本ページに掲載の臨床試験には一部承認外の内容が含まれますが、ゾスパタの薬物相互作用及び安全性に関する情報提供及び注意喚起のためご紹介します。
本ページに掲載の臨床試験には一部承認外の内容が含まれますが、ゾスパタの薬物相互作用及び安全性に関する情報提供及び注意喚起のためご紹介します。
ゾスパタ(一般名:ギルテリチニブフマル酸塩、以下ギルテリチニブ)は、再発又は難治性のFLT3遺伝子変異陽性の急性骨髄性白血病(AML)に対する治療に用いられる薬剤であり1)、移植後維持療法期をはじめとする治療過程において抗真菌剤等の薬剤と併用されるケースがあります2)。ギルテリチニブは主にCYP3A4により代謝され3)、また、P-糖蛋白質(P-gp)の基質であることから4)、これらを誘導あるいは阻害する薬剤との併用によりギルテリチニブの血中濃度が変化する可能性があります。そのため、薬物相互作用(Drug-Drug-Interaction:DDI)に注意が必要です。本ページでは、ギルテリチニブの薬物動態をふまえながら、DDIや安全性について包括的にご紹介します。
CYP(Cytochrome P450)は主に肝臓に発現し、薬物などの生体外物質(異物)を代謝する第一相反応酵素です5)。CYPは薬物などの投与により発現が誘導されたり、薬物に阻害されたりすることがあり、DDIの原因となることが多いとされます6)。一方、P-gpは消化管粘膜や血液脳関門などに発現し、薬物を細胞外へ排出するトランスポーターです7)。ギルテリチニブは主にCYP3A4により代謝され3)、また、P-gpの基質であることから4)、これらを誘導する薬剤と併用するとギルテリチニブの曝露量が減少し、反対に、これらを阻害する薬剤と併用するとギルテリチニブの曝露量が増加する可能性があります。
電子化された添付文書ではギルテリチニブとの併用に注意が必要な薬剤について以下のように記載されています1)。
10. 相互作用
ギルテリチニブは主としてCYP3A4により代謝される。また、P-糖蛋白質(P-gp)の基質である。
10.2 併用注意(併用に注意すること)(抜粋)
ただし、強いCYP3A阻害作用及びP-gp阻害作用を有する薬剤との併用時におけるギルテリチニブの減量について、推奨される具体的な方法は電子化された添付文書には記載されておりません。
以降では、このような併用注意の背景となったギルテリチニブの薬物動態データをご紹介します。
6. 用法及び用量
通常、成人にはギルテリチニブとして120mgを1日1回経口投与する。なお、患者の状態により適宜増減するが、1日1回200mgを超えないこと。
平均値(標準偏差)
a)中央値(最小値-最大値)。N=1の場合、算出せず。
PKAS:薬物動態解析対象集団
6. 用法及び用量
通常、成人にはギルテリチニブとして120mgを1日1回経口投与する。なお、患者の状態により適宜増減するが、1日1回200mgを超えないこと。
● 薬物相互作用試験:イトラコナゾール、フルコナゾール、リファンピシン併用時のギルテリチニブの薬物動態プロファイル(健康成人、外国人データ)9,10)
CYP3A阻害作用の強度は薬剤によって異なり、CYP3A阻害剤の代表例は『医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン』に記載されています11)。イトラコナゾールは強いCYP3A阻害作用及びP-gp阻害作用を有する薬剤の代表11)として、薬物相互作用試験においてギルテリチニブの薬物動態に対する影響が評価されました9)。また、同試験では中程度のCYP3A阻害作用を有する薬剤であるフルコナゾール、CYP3A誘導作用及びP-gp誘導作用を有する薬剤であるリファンピシン12)併用時の影響についても評価されました9)。
ギルテリチニブ単独投与群に対する併用群のCmax及びAUCinfの幾何平均比は、イトラコナゾール併用群では119.80%及び221.39%、フルコナゾール併用群では115.73%及び143.46%、リファンピシン併用群では73.44%及び28.47%でした(図2、表2)9,10)。
6. 用法及び用量
通常、成人にはギルテリチニブとして120mgを1日1回経口投与する。なお、患者の状態により適宜増減するが、1日1回200mgを超えないこと。
投与群を固定効果、被験者をランダム効果と設定した混合モデルを用い、対数変換した薬物動態パラメータに対する解析を行った。投与群間の対数変換した薬物動態パラメータの最小二乗平均の差及びその90%信頼区間を元のスケールに逆変換し比として表した。リファンピシン+ギルテリチニブ併用群では、投与量で補正した薬物動態パラメータを用いて評価した。
a)1日目にイトラコナゾール200mgを2回経口投与後、2~28日目にイトラコナゾール200mgを1日1回朝経口投与、6日目にギルテリチニブ10mgを単回経口投与
b)1日目にフルコナゾール400mgを1回経口投与後、2~28日目にフルコナゾール200mgを1日1回朝経口投与、6日目にギルテリチニブ10mgを単回経口投与
c)1~21日目にリファンピシン600mgを1日1回朝経口投与、8日目にギルテリチニブ20mgを単回経口投与
PKAS:薬物動態解析対象集団
6. 用法及び用量
通常、成人にはギルテリチニブとして120mgを1日1回経口投与する。なお、患者の状態により適宜増減するが、1日1回200mgを超えないこと。
健康成人において、強力なCYP3A阻害剤との併用によって、ギルテリチニブの曝露量は約2.2倍に増加し、強力なCYP3A誘導剤の併用によってギルテリチニブの曝露量は約70%の低下が認められました。
実臨床では、ギルテリチニブとCYP3A阻害作用を有する薬剤が併用されるケースがあります。臨床試験で検討されたギルテリチニブとCYP3A阻害剤との併用データを以下にご紹介します。
● 海外第Ⅰ/Ⅱ相試験(CHRYSALIS試験):CYP3A阻害剤がギルテリチニブの薬物動態に及ぼす影響(外国人データ)13,14)
海外第Ⅰ/Ⅱ相試験(CHRYSALIS試験)は、再発又は難治性のAML患者252例を対象とした多施設共同、非盲検、用量漸増/用量拡大試験です13)。本試験では、強いCYP3A4の阻害剤又は誘導剤の併用治療を必要とする患者は除外されましたが、例外として移植後の標準治療、感染症予防や治療のために使用される抗生剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤等の併用は許可されました15)。
本試験の組み入れ患者の約70%で強いCYP3A阻害剤(ボリコナゾール又はポサコナゾール)、又は中程度のCYP3A阻害剤(フルコナゾール)が併用されました16)。具体的な投与量は明らかにされていませんが、ギルテリチニブ120mg群では以下の抗真菌剤が併用されました(表3)17)。
本試験では、ギルテリチニブのトラフ濃度データをCYP3A阻害剤の併用状況別に分類して評価しました(図3)。中程度又は強いCYP3A阻害剤と併用した患者では、併用しなかった患者と比べてギルテリチニブの曝露量が増加する傾向が示されたものの、増加の程度は2倍未満でした16)。
6. 用法及び用量
通常、成人にはギルテリチニブとして120mgを1日1回経口投与する。なお、患者の状態により適宜増減するが、1日1回200mgを超えないこと。
● 母集団薬物動態解析
CYP3A阻害剤の併用がギルテリチニブの曝露量に与える影響を母集団薬物動態解析モデルから評価したところ、CL/F(経口投与時のクリアランス)の低下は、強いCYP3A阻害剤の併用で25%、中程度のCYP3A阻害剤の併用で21%であり、ギルテリチニブの曝露量の顕著な増加を示唆するものではありませんでした18)。
● CYP3A阻害剤併用の有無とギルテリチニブの有害事象発現状況(安全性併合解析)
上記のデータで示されるように、ギルテリチニブは強いCYP3A阻害剤と併用することで薬物動態が変化し、全身曝露が増加する可能性があります。再発又は難治性のAML患者を対象とした海外第Ⅰ/Ⅱ相試験、国内第Ⅰ相試験及び国際共同第Ⅲ相試験でギルテリチニブを1回以上投与された患者集団(併合R/R AML安全性解析対象集団)を、強いCYP3A阻害剤を併用しなかった患者(併用なし:245/444例)又は強いCYP3A阻害剤を併用した患者(併用あり:199/444例)に分類し、有害事象の発現割合を比較しました(表4)19,20)。ギルテリチニブ群全体及びギルテリチニブ120mg群における全有害事象の発現割合は98.5~99.2%でした。また、ギルテリチニブ120mg群における副作用の発現割合は、併用なしで81.8%(112/137例)、併用ありで82.7%(86/104例)でした20)。
ギルテリチニブ120mg群では、強いCYP3A阻害剤の併用の有無による有害事象発現割合の差は、発熱性好中球減少症及び下痢を除いていずれも10%未満でした(表4)。発熱性好中球減少症及び下痢は、強いCYP3A4阻害剤を併用しなかった患者よりも併用した患者で発現割合が10%以上高くなっていました20)。ただし、これらの事象に関する副作用の発現割合の差は1.1%以下でした(発熱性好中球減少症:併用なし 11.7%、併用あり 10.6%;下痢:併用なし 11.7%、併用あり 12.5%)21)。
MedDRA/J V19.1
n(%)、AST:アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、ALT:アラニンアミノトランスフェラーゼ
6. 用法及び用量
通常、成人にはギルテリチニブとして120mgを1日1回経口投与する。なお、患者の状態により適宜増減するが、1日1回200mgを超えないこと。
これらの結果に基づき、CYP3A阻害剤との併用に際してギルテリチニブの用量調整を実施する必要はないと考えられました18)。このため、中程度又は強いCYP3A阻害剤を併用する際のギルテリチニブの減量基準は設けられていません。ただし、強いCYP3A阻害剤との併用には注意が必要です。
薬物代謝を担うCYPの基質特異性は低く、一つの酵素が多数の薬物を代謝します22)。CYPで代謝される薬物を複数併用すると、決まった量の酵素に対して競合するため、薬物の代謝が単独投与時に比べて遅くなり、血漿中濃度が上昇することがあります22)。
実臨床では、ギルテリチニブとCYP3Aの基質となる薬剤(タクロリムス、ルキソリチニブなど)が併用されるケースがみられます。臨床試験ではこれらの薬剤の代わりに、CYP3Aの基質となる代表的な薬剤(指標薬)の一つであるミダゾラム11)とギルテリチニブとの相互作用が検討されました。そのデータを以下にご紹介します。
● 海外第Ⅰ/Ⅱ相試験(CHRYSALIS試験):ギルテリチニブがCYP3A基質であるミダゾラムの薬物動態に及ぼす影響(外国人データ)23)
ギルテリチニブの海外第Ⅰ/Ⅱ相試験では、再発又は難治性のAML患者16例を対象に、ギルテリチニブがCYP3A基質であるミダゾラムの薬物動態に及ぼす影響が検討されました23)。ギルテリチニブ300mgを1日1回反復経口投与し、ギルテリチニブ投与開始前日及び投与開始15日目にミダゾラム注)2mgを単回経口投与しました23)。ミダゾラム単独投与時に対するギルテリチニブ併用時のミダゾラムのCmax及びAUC24の幾何平均比(90%信頼区間、それぞれ9例及び8例)はそれぞれ、111.64%(69.54-179.25%)及び109.46%(49.82-240.48%)でした23)。ミダゾラムとギルテリチニブの併用により、ミダゾラムの曝露量はミダゾラム単独投与時よりも約10%増加したものの、明らかなDDIはみられませんでした23)。
注)経口剤国内未承認
以上のことから、ギルテリチニブを併用した際のCYP3A基質との競合的阻害作用やCYP3A誘導能は限定的でした。
【参考】ギルテリチニブに併用される機会が多いCYP3A阻害剤及びCYP3Aの基質となる薬剤
ギルテリチニブはAMLの移植後維持療法期をはじめとする治療過程において使用され、免疫抑制剤や抗真菌剤、抗ウイルス剤等と併用されるケースがあります2)。海外第Ⅰ/Ⅱ相試験(CHRYSALIS試験)では、組み入れ患者の約70%で強いCYP3A阻害剤であるボリコナゾール又はポサコナゾール、あるいは中程度のCYP3A阻害剤であるフルコナゾールが併用されていました16)。
ギルテリチニブと併用する可能性が高い薬剤のうち、薬物相互作用試験が行われたCYP3A阻害剤はイトラコナゾール及びフルコナゾールのみであり、それ以外の薬剤との相互作用試験データは報告されていません(2025年5月時点)。
CYP3A阻害剤や基質となる薬剤等で、ギルテリチニブに併用される機会が多いものの例を以下にご紹介します。CYP3A阻害作用の強さに応じて併用にご注意ください。
※ 『医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン』における阻害の程度の定義は以下のとおりです11)。
強い阻害剤:AUCを5倍以上に上昇(CL/Fが1/5以下に減少)させると考えられる阻害剤
中程度の阻害剤:AUCを2倍以上5倍未満に上昇(CL/Fが1/5から1/2以下に減少)させると考えられる阻害剤
なお、薬物相互作用試験が実施されていないCYP3A阻害剤とギルテリチニブの併用を検討する際は、以下の点を確認することが重要です。
■併用薬のCYP3A阻害作用の強度
■CYP3A以外に併用薬が影響を与える可能性のある代謝経路やトランスポーターの存在
■併用薬の投与経路、など
ゾスパタの承認された効能又は効果、用法及び用量は以下のとおりです。
4. 効能又は効果
再発又は難治性のFLT3遺伝子変異陽性の急性骨髄性白血病
6. 用法及び用量
通常、成人にはギルテリチニブとして120mgを1日1回経口投与する。なお、患者の状態により適宜増減するが、1日1回200mgを超えないこと。
詳細は電子化された添付文書をご参照ください。
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