析対象症例数は8,505例(男性4,181 例、女性4,324例)、平均年齢72.3 ± 5.9歳でした。解析対象患者の31.8%は75歳以上でした。低血糖は58例(0.68%)に発現し、2例(0.02%)が重篤でした。
  2. 長期使用に関する特定使用成績調査3)
    日本人2型糖尿病における製造販売後3年間の長期使用実態下での本剤の安全性及び有効性について、2014年7月17日から2015年10月16日の間に本剤を最初に投与した日本人2型糖尿病患者を対象として調査を実施しました(データカットオフ:2019年9月30日)。安全性解析対象集団は1,1051例(男性6,713例、女性4,338例)、平均年齢56.9 ± 12.2歳でした。低血糖は57例(0.52%)に発現し、4例(0.04%)が重篤でした。

製造販売後調査

  1. インスリン製剤との併用試験
    ①二重盲検比較試験4)
    インスリン製剤単独療法又はインスリン製剤とDPP-4阻害剤との併用(インスリン製剤:中間型、持効型溶解、混合型のいずれか単剤を使用、1日投与量は8単位以上40単位以下)で血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者を対象に、本剤50 mg又はプラセボを1日1回16週間投与しました。併用療法における低血糖症状の副作用発現割合は本剤50 mg及びプラセボでそれぞれ29.7%(175例中52例)、14.9%(87例中13例)でした。
    ②長期継続投与試験5)
    上記①二重盲検比較試験終了後、本剤50 mg又は100 mg(増量時)を1日1回36週間(合計52週間)継続投与しました。低血糖症状の副作用発現割合は36.0%(175例中63例)でした。

  2. GLP-1受容体作動薬との併用試験6)
    GLP-1受容体作動薬単独療法又はGLP-1受容体作動薬とスルホニルウレア剤との併用療法で血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者(103例)を対象に、本剤50 mg又は100 mg(増量時)を1日1回52 週間投与しました。低血糖症状の副作用発現割合は8.7%(103例中9例)でした。

市販直後調査および市販直後調査後の継続安全性監視・情報提供活動結果(2型糖尿病)の報告7)

スーグラの市販直後調査(調査実施期間:2014/4/17~2014/10/6)および市販直後調査後の継続安全性監視・情報提供活動(調査実施期間:2014/10/7~2015/4/16)において、低血糖の副作用は253例(304件)報告され、そのうち重篤な低血糖は20例でした。

市販直後調査(1型糖尿病)の報告8)

スーグラの市販直後調査(調査実施期間:2018/12/21~2019/6/20)において、低血糖の副作用は45例(45件)報告され、そのうち重篤な低血糖は2例でした。

発現時期

市販直後調査および市販直後調査後の継続安全性監視・情報提供活動結果の報告7)

不明73件を除く231件の発現時期は中央値37日(1日~254日)で、45%が30日以内に発現していました。

転帰までの期間

市販直後調査および市販直後調査後の継続安全性監視・情報提供活動結果の報告7)

転帰不明の25件を除く279件全件で回復・軽快が確認されています。転帰日が報告された228件の情報に基づくと、事象が発現してから回復・軽快するまでの期間は中央値3日(1日~171日)であり、61%が2週間以内に回復・軽快していました。

<出典>

  1. スーグラ錠 効能・効果、用法・用量及び使用上の注意改訂のお知らせ(2018年12月)  https://amn.astellas.jp/content/dam/jp/amn/jp/ja/di/doc/Pdfs/DocNo201805879_y.pdf
  2. Yokote K, Terauchi Y, NakamuraI, Suganori H. Real-world evidence for the safety of ipragliflozin in elderly Japanese patients with type 2 diabetes mellitus (STELLA-ELDER): final results of a post-marketing surveillance study. Expert Opin Pharmacother. 2016;17(15):1995-2003. (PMID:27477242)[SGL-00598]DOI: 10.1080/14656566.2016.1219341 (COI:著者のうち2名はアステラス製薬株式会社より資金提供を受けている。著者のうち2名はアステラス製薬株式会社の社員である。本研究の実施および本論文の作成にはアステラス製薬株式会社が資金提供を行った。)
  3. Nakamura I, Maegawa H, Tobe K, Uno S. Real-World Evidence for Long-Term Safety and Effectiveness of Ipragliflozin in Japanese Patients with Type 2 Diabetes Mellitus: final Results of a 3-Year Post-Marketing Surveillance Study (STELLA-LONG TERM). 2021;22(3):373-387. (SGL-01031) DOI: 10.1080/14656566.2020.1817388 (COI:著者のうち1名はアステラス製薬株式会社より資金提供を受けている。著者のうち2名はアステラス製薬株式会社の社員である。本研究の実施および本論文の作成にはアステラス製薬株式会社が資金提供を行った。)
  4. Ishihara H, Yamaguchi S, Nakao I, Okitsu A, Asahina S. Efficacy and safety of ipragliflozin as add-on therapy to insulin in Japanese patients with type 2 diabetes mellitus (IOLITE): a multi-centre, randomized, placebo-controlled, double-blind study. Diabetes Obes. Metab. 2016;18(12):1207-1216. (PMID:27436788)[SGL-00611]DOI: 10.1111/dom.12745 (COI:著者のうち1名はアステラス製薬株式会社より資金提供を受けている。著者のうち4名はアステラス製薬株式会社の社員である。本研究の実施および本論文の作成にはアステラス製薬株式会社が資金提供を行った。)
  5. Ishihara H, Yamaguchi S, Nakao I, Okitsu A, Asahina S, Sakatani T. Efficacy and safety of ipragliflozin as add-on therapy to insulin in Japanese patients with type 2 diabetes mellitus (IOLITE): a 36-week, open-label extension of a 16-week, randomized, placebo-controlled, double-blind study. Diabetol. Int. 2019;10(1):37-50 (PMID:30800562)[SGL-00836]DOI: 10.1007/s13340-018-0359-x (COI:著者のうち1名はアステラス製薬株式会社より資金提供を受けている。著者のうち5名はアステラス製薬株式会社の社員である。本研究の実施および本論文の作成にはアステラス製薬株式会社が資金提供を行った。)
  6. Ishihara H, Yamaguchi S, Nakao I, Sakatani T. Ipragliflozin Add-on Therapy to a GLP-1 Receptor Agonist in Japanese Patients with Type 2 Diabetes (AGATE): A 52-Week Open-Label Study. Diabetes Ther. 2018;9(4):1549-1567. (PMID:29926400)[SGL-00833]DOI: 10.1007/s13300-018-0455-8 (COI:著者のうち1名はアステラス製薬株式会社より資金提供を受けている。著者のうち3名はアステラス製薬株式会社の社員である。本研究の実施および本論文の作成にはアステラス製薬株式会社が資金提供を行った。)
  7. スーグラ錠 市販直後調査および市販直後調査後の継続安全性監視・情報提供活動結果のご報告(2型糖尿病) https://amn.astellas.jp/content/dam/jp/amn/jp/ja/di/sgl/1012/shihangochousa_200023401.pdf
  8. スーグラ錠 市販直後調査結果のご報告(1型糖尿病)https://amn.astellas.jp/content/dam/jp/amn/jp/ja/di/sgl/1012/shihangochousa_200027395.pdf

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