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中枢性甲状腺機能低下症

中枢性甲状腺機能低下症

Ⅱ.重大な副作用:中枢性甲状腺機能低下症

  1. 概要
  2. 注意事項
  3. 対処法
  4. 発現状況

Key point

  • エベレンゾ投与中に血中甲状腺刺激ホルモン(TSH)が正常範囲内又は低値を示す中枢性甲状腺機能低下症があらわれることがあります。エベレンゾの電子化された添付文書において、中枢性甲状腺機能低下症を「重大な副作用」として注意喚起しています。
  • エベレンゾ投与中は定期的に甲状腺機能検査(TSH、遊離T3、遊離T4)を行うなど、患者の状態を十分に観察してください。
  • エベレンゾ投与により中枢性甲状腺機能低下症の症状や徴候があらわれた場合には、必要に応じて投与の中止、甲状腺ホルモン製剤の投与注)などの適切な処置を行ってください。
  • 注)エベレンゾの投与中止により、中枢性甲状腺機能低下症の回復がみられた報告があります。甲状腺ホルモン製剤の投与に当たっては、真に甲状腺機能低下症の臨床所見があるか否か、また薬剤性であるか否かを慎重に検討してください。

電子化された添付文書記載内容(抜粋)

注意喚起の設定根拠

重大な副作用

市販後において症例が集積されたため、重大な副作用に設定しました1)

重要な基本的注意

中枢性甲状腺機能低下症は、投与開始後約2週間であらわれたとの報告もあることから、「重要な基本的注意」の項にその旨と、「本剤投与中は定期的に甲状腺機能検査(TSH、遊離T3、遊離T4)を行うなど、患者の状態を十分に観察する」旨を記載しました1)

発現機序

エベレンゾ投与により中枢性甲状腺機能低下症が発現する機序は、十分に解明されていません。
しかし、エベレンゾは、甲状腺ホルモン受容体(TR)レポーターアッセイにおいて、TRβに対して弱いながらアゴニスト活性を有する可能性が示されています2-4)。TRβは、TSH放出ホルモン(TRH)を放出する視床下部や、TSHを放出する下垂体にも存在します。視床下部-下垂体-甲状腺系には、ネガティブフィードバック機構が存在し、血中のTSHや甲状腺ホルモン濃度が制御されています。エベレンゾが中枢のTRβにアゴニストとして作用し、ネガティブフィードバック機構が働いた結果、TSH分泌抑制、甲状腺ホルモン(遊離T4等)低下が発現する可能性は否定できません。

<出典>

  1. エベレンゾ錠 使用上の注意改訂のお知らせ(2022年11月)
    https://amn.astellas.jp/content/dam/jp/amn/jp/ja/di/doc/Pdfs/DocNo202211268_y.pdf
  2. エベレンゾ錠 申請資料概要 2.6.2.1.2.1 副次的薬理試験 in vitro試験 (DIR190057)
  3. エベレンゾ錠 申請資料概要 2.6.2.3 副次的薬理試験. (DIR200125)
  4. Yao B, et al. iScience. 2019;20(2589-0042):489-496. (EVZ-00506)

臨床症状1)

主な症状として、

  • 無気力、易疲労感
  • 眼瞼浮腫
  • 耐寒能低下(寒がり)
  • 体重増加
  • 動作緩慢、嗜眠
  • 記憶力低下
  • 便秘
  • 嗄声
  • 月経過多

などの症状が認められる場合があります。
ただし、甲状腺機能低下症が軽度の場合には、検査によって初めて診断されるケースが多く、無症状の場合もあります。

患者指導

中枢性甲状腺機能低下症の症状があらわれた場合は、医師・薬剤師に連絡するよう患者に指導してください。

定期的な検査の実施1)

エベレンゾ投与中は、定期的に甲状腺機能検査(TSH、遊離T4、遊離T3)を行うなど、患者の状態を十分に観察してください。エベレンゾ投与開始後約2週間で中枢性甲状腺機能低下症があらわれたとの報告もあります。

診断・鑑別診断

中枢性甲状腺機能低下症は、臨床症状、甲状腺ホルモン(遊離T4)の低下とTSHの低下又は正常により診断されます1)

<甲状腺機能低下症について>2)
甲状腺機能低下症は、原発性と中枢性に分類されます。
原発性及び中枢性甲状腺機能低下症は、患者が自覚し得る症状や観察され得る臨床所見(無気力、易疲労感、眼瞼浮腫、耐寒能低下[寒がり]、体重増加、動作緩慢、嗜眠、記憶力低下、便秘、嗄声等)は同じですが、検査所見が異なります。
典型例では、以下が認められます。

  • 原発性甲状腺機能低下症の検査所見:遊離T4低値(参考として遊離T3低値)とTSH高値
  • 中枢性甲状腺機能低下症の検査所見:遊離T4低値とTSH低値又は正常

<出典>

  1. エベレンゾ錠 適正使用ガイド
  2. 厚生労働省:重篤副作用疾患別対応マニュアル(甲状腺機能低下症)(2022年2月改定版)

対処法

エベレンゾ投与により中枢性甲状腺機能低下症の症状や徴候があらわれた場合には、必要に応じて投与の中止、甲状腺ホルモン製剤の投与注)などの適切な処置を行ってください1)
注)エベレンゾの投与中止により、中枢性甲状腺機能低下症の回復がみられた報告があります。甲状腺ホルモン製剤の投与に当たっては、真に甲状腺機能低下症の臨床所見があるか否か、また薬剤性であるか否かを慎重に検討してください。

<出典>

  1. エベレンゾ錠 適正使用ガイド

発現頻度

電子化された添付文書

電子添文に記載された副作用発現割合は以下のとおりです。
11.1 重大な副作用
11.1.3 中枢性甲状腺機能低下症(頻度不明)

製造販売承認申請時

国内開発臨床試験における甲状腺機能低下症の発現割合は、透析期では0.5%(2/444例)、保存期では認められませんでした1)。なお、国内開発臨床試験では、甲状腺機能関連の検査は規定検査項目として設定されておらず、TSH減少、甲状腺ホルモン減少の発現は確認されませんでした。

発現時期

エベレンゾ投与後の中枢性甲状腺機能低下症の発現時期は、投与開始約2週間~100日超と幅があります。
以下に発現時期に関する報告を示します。

  • 投与開始後約2週間であらわれたとの報告もあります(電子添文8.3)。
  • 日本の医薬品副作用データベース(JADER)を用いた検討(2004年4月~2022年7月)において、エベレンゾ投与に関連した甲状腺機能低下症の発現時期をKaplan-Meier法で解析した結果、約半数が投与開始50日以内に発現していました。一方、27%は投与開始100日以降でした2)

転帰

エベレンゾの投与中止により、中枢性甲状腺機能低下症の回復がみられた報告があります3)

症例経過

<症例の概要1>4)

<症例2>4)

<出典>

  1. エベレンゾ錠 新医薬品の「使用上の注意」の解説
  2. Kouki Y, et al. J Clin Pharmacol. 2023. (EVZ-00659)
  3. エベレンゾ錠 適正使用ガイド
  4. エベレンゾ錠 使用上の注意改訂のお知らせ(2022年11月)
    https://amn.astellas.jp/content/dam/jp/amn/jp/ja/di/doc/Pdfs/DocNo202211268_y.pdf

製品のご使用にあたっては、最新の電子化された添付文書をご参照ください。

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