注射剤に関して、薬剤師、看護師などのユーザーからの要望である「医療過誤防止、使用性の向上」に対応できる技術として「副片付ラベル」を検討することにしました。検討の過程で、予想できなかった問題点も見つかり、種々の工夫を施し、2004.05ににガスター注射用※1(当時、販売 山之内製薬)に初めて「副片付ラベル」を適用しました。
まず、ラベルの材質は、①流通段階においては、剥がれない。②しかし、切り取ってシリンジなどに貼る場合はアンプルから剥がれ易く、③シリンジや点滴バックに貼った時には剥がれにくい、これらの条件を満たす材質や糊の選定が必要でした。紙・ポリエチレンテレフタラート(PET)・ポリプロピレン(PP)など調査した結果、引き裂性が強く破れにくい反面、切れ目を入れれば、切り取り易い合成紙「ユポ紙」を選択しました。
厚さも生産上、重要な因子であった。厚いと製造時に反発で剥がれてしまい、薄いとラベル台紙から剥がれないため、十分な生産スピードが達成できませんでした。様々な検討を重ねた結果、最終的には、髪の毛の太さと同じ程度の60ミクロンを選択しました。
また、使用時には剥がしやすくするため、切り離し部分に「糊殺し」(糊裏面に印刷し、接着しない部分を作る。)と言うような工夫を行っております。
一方で、中身の位置を確認しやすくするために、アンプルの全周をラベルで覆うのではなく、ラベルの巻き比率を90~95%とし、隙間を開けることによってアンプルの中身が見えるような工夫もしました。
ところが、副片ラベルを使用した製品の供給を開始すると、ある大きな病院で払い出し機と言われる注射剤の供給設備で詰まりが発生し、副片ラベル品が採用されず副片部を剥がした製品を供給するというトラブルが発生した。その病院にて立会テストを行った結果がペルジピン注射液※2(当時、販売 山之内製薬)では問題はなかったが、当時凍乾品であったガスター注射用※1(当時、販売 山之内製薬)は軽量のため、わずかな引っ掛かりなどで詰まりが発生することが判明しました。
そこで、少しでも引っかかりを防ぐため副片部の出っ張りを最小限1mm程度に設定するなどの改善を実施したほか、一方で払い出し機メーカーとの情報交換や営業部門を通じて払い出し機を使用する全国30カ所ほどの病院に試作品によるテストを依頼し、アンプル寸法やラベル形状に合わせた調整を行えば問題はないとの結果が得られました。
これら、テストで得られた改善情報などをレポートにまとめて病院に提供したり、設備メーカーの技術者に調整を依頼することで詰りは解決し、全ての病院で副片ラベル付きが採用されるに至りました。
このような様々な工夫を施した「副片付ラベル」により、「医療過誤防止、使用性の向上」に貢献できるものと考えています。
※1:ガスター注射用はファモチジンの凍結乾燥注射剤で、20mg製剤が1985年に、10mg製剤が1996年に山之内製薬株式会社より発売されました。
2005年、ガスター注射用10mg・20mgはガスター注射液10mg・20mg(液注製剤)の新発売に伴い販売中止となりました。
なお、ガスター注射液10mg・20mg は2018年10月に LTLファーマ株式会社へ製造販売承認が承継および販売移管されています。
※2:ペルジピン注射液は2019年4月に LTLファーマ株式会社へ製造販売承認が承継および販売移管されています。
(2021年4月)