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ネットワークメタアナリシス(network meta-analysis:NMA)とは?

ネットワークメタアナリシス(NMA)とは

従来のメタアナリシスは2種の治療効果の比較に限定されていたのに対して、ネットワークメタアナリシス(network meta-analysis:NMA)は、3つ以上の治療効果について直接的な比較(head-to-head comparison)だけでなく間接的な比較も含めてペアでの比較や順位付けを行うことができる解析方法である1)。NMAの解析結果は、新規治療薬の開発が盛んで新規治療薬同士を直接比較する臨床試験が少ない分野において治療選択の一助となっており2)、2010年以降、NMAを用いた研究の論文数は増加傾向にある(図1)。
NMAは強固なエビデンスではないものの、直接比較に加え、間接比較の情報を組み込むことで治療選択上の参考になるデータの提供が可能である2)

NMAの考え方

NMAを実施・解釈する際には様々な前提についての入念な確認が必要である。例えば、NMAを適用する治療群が十分に類似している(各試験のデザイン、対象集団、およびアウトカムが十分に類似している)こと、直接比較の結果と間接比較の結果が十分に類似していること等の条件が挙げられ、これらが欠如している場合は結果の解釈の際に各エビデンスの確実性を評価する必要がある3)
NMAで3つ以上の治療を直接的・間接的に比較する際、形成されるネットワークにはいくつかのパターンが存在する(図2)。図2の例1のネットワークでは、治療Aと治療BおよびCとのランダム化比較試験(RCT)がそれぞれ存在し、治療A(実薬でもプラセボでも構わない)を共通の対照薬として治療BとCの間接比較が可能となる。図2の例2では治療A~Cのいずれも直接比較が可能であり、ループが形成されている。この場合、直接比較のエビデンスと間接比較が含まれており、治療BとCの直接比較の結果と治療Aを共通対照薬とした治療BとCの間接比較の結果が同様であることがNMAを用いる際に重要となる。図2の例3はさらに複雑なパターンで、治療A、B、C、Eの閉じたループでは直接比較と間接比較が、治療Dについては治療薬Bを共通対照薬とした間接比較が可能である。例2および例3のような直接比較、間接比較の両タイプを含むモデルは混合治療比較(Mixed Treatment Comparison:MTC)と呼ばれ、移行性が十分成立する場合は直接比較のみのモデルより治療間における治療効果の推定精度を高めることができる4)

NMAの方法

NMAは従来のメタアナリシスと同様、システマティックレビューで定性的評価を行い、定量的に統合できるか研究間の異質性を評価する。統計学的統合手法には固定効果モデルと変量効果モデル(ランダム効果モデル)がある。
異質性がないと仮定できる場合(試験間の差異を偶然によるものとみなし、統合対象の研究以外には研究を想定しない)は固定効果モデルを用いる。研究の違いによる偏りがあり、異質性が大きい場合(統合対象の研究は母集団からランダムに抜き出されたものと考える)は変量効果モデルで統合する。異質性の原因となりうる因子でサブグループに統合する、メタ回帰分析を用いるなども有用である。
従来のメタアナリシスと同様に統計学的異質性はCochranのQ検定、I2統計値などで検定される。臨床的な異質性と研究方法の異質性の判断を行った上で統計学的な異質性の指標を参考にし、全体として判断することが望ましい1)。NMA実施時に特定の仮定や任意の選定を行うときは、感度分析で仮定を変えた場合に結果がどう変動するか確認する。

[解説]固定効果モデルと変量効果モデル
複数研究間で効果量(オッズ比やリスク比など)を統合する統計学的手法である。統合する研究がほとんど同じ条件で行われ、各研究で得られた効果が同じ程度と考えられる場合は固定効果モデルを採用する。一方、各研究の対象集団が異なる母集団から抜き出されている場合、各研究で示された効果には差(研究によるバイアス)があると考え、変量効果モデルを用いる。

NMAによる解析結果の見方

解析結果は、効果量や信頼区間(もしくは信用区間)をリーグ表やフォレストプロットにまとめて示すのが一般的である(図3)。

リーグ表

各治療群間の比較結果(オッズ比)を一覧にした表である。図3aは効果量を示したリーグ表であり、各治療群間の比較結果をオッズ比で示している。95%信用区間が1をまたいでいない場合は有意差があり、治療群間で効果に統計学的な差があることが示されている。

フォレストプロット

メタアナリシスの結果を図に表したもので、複数の研究結果とそれらを統合した結果を視覚的に確認することができる。個々の研究で報告されているアウトカムの点推定値(オッズ比、リスク比、平均値など)と95%信頼(信用)区間で示す。アウトカムがオッズ比の場合、信頼(信用)区間が1をまたいでいなければ有意差ありとなる。
図3bは、評価項目Aにおける効果量を示したフォレストプロットであり、プラセボに対する各薬剤の効果を示している。この図ではオッズ比を示す点が1より右にあれば比較対象より効果が高いとみなし、信用区間が1をまたがなければ有意差ありとなる。つまり、Z阻害薬の5群はいずれもプラセボに対して有意に効果が高いという統合結果が視覚的に示されている。
図4は、評価項目Bに関するフォレストプロットである。この図では、オッズ比を示す点が1より左にあれば評価項目Bに関してZ阻害薬の方が優れることを示す。すべての群で95%信用区間が1をまたいでいることから、5群ともプラセボに対する評価項目Bの優劣については有意差なしということになる。

[解説]信頼区間と信用区間
信頼区間は繰り返し同じサンプルサイズのデータを得たとき、真の値が95%の確率でその区間に含まれることを示す。一方、信用区間はベイズ統計学で用いる区間推定で、得られたデータにおいて95%の確率で真の値がその区間に含まれることを示す。

結果を解釈する際は、内的妥当性/外的妥当性について検討する3)。内的妥当性では、①ネットワークを構成する試験の適切な同定、②各RCTの質、③類似性や一致性の逸脱による交絡を原因とするバイアスの程度、という3要素について評価する。外的妥当性では、NMAの結果を関心のある母集団に外挿できるかレビューするため、ネットワークに含まれるRCTの一般化可能性について評価する。客観的な吟味の助けとなるものとして、NMAを評価する際に意思決定を補助するためのチェックリストが公開されている(ISPORのタスクフォースによるチェックリスト)。

[解説]内的妥当性と外的妥当性
内的妥当性は、その研究内で得られた結果(治療間の差など)が真であるとみなせる可能性のこと。同じ対象集団に対して同様の介入を行った場合に同等の結果が再現される程度を指す。外的妥当性は一般化可能性ともいう。NMAで得られた結果を、NMAの対象とした集団より広い集団においても一般性を失わず適用できる可能性のこと。

エビデンスの質を評価するためのポイント

メタアナリシスによって得られたエビデンスの質を評価するためのポイントとして、バイアスリスクなどの影響について考慮することが重要となる。従来のメタアナリシスでは、①出版バイアス(公表バイアス)、②個々の試験のバイアス、③不均一性、④信頼区間は十分に狭いか、について検討すべきとしていたが、NMAではこれらに加えて、⑤間接比較への依存度、⑥直接比較と間接比較の一貫性、についても検討する必要がある。

①     出版バイアス(公表バイアス):有意な結果が出た研究ほど公表されやすいという出版
バイアスはないか。
②個々の試験のバイアス:抽出された個々の研究について、無作為割り付けが適切に行われたか、二重盲検が行われたか(ただし、RCTを用いたNMAであってもランダム化による恩恵は試験間に適用されず、観察研究によるエビデンスのような形態をとる。それでもRCTに基づくNMAの方が、観察研究に基づくNMAに比べて交絡によるバイアスは小さくなる)。
③不均一性(異質性):同じ比較を行っている研究間で治療効果に有意な(偶然の範囲を超える)違いがあるか。
④信頼区間は十分に狭いか:得られた推定効果の精度が高いか。
⑤間接比較への依存度:直接比較のデータがない(または極端に少ない)ため間接比較に依存していないか。
⑥直接比較と間接比較の一貫性(一致性):エビデンスのループで直接比較と間接比較の結果に一貫性があるか。

用語集

システマティックレビュー(systematic review:SR)1)

事前に目的や方法を定め、特定のクリニカルクエスチョンについて研究を網羅的に調査し、デザインごとに同質の研究をまとめ、バイアスを評価しながら分析・統合することをSRと呼び、診療ガイドライン作成や保険償還の意思決定などに用いられている。診療ガイドライン作成のためのSRでは、効果指標の値をメタアナリシスの手法で定量的に統合し、エビデンス総体の定性的評価の結果によってエビデンスの確実性の評価をする方法がとられている。1.参照した研究に漏れがなく、2.採択された研究に偏りがなく、3.中立の立場で一定の基準に基づき各研究を評価し(①アウトカムに及ぼす効果の大きさ、②効果の確実性)、4.結論に評価の結果が反映されているものをSRと呼ぶことが提案されている。

メタアナリシス1)

複数の研究結果をまとめる際に統計学的に効果指標の値を統合し、その信頼区間とともに提示するのが定量的SR、すなわちメタアナリシスである。メタアナリシスを行う前にはバイアス評価(割り付け方法、盲検性、評価項目の欠測の取り扱い、公表バイアスなど)の定性的な評価を行い、複数の研究を定量的に統合できるか異質性(heterogeneity)を検討する必要がある。独立した2名以上の評価者を設定する。
メタアナリシスは膨大な研究を統合することによって過剰な統計学的検出力を持つことになる場合があり、臨床的に意味のない差も有意差として検出してしまう可能性が高い。したがって、統合結果のP値だけを見るのではなく、効果量(ハザード比、オッズ比、相対危険度などの、効果の大きさを表す指標)とその信頼区間に注目すべきである。

間接比較1)3)

関心のある治療同士の直接比較を含む試験が存在しない場合でも、各治療について共通の対照治療と比較している試験があれば、この共通治療(実薬でもプラセボでも構わない)を“アンカー”として介することにより間接比較で相対的に治療効果を推定することができる。長いパスを通じて連結している治療間の間接比較は精度を欠いてしまう。クローズドループを伴うネットワークメタアナリシスでは、直接比較の結果と間接比較の結果をループ内で比べて不一致がないか検討し、エビデンスの確実性を評価する必要がある。不一致がある場合をインコヒレンス(incoherence)と呼び、それぞれの推定値のエビデンスの確実性からどちらのエビデンスを信じるべきかを決める。

均一性/同質性(homogeneity)4)

同じ比較を行っている研究間で治療効果に意味のある違いがないこと(偶然の誤差を超える違いがないこと)。対義語は不均一性、不均質性、異質性(heterogeneity)など。統計学的異質性はCochranのQ検定、I2統計値などで検定される5)。異質性が存在する場合は、考えられる原因を調査し、十分なデータが利用できるならランダム効果モデリング、感度分析、サブグループ分析、またはメタ回帰の実施を検討する。NMAだけでなく、従来的な対比較のメタアナリシスでも前提となる。

感度分析1)

結論の頑健性を評価するため、併合した結果から各臨床研究を一つずつ除いたり、一定の条件に該当する研究を除いたりした場合について再計算し、結果の整合性が失われないか検討する過程のこと。NMAで特定の仮定や任意の選定を行う場合は、その仮定や選定を変えた場合に結果がどう変動するかを感度分析で検討する。

参考文献

1)Minds 診療ガイドライン作成マニュアル2020 ver.3.0 第4章システマティックレビュー
2)ネットワークメタアナリシス(自治医科大学 神田善伸先生)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/hct/9/3/9_20-002/_pdf
3)ネットワークメタアナリシスの概要および留意事項(製薬協)
https://www.jpma.or.jp/information/evaluation/results/allotment/network_meta_analysis.html
4)Giuseppe Biondi-Zoccai. Am J Epidemiol. 2015 Feb 15;181(4):288-9.
5)Andrea Cipriani, Julian P T Higgins, John R Geddes, Georgia Salanti. Ann Intern Med. 2013 Jul 16;159(2):130-7.

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