インフルエンザQ&A

Q:帯状疱疹・おたふくかぜなどのウイルス性疾患罹患後のインフルエンザHAワクチンの接種時期、効果、注意点などについて教えてください。また、家族や周囲の人が罹患した場合は、どのように対応したらよいでしょうか?

A

罹患したウイルス性疾患が軽症なら、症状が回復すれば接種できます。中等症なら、治癒後2週間くらいが目安でしょう。重症疾患、例えば麻しん罹患後、しばらくは免疫能が低下するため、それが回復する4週間後以降に接種するほうが効果を期待できます。

帯状疱疹は、宿主免疫を低下させる基礎疾患や投薬に注意する必要がありますが、急性期を過ぎ治癒に向かえば、接種は可能と考えます。

家族や周囲の人が罹患した場合は、疾患の種類や流行状況に応じて対応します。また、疾患に続発する合併症が、たまたまワクチン接種後に偶発的に出現すると、思わぬ誤解のもとになるおそれがあることには、注意しておくほうがよいでしょう。おたふくかぜによる無菌性髄膜炎や風しん罹患後の血小板減少性紫斑病などがそれに該当します。

解説

1.罹患後のインフルエンザHAワクチンの接種時期

わが国の予防接種ガイドラインは、DPT-IPVや麻しんなどA類疾病の定期接種実施要領を中心とした概説ですが、“疾病罹患後の間隔”について次の記載があります。「罹患した疾病の種類によって、免疫機能の低下や続発疾患の可能性が考えられる場合には治癒後2~4週間(麻疹の場合は4週間)を一応の目安として間隔をおく」1)。すなわち、免疫機能の低下や続発疾患の可能性がある疾患については治癒後2~4週間、そうでなければ健康状態を接種医が判断し、対象疾病に対する予防接種のその時点での重要性を考慮して決定することになります。

また、“家族や周囲の人の罹患”については、「身近な人から感染し潜伏期間にあるかどうかを調査し、ワクチンの副反応と誤らないようにするためのもので、疾病の種類によって接種時期を設定する」が該当します1)

個々のケースで判断することになりますが、万全を期すあまりに接種の機会を逃すことは避けたいものです。特にインフルエンザHAワクチンについては、流行期前に接種しておくことが予防のために大切です。

米国においては、“軽症の急性疾患”“疾患回復期”“抗菌薬治療”などは接種禁忌とされず、罹患後に接種を見合わせる期間は明記されていません2)。すなわち、感染症の回復期でもワクチンの効果が減弱したり、副反応が増強したりはしないというのが基本的な考え方です。また、潜伏期間内に接種したとしても副反応が増強するわけではなく、必ずしも感染しているとは限らないので、その後の免疫付与には有用であると接種による疾患予防に積極的な姿勢を示しています。

2.罹患後にインフルエンザHAワクチンを接種する際の注意点

インフルエンザHAワクチンを疾病罹患後に接種する場合、注意点は二つです。第一の注意点は、免疫反応の減弱によるワクチン効果の低下で、せっかく接種するならワクチンは最大限の効果を発揮してほしいものです。麻しんや帯状疱疹、EBウイルス感染症などの罹患後は、接種時の宿主免疫能を考慮して判断しましょう。その他のウイルス性疾患罹患後も同様です。

第二の注意点として、疾患に続発する合併症の起こる可能性がある期間中は、紛れ込み有害事象を防ぐ意味で接種を控えたほうがよい場合があります。たとえワクチンによる直接の因果関係がなくても、その後のワクチン不信や誤解につながるのは残念です。ウイルス性疾患では、おたふくかぜによる無菌性髄膜炎や風しん罹患後の血小板減少性紫斑病などがこれに該当し、回復直後に接種する場合は十分説明しておくことが望ましいでしょう。

本人や同居家族が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患・感染した場合も、上記の考え方に準じて対応することになります。2023年5月8日にCOVID-19の感染症法上の位置付けが変更となり、一律に外出自粛を要請されるものではなくなりました。また、「濃厚接触者」の特定や法律に基づく外出自粛もありません3)。一方で、罹患者の体調が回復してからのワクチン接種や、他人への感染予防が推奨されることに変わりはありません。新型コロナウイルスに感染した場合、その重症度にもよりますが、治癒後あるいは陽性確定日から2週間前後の間隔をおいて接種するのが目安と考えます。

3.インフルエンザ罹患後のインフルエンザHAワクチン接種について

インフルエンザは複数の型のウイルスが原因となるため、インフルエンザの罹患後にインフルエンザHAワクチンを接種することがあります。そのようなケースでは、流行期に入っている場合が多いので早く接種したい一方で、体調の回復と罹患後に続発する合併症の懸念がなくなるまで待つことも考慮する必要があります。罹患したインフルエンザの臨床経過にもよりますが、治癒後1~2週間の間隔をおいて接種するのが目安と考えます。

以上の点を勘案して、疾患に罹患後どれくらいの期間を経過すれば予防接種が可能なのかについて、にまとめました。

(中野 貴司)

表 疾患罹患後に予防接種を見合わせる期間の目安

著者作表

文献

1)予防接種ガイドライン等検討委員会: 予防接種ガイドライン2023年度版. 公益財団法人予防接種リサーチセンター. 2023.

2)American Academy of Pediatrics: Red Book 2018-2021. p.1072, 2018.

3)厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部: 事務連絡. 新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付け変更後の療養期間の考え方等について(令和5年5月8日以降の取扱いに関する事前の情報提供). 2023年4月14日.
https://www.mhlw.go.jp/content/001087473.pdf(アクセス2023年4月25日現在)


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