血栓塞栓症

血栓塞栓症

Ⅱ.重大な副作用:血栓塞栓症

  1. 概要
  2. 注意事項
  3. 対処法
  4. 発現状況

Key point

  • ロキサデュスタット投与中に脳梗塞、心筋梗塞、肺塞栓等の血栓塞栓症が発現することがあります。エベレンゾの電子化された添付文書において、血栓塞栓症を「警告」及び「重大な副作用」として注意喚起しています。
  • ロキサデュスタット投与開始前に、脳梗塞、心筋梗塞、肺塞栓等の合併症及び既往歴の有無等を含めた血栓塞栓症のリスクを評価した上で、投与の可否を慎重に判断してください。
  • ロキサデュスタット投与中は、患者の状態を十分に観察し、血栓塞栓症が疑われる徴候や症状の発現に注意してください。血栓塞栓症が疑われる症状があらわれた場合には、速やかに医療機関を受診するよう患者に指導してください。
  • 透析施行中及び保存期慢性腎臓病に伴う腎性貧血を対象とした国内開発臨床試験の併合解析において、血栓塞栓症が2.3%[脳梗塞(0.5%)、急性心筋梗塞(0.1%)、肺塞栓症(0.1%)、シャント閉塞(0.8%)等]に認められました。

電子化された添付文書記載内容(抜粋)

注意喚起の設定根拠

警告

エベレンゾ投与中に重篤な血栓塞栓症があらわれ、死亡に至るおそれもあることから、エベレンゾの使用に際しては十分な注意が必要と考えられるため、警告として設定しました1)

重大な副作用

エベレンゾ投与中に血栓塞栓症があらわれるおそれがあるため、事象の重篤性を考慮し、重大な副作用として設定しました1)

発現機序

ロキサデュスタット投与中に発現する血栓塞栓症の発現機序は、十分に解明されていません。
腎性貧血の治療において、Hb濃度の上昇に伴い血液粘稠度が増すことで血栓塞栓症(脳梗塞、心筋梗塞、肺塞栓等)が発現するおそれがあります2)。また、日本腎臓学会の「HIF-PH阻害薬適正使用に関するrecommendation」には、「鉄欠乏自体が血栓塞栓症のリスクである」と記載されており‎3)、鉄欠乏によりトランスフェリンが増加し、凝固系を亢進するという基礎データも報告されています4)

<出典>

  1. エベレンゾ錠 新医薬品の「使用上の注意」の解説
  2. エベレンゾ錠(20㎎・50㎎・100㎎)に係る医薬品リスク管理計画書
  3. 日本腎臓病学会. HIF-PH 阻害薬適正使用に関するrecommendation. 日腎会誌. 2020;62(7):711-716.(R-09004)
  4. Tang X, et al. Circ Res. 2020;127(5):651-663. (R-08614) 

臨床症状

血栓塞栓症の主な症状として、次のような症状があらわれることがあります1)

患者指導

血栓塞栓症が発現する可能性があることをお伝えし、血栓塞栓症を疑う上記の症状が認められた場合には、ただちに医師、看護師又は薬剤師に相談するよう指導してください。

投与前の注意

エベレンゾの投与開始前に、脳梗塞、心筋梗塞、肺塞栓等の合併症及び既往歴の有無等を含めた血栓塞栓症のリスクを評価した上で、エベレンゾの投与の可否を慎重に検討してください。

注意が必要な患者

脳梗塞、心筋梗塞、肺塞栓等の患者、又はそれらの既往歴のある患者に投与する際は特に注意してください。
エベレンゾ投与により血栓塞栓症を増悪あるいは誘発するおそれがあります。

【参考】
透析施行中の腎性貧血患者を対象としたエベレンゾの国内第3相試験併合データ2)、及び海外第3相試験併合データ 3)の事後解析より、血栓塞栓症のリスク上昇に関連する「患者背景」として、以下が示されました注)

<国内第3相試験併合データにおける結果>2)

  • 投与12週目まで: 透析導入(透析開始から4カ月以下)、及び経口又は静注鉄剤の非併用
  • 投与12週目超: 高齢(65歳以上)及び血栓塞栓症の既往
     

<海外第3相試験併合データにおける結果>3)

  • 投与12週目まで: 血液透析(腹膜透析との比較)、及び高感度CRP高値(0.5 mg/dL超)
  • 投与12週目超: 高齢(65歳以上)、黒色人種(白色人種との比較)、血液透析(腹膜透析と比較)、糖尿病の既往、血栓塞栓症又は心血管イベントの既往

注)CKDに伴う腎性貧血患者における血栓塞栓症の発症は、様々な要因が複雑に関与していること、及び併合データを用いた事後解析であることから、本結果は仮説として注意深く解釈する必要があります。

定期的な検査の実施

  • ヘモグロビン(Hb)濃度が4週以内に2.0 g/dLを超えるような急激な上昇を避けてください。
    • エベレンゾ投与開始後及び用量変更後には、Hb濃度が目標範囲に到達し、安定するまでは週1回から2週に1回程度Hb濃度を確認してください。
    • Hb濃度が4週以内に2.0 g/dLを超えるような急激な上昇を認めた場合は、減量・休薬等の適切な処置をとってください。
  • 造血に伴い体内の鉄を消費するため、患者の状態に応じて、適切に鉄補充を行ってください。

【参考】
透析施行中の腎性貧血患者を対象としたエベレンゾの海外第3相試験併合データ 3)の事後解析より、血栓塞栓症のリスク上昇に関連する「その他の因子」として、以下が示唆又は示されました注)

  • 投与12週目まで: Hb濃度の急速な上昇(0.5 g/dL/週以上)(示唆:統計学的に有意ではない)
  • 投与12週目超: Hb濃度 10 g/dL未満(12 g/dL以上との比較)、及びTSAT 30%未満(30%以上との比較)

注)CKDに伴う腎性貧血患者における血栓塞栓症の発症は、様々な要因が複雑に関与していること、及び併合データを用いた事後解析であることから、本結果は仮説として注意深く解釈する必要があります。

<出典>

  1. エベレンゾ錠を服用される患者さんへ
  2. Hamano T, et al. Adv Ther. 2024:1-27. (EVZ-00758)
    (COI:本試験は、アステラス製薬株式会社の資金提供により実施した。著者にはアステラス製薬株式会社から研究助成金、コンサルティング料及び講演料等を受領した者が含まれる。なお、著者にはアステラス製薬株式会社の社員が含まれる。)
  3. Hamano T, et al. Adv Ther. 2024:1-23. (EVZ-00759)
    (COI:本試験は、アステラス製薬株式会社の資金提供により実施した。著者にはアステラス製薬株式会社から研究助成金、コンサルティング料及び講演料等を受領した者が含まれる。なお、著者にはアステラス製薬株式会社の社員が含まれる。)

対処法

ロキサデュスタット投与中に脳梗塞等の血栓塞栓症があらわれた場合は、ロキサデュスタットの投与を中止し、適切な処置を行ってください1)

<出典>

  1. エベレンゾ錠 適正使用ガイド

発現頻度

電子化された添付文書

電子添文に記載された副作用発現割合は以下のとおりです。
11.1 重大な副作用
11.1.1 血栓塞栓症(2.3%)
脳梗塞(0.5%)、急性心筋梗塞(0.1%)、肺塞栓症(0.1%)、シャント閉塞(0.8%)等の血栓塞栓症があらわれることがある。

製造販売承認申請時

透析期及び保存期の腎性貧血患者を対象とした国内開発臨床試験における、血栓塞栓症に関連する副作用発現割合は以下のとおりでした1)

 

透析期の承認時

保存期の追加適応承認時

合計

安全性解析対象例数

444

380

824

副作用の種類 n(%)

 

急性心筋梗塞

1(0.2)

0

1(0.1)

網膜静脈閉塞

1(0.2)

0

1(0.1)

脳梗塞

3(0.7)

1(0.3)

4(0.5)

ラクナ梗塞

1(0.2)

0

1(0.1)

大脳動脈閉塞

0

1(0.3)

1(0.1)

肺塞栓症

0

1(0.3)

1(0.1)

深部静脈血栓症

1(0.2)

1(0.3)

2(0.2)

頚静脈血栓症

1(0.2)

0

1(0.1)

シャント閉塞

7(1.6)

0

7(0.8)

医療機器内血栓

2(0.5)

0

2(0.2)

 

発現時期

市販直後調査における結果は以下のとおりでした。

透析期 (調査期間:2019年11月20日~2020年5月19日)2)
報告された血栓塞栓症関連事象注1)76例84件注2)のうち、投与開始から副作用発現までの期間が不明の15件を除く69件の発現までの期間の中央値は17日(範囲:3日~206日)でした。

保存期 (調査期間:2020年11月27日~2021年5月26日)3)
原疾患又は使用理由が「保存期CKDに伴う腎性貧血」の集団において報告された血栓塞栓症関連事象注1)40例44件注3)のうち、本剤投与開始から副作用発現までの期間が不明の9件を除く35件の発現までの期間の中央値は34日(範囲:8日~96日)でした。

転帰

市販直後調査における結果は以下のとおりでした。

透析期 (調査期間:2019年11月20日~2020年5月19日)2)
報告された血栓塞栓症関連事象注1)76例84件注2)の転帰は、回復46件、軽快8件、回復したが後遺症あり4件、未回復8件、死亡10件、不明8件でした。

保存期 (調査期間:2020年11月27日~2021年5月26日)3)
原疾患又は使用理由が「保存期CKDに伴う腎性貧血」の集団において報告された血栓塞栓症関連事象注1)40例44件注3)の転帰は、回復20件、軽快11件、回復したが後遺症あり2件、未回復2件、死亡2件、不明7件でした。

注1)MedDRA標準検索式(SMQ「塞栓および血栓(狭域)」)に該当する事象
注2)シャント/医療機器関連事象(41例47件):

シャント閉塞27件、医療機器内血栓14件、シャント血栓症5件、医療機器閉塞1件
シャント/医療機器関連事象以外(36例37件):
脳梗塞9件、心筋梗塞6件、急性心筋梗塞5件、深部静脈血栓症4件、播種性血管内凝固、脳血管障害、末梢血管塞栓症、末梢動脈血栓症 各2件、小脳梗塞、大脳基底核梗塞、末梢動脈閉塞、末梢動脈閉塞性疾患、腎梗塞 各1件

注3)深部静脈血栓症15件、脳梗塞5件、肺塞栓症、四肢静脈血栓症、シャント閉塞、心筋梗塞各3件、急性心筋梗塞2件、小脳梗塞、塞栓症、ラクナ梗塞、一過性脳虚血発作、片麻痺、末梢動脈血栓症、末梢動脈閉塞、網膜動脈閉塞、大脳静脈洞血栓症、血栓症 各1件

発現患者一覧(発現時期・転帰 他)

透析期:
国内開発臨床試験でみられた塞栓及び血栓に関連する重篤有害事象のうち、治験薬との関連性が否定されなかった症例一覧は以下のとおりです4)

試験

被験者
番号

投与群a

性別
年齢

最終投与日b

有害事象名
(基本語)
発現日b
終了日b

程度

治験薬との関連性

治験薬
の処置

転帰

CL-0304

S41003

ASP1517
100 mg
TIWc

男性
52歳

day 157

歩行障害

day 58
day 123

中等度

否定できる

変更なし

回復

食欲減退

day 58
day 123

中等度

否定できる

変更なし

回復

ラクナ梗塞

day 158

中等度

関連あるかもしれない

中止

軽快

S42404

ASP1517
70 mg
TIWc
男性
69歳

day 136

脳梗塞

day 134

中等度

関連あるかもしれない

中止

軽快

CL-0307

S70905

ASP1517

男性69歳

day 1

脳梗塞

day 3

軽度

関連あるかもしれない

中止

未回復

S73001

ASP1517

男性79歳

day 19

深部静脈血栓症

day 20

中等度

たぶん関連あり

中止

未回復

CL-0308

S84502

Starting
70 mg
女性65歳

day 8

シャント閉塞

day 8

中等度

関連あるかもしれない

変更なし

未回復

S84401

Starting
70 mg
男性84歳

day 169

脳梗塞

day 130
day 160

軽度

関連あるかもしれない

変更なし

回復

CL-0312

S50604

Starting
70 mg
男性39歳

day 295

シャント閉塞

day 94
day 100

中等度

関連あるかもしれない

変更なし

回復

シャント閉塞

day 297
day 298

中等度

たぶん関連あり

中止

回復

S50303

Starting
70 mg
女性81歳

day 20

ラクナ梗塞

day 21

中等度

関連あるかもしれない

中止

未回復

S52004

Starting
100 mg
女性68歳

day 320

シャント狭窄

day 249
day 250

軽度

否定できる

変更なし

回復

脳梗塞

day 286

軽度

関連あるかもしれない

変更なし

軽快

シャント閉塞

day 323

中等度

関連あるかもしれない

中止

未回復

S52303

Starting
100 mg
男性58歳

day 5

シャント閉塞

day 6
day 22

軽度

関連あるかもしれない

変更なし

回復

S51305

Starting
100 mg
女性55歳

day 362

急性心筋梗塞

day 249
day 261

重度

関連あるかもしれない

変更なし

回復

シャント閉塞

day 264
day 278

中等度

関連あるかもしれない

変更なし

回復

 

保存期:
国内開発臨床試験でみられた塞栓及び血栓に関連する重篤有害事象のうち、治験薬との関連性が否定されなかった症例一覧は以下のとおりです5)

試験

被験者
番号

投与群a

性別
年齢

最終投与日d

有害事象名
(基本語)
発現日d
終了日d

程度

治験薬との関連性

治験薬
の処置

転帰

CL-0303

S32605

ASP1517
100 mg
TIWc
男性68歳

day 15

深部静脈血栓症

day 8

重度

たぶん関連あり

中止

軽快

CL-0314

S60601

Starting
50 mg
男性80歳

day 169

脳梗塞

day 68

中等度

関連あるかもしれない

変更なし

軽快

CL-0310

S16208

ASP1517(比較) 男性68歳

day 9

大脳動脈閉塞

day 9

中等度

関連あるかもしれない

中止

軽快

S14702

ASP1517(参照) 女性68歳

day 45

肺塞栓症

day 48
day 48

重度

関連あるかもしれない

中止

死亡

 

a: エベレンゾの承認された用法及び用量は次のとおりです。

赤血球造血刺激因子製剤で未治療の場合

通常、成人には、ロキサデュスタットとして1回50 mgを開始用量とし、週3回経口投与する。以後は、患者の状態に応じて投与量を適宜増減するが、最高用量は1回3.0 mg/kgを超えないこととする。

赤血球造血刺激因子製剤から切り替える場合

通常、成人には、ロキサデュスタットとして1回70 mg又は100 mgを開始用量とし、週3回経口投与する。以後は、患者の状態に応じて投与量を適宜増減するが、最高用量は1回3.0 mg/kgを超えないこととする。

b: 投与0週の最大透析間隔後透析日をday 1とした。
c: 週3回
d: 初回治験薬処方日をday 1とした。

<出典>

  1. エベレンゾ錠 新医薬品の「使用上の注意」の解説
  2. エベレンゾ錠 20mg・50mg・100mg 市販直後調査結果のご報告(透析施行中の腎性貧血).
    https://amn.astellas.jp/content/dam/jp/amn/jp/ja/di/evz/1064/shihangochousa_200028205.pdf
  3. エベレンゾ錠 20mg・50mg・100mg 市販直後調査結果のご報告(保存期慢性腎臓病に伴う腎性貧血). https://amn.astellas.jp/content/dam/jp/amn/jp/ja/di/evz/1064/shihangochousa_200028729.pdf
  4. エベレンゾ錠 申請資料概要 2.7.4.2.1.3.1 主要な評価資料とした試験でみられた重篤な有害事象(DIR190149)
  5. エベレンゾ錠 申請資料概要 2.7.4.2.1.4.1 主要な評価資料とした試験でみられた重篤な有害事象(DIR200106)

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