ご監修:清井 仁 先生
(名古屋大学大学院医学系研究科 血液・腫瘍内科学 教授)

FLT3遺伝子変異の発見

急性骨髄性白血病(AML)は骨髄における白血病細胞の異常な増殖の結果、白血球減少、貧血、血小板減少に伴うさまざまな症状を呈します。
AML治療はこれまでに改良を重ねながら、化学療法と造血幹細胞移植が用いられてきました。一方でAMLの発症・進展に関与するゲノムレベルでの解明も進められており、がんの発生・進展において直接的に重要な役割を果たすドライバー遺伝子とその変異が同定されるとともに、それらを標的とした阻害薬や抗体治療薬の開発が進められてきました1)
そのなかの1つにFLT3遺伝子変異があります。1996年に京都府立医大のグループがFLT3の傍膜貫通領域における遺伝子内縦列重複変異(ITD変異)を発見、2000年には名古屋大学のグループがキナーゼ領域の点変異(TKD変異)を発見しました2,3)
FLT3遺伝子変異は日本の研究者たちによって見出された変異なのです。

FLT3遺伝子変異の頻度と特徴(海外データ)

Patel JP, et al.: N Engl J Med. 2012; 366(12): 1079-89.
Alvarado Y, et al.: Cancer. 2014; 120(14): 2142-9.
Whitman SP, et al.: Cancer Res. 2001; 61(19): 7233-9.
Whitman SP, et al.: Blood. 2010; 116(18): 3622-6.

そこから、FLT3遺伝子変異は国内外の多くの研究者に注目されていくことになります。
FLT3-ITD変異はAML患者の約30%に、FLT3-TKD変異はAML患者の約10%に存在することが示されました4,5)。また、再発又は難治性のFLT3遺伝子変異陽性AMLでは、標準的な化学療法による寛解持続期間の短縮、再発リスクの増加、全生存期間の短縮が報告され6)、FLT3は治療上の重要な標的分子であることが明らかとなりました。
そこで、FLT3に対する阻害薬の開発が進められてきました。

まず、既存のチロシンキナーゼ阻害薬のうち、FLT3に対する阻害活性を有するものをFLT3阻害薬として応用した、第1世代のFLT3阻害薬が開発されました。続いて、FLT3への特異性を高めた第2世代のFLT3阻害薬として、日本で見出されたギルテリチニブ「ゾスパタ」の開発が進められました。

ゾスパタの作用機序

ゾスパタはFLT3-ITD変異、TKD変異のいずれの変異のあるFLT3に対しても阻害活性を示すⅠ型FLT3阻害薬です。

ゾスパタの特性を表現したビジュアルでは、いずれの変異によって活性化されたFLT3に対しても阻害活性を示すゾスパタが、ドラッグカーにたとえたFLT3遺伝子変異陽性AMLの増殖を、ドラッグシュートのように強力にスローダウンさせるイメージを描いています。

ゾスパタ発売までの経緯

ゾスパタの臨床試験は、2013年10月、海外第Ⅰ/Ⅱ相試験のCHRYSALIS試験7)から始まり、2014年6月、国内第Ⅰ相試験であるCL-0102試験が開始されました8)
2015年10月には、国際共同第Ⅲ相試験として、 ゾスパタと化学療法とを比較したADMIRAL試験が開始され9,10)、日本国内でも多くの先生方にサポートを行っていただきました。
ADMIRAL試験が開始された2015年には、10月27日付で「初回再発又は治療抵抗性FLT3遺伝子変異陽性AML」を予定される効能又は効果として、本邦の「先駆け審査指定制度」の対象品目に指定されました11)

その後、米国で希少疾病用医薬品指定、 FDAファストトラック指定、欧州で希少疾病用医薬品指定などを経て、2018年9月21日、本邦で「再発又は難治性のFLT3遺伝子変異陽性の急性骨髄性白血病」を適応症としてゾスパタは承認を受けました。10月にはCL-0102試験の結果が報告されました8)
そして、2018年12月3日に世界に先駆けて日本で発売されました。
AML治療に1つの変革をもたらす治療のタネを日本の先生方とともに育み、世に送り出すことができたのです。

ゾスパタ発売後の歩み

発売当時、ADMIRAL試験においては中間解析結果での承認でしたが、2019年10月31日には最終解析結果がNew England Journal of Medicine誌に掲載されました10)

市販直後調査の概要

ゾスパタ®錠40 mg市販直後調査・副作用集計結果報告(最終報告)(調査実施期間:製造販売承認取得日(2018年9月21日)~2019年6月2日)

2019年10月にはリアルワールドデータとなる市販直後調査の報告もまとめられました。製造販売承認取得日から2019年6月までの実施期間で、調査対象医療機関数は150施設でした。
本調査の結果では、使用上の注意改訂等の安全確保措置を必要とするものはないことが報告されました12)

また、ゾスパタは日本での発売後、米国、欧州でも承認・発売され、再発又は難治性のFLT3遺伝子変異陽性AML患者さんのもとに届けられています13)
ゾスパタという製品名は、“Extra Time Outside the Hospital”に由来しています。
FLT3遺伝子変異陽性AMLに立ち向かう患者さん、先生方をはじめとする医療従事者の皆様のお陰で、ゾスパタは発売から2021年12月3日に3年を迎えることができました。
先生方にご協力いただきながら育ってきたゾスパタは、これからも患者さんのために歩み続けます。

1) 清井 仁:医学のあゆみ. 2019;268:37-42.
2) Nakao M, et al.: Leukemia. 1996;10:1911-1918.
3) Yamamoto Y, et al.: Blood. 2001;97:2434-2439.
4) Patel JP, et al.: N Engl J Med. 2012; 366(12): 1079-89.
5) Alvarado Y, et al.: Cancer. 2014; 120(14): 2142-9.
6) Daver N, et al.: Leukemia. 2019;33:299-312.
7) Perl AE, et al.: Lancet Oncol. 2017;18:1061-75.
8) Usuki K, et al.: Cancer Sci. 2018;109:3235-44.
9) 【承認時評価資料】国際共同第Ⅲ相試験
10) Perl AE, et al.: N Engl J Med. 2019;381:1728-40.
11) 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構「医薬品の先駆け審査指定制度の対象品目一覧表」(https://www.pmda.go.jp/files/000235895.pdf)(2021年8月閲覧)
12) ゾスパタ®錠40 mg市販直後調査・副作用集計結果報告(最終報告)(調査実施期間:製造販売承認取得日(2018年9月21日)~2019年6月2日)
13) ゾスパタ インタビューフォーム 2021年1月改訂(第7版)

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