まとめ
- FLT3(FMS-Like Tyrosine Kinase 3)遺伝子は染色体上13q12に位置し1)、主に骨髄系及びリンパ系の造血幹細胞や前駆細胞集団で発現する4,5)FLT3受容体のタンパク質をコードする遺伝子である。
- FLT3受容体は、受容体型チロシンキナーゼであり、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、膜近傍ドメイン、2つのチロシンキナーゼドメインとキナーゼ挿入ドメインで構成される10)。
- 通常、FLT3受容体は単量体で存在するが、FLT3リガンドが細胞外ドメインに結合すると二量体を形成し、自己リン酸化を介して活性型となり、チロシンキナーゼ活性が誘導されることで下流に存在する細胞内シグナル伝達経路が活性化され、血液細胞の増殖、アポトーシスの抑制に働く11)。
- FLT3遺伝子変異は主に、膜近傍ドメインの遺伝子配列が重複するITD変異、又はチロシンキナーゼドメインにミスセンス変異が起こるTKD変異の2つであり、いずれの変異によってもFLT3受容体がリガンド非依存性に二量体化を形成、又はトランスリン酸化し、恒常的に活性化することで、細胞増殖や生存のシグナル伝達が促進する14)。
- FLT3遺伝子変異は、日本人AML患者の約25%に存在し13)、特に正常核型AMLで多い14)。
- FLT3遺伝子変異陽性例では陰性例よりも寛解期間及び生存期間が短く、特にFLT3-ITD変異で予後が悪化する22)。
- FLT3遺伝子変異は、NPM1遺伝子変異、DNMT3A遺伝子変異と重複することが報告されているが13)、NPM1遺伝子変異、DNMT3A遺伝子変異の両方を有する場合に、FLT3-ITD変異による予後悪化効果が有意となった23)。
- FLT3遺伝子変異はAML患者の臨床転帰に影響することから、遺伝子プロファイリング検査によってがんドライバー遺伝子を確認することが重要であり、また、治療前後でステータスが変化する可能性があるため24)、診断時のみならず、再発・難治性となるごとに遺伝子プロファイリング検査を実施することが重要といえる25)。