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なぜ、今LGBTQ?

監修:よしの女性診療所 院長/産婦人科医、臨床心理士 吉野 一枝 先生

第1回のテーマは「なぜ、今LGBTQ?」です。
監修してくださるのは、よしの女性診療所 院長の吉野 一枝 先生です。

音声内容をテキストで確認する

ナレーター : こんにちは、「AMNながら聴きラジオ」、シリーズ「寄り添えていますか?LGBTQの患者さん」の第1回をお送りします。
このシリーズでは、すべての患者さんが気持ちよく診療を受けられる医療現場を目指す上で、先生方がLGBTQの患者さんに寄り添ったご診療をするために必要な知識をご紹介します。
監修してくださるのは、よしの女性診療所 院長の吉野 一枝先生です。

なぜ、今LGBTQ?

ナレーター : さて、今回、第1回のテーマは「なぜ、今LGBTQ?」です。
なぜ医師が、LGBTQについて知らなくてはならないのか、その理由をご説明します。

LGBTQとは何か

ナレーター : その前に、まずLGBTQとは何か、簡単に確認しておきましょう。
LGBTQのLGBの部分、レズビアン、ゲイ、バイセクシャルはどういう相手に好意を抱くか、つまり「性的指向」を表す言葉です。
LGBTQのT、トランスジェンダーは、生物学上の性別と自身で認識している性別、つまり性自認が一致しない状態を指します。
男性として生まれながら自身の性別を女性と認識している場合はトランス女性、逆に、女性として生まれながら自身の性別を男性と認識している人はトランス男性と呼ばれます。
LGBTQのQ、クエスチョニングは、性的指向や性自認が自分でもよく分かっていない状態です。
ですから、LGBTQを性的マイノリティの総称として用いることが一般的です。

一方で、性的指向(sexual orientation)と性自認(gender identity)の頭文字をとった、「人の属性を表す略称」として「SOGI」(ソジ)という表現もあります。
性的指向とは恋愛感情がどの性別を対象にしているか、性自認とは自分の性をどう認識しているのか、ということですから、SOGIは、LGBTQのような特定の性的指向や性自認の方々を対象とする表現ではなく、全ての人を含む表現です*1

性的指向や性自認は、個人の尊厳にかかわる問題として尊重すること、つまり周囲がそのことを理解し、何もおかしなことではない普通のことだと受け止めて接することが大事です*1
先生方のご診療も同様に、全ての患者さんに対して平等で個人を尊重する、という点ではSOGIの表現が適切だと思います。
ただ、本コンテンツは、性的マイノリティの患者さんに生じている健康上、医療上の課題に対して解決方法となる診療コミュニケーションを専門家とともに考えるという主旨のため、あえてSOGIではなく、LGBTQの方々にフォーカスしています。

日本におけるLGBTQの割合

ナレーター : では日本に今、LGBTQの方々はどれくらいいるのでしょう?
調査方法や時期により結果は異なりますが、12人から30人に1人というデータが報告されています。
これは、地方自治体*2や広告代理店*3が実施したアンケート調査の結果です。
このデータを単純に当てはめれば、毎日数人はLGBTQの患者さんを診察している計算です。
患者さんだけでなく、先生のまわりの医療スタッフの方々、そしてこれをお聴きいただいている先生方の中にもLGBTQの方がいても不思議ではありません。
LGBTQの方々は、それくらい当たり前の存在なのです。
「LGBTQの人が思い浮かばない」という先生は、実はまわりにいるLGBTQの方々に、気がついていないだけかもしれません。

医師がLGBTQの知識を持たねばならない理由

ナレーター : このように、診察室でLGBTQの患者さんと顔を合わせている可能性は、高いと考えておいた方が良いでしょう。
また、医学生の卒業時到達目標を示した「医学教育モデル・コア・カリキュラム」には、平成28年から、「性的指向及び性自認への配慮方法を説明できる」という項目が明記されています。
つまり、LGBTQの患者さんへの配慮は欠かせないということです。
ただ、臨床の基本は一人ひとりの患者さんに向き合い、配慮することであり、特にLGBTQだからということではありません。
問題は、多くの人の中にある「戸籍上の性がその人の性、好きになる対象は異性」という思い込みです。

まとめ、次回予告とエンディング

ナレーター : 以上、シリーズ「寄り添えていますか?LGBTQの患者さん」第1回、「なぜ、今LGBTQ?」でした。
いかがでしたでしょうか?

LGBTQの方々はまれな存在ではありません。LGBTQの患者さんだから、ということではなく、患者さん一人ひとりへの配慮が大切です。
しかしそのLGBTQの方々を、医療機関から遠ざけている要因があることをご存じですか?
次回、ご紹介したいと思います。
それではまた、「AMNながら聴きラジオ」でお会いしましょう。

出典

*1:多様な人材が活躍できる職場環境に関する企業の事例集~性的マイノリティに関する取組事例~、令和元年度 厚生労働省委託事業 職場におけるダイバーシティ推進事業 報告書(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/0000088194_00001.html
*2:「働き方と暮らしの多様性と共生」研究チーム編. 2019. 大阪市民の働き方と暮らしの多様性と共生にかんするアンケート調査
*3:電通LGBT調査2018. 2019年1月10日リリース
  博報堂DYホールディングス株式会社 LGBT 総合研究所 2016年6月1日リリース

まとめ

【お詫びと訂正】
まとめの表記に誤りがございました。誤解を招く記載となっておりましたことを謹んでお詫び申し上げ、次のように訂正いたします。 (2022年9月)
(誤) わが国の医師も今では、 性的嗜好・性自認への配慮が必須となった。
(正) わが国の医師も今では、 性的指向・性自認への配慮が必須となった。

・LGBTQは単なる同性愛者ではない。
・日本でも12~30人に1人がLGBTQである可能性がある。
・わが国の医師も今では、 性的指向・性自認への配慮が必須となった。

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